温対法とは?省エネ法との違いと制定背景・改正理由、対象事業者を解説

温対法とは?温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の概要や省エネ法との違いを解説

温対法とは、「地球温暖化対策の推進に関する法律」といい、地球温暖化対策に取り組むための仕組みを定めたものです。

温対法は深刻な問題でありながらも、省エネ法との違いや温対法の仕組みや内容を知らない人も多いでしょう。

そこで、さまざまな対策を求められている企業のために、温対法と省エネ法の違いや温対法が制定された背景、温対法の対象事業者例などを紹介します。

温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律・地球温暖化対策推進法)とは

温対法は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」が本来の正式名称で、「地球温暖化対策推進法」と略されることもあります。

「地球温暖化対策の推進に関する法律」という名の通り、温室効果ガスの排出削減や気温上昇の抑制など、気候変動に関する問題に対処する手段や方針を指します。

現代、温室効果ガスの排出が地球の気温上昇に寄与していると考えられ、これが気候変動の原因となっています。温対法は、これらの問題に対して具体的な対策を講じ、地球温暖化の進行を防ぐことを目指す目的として制定されました。

温室効果ガス排出量算定・報告義務・公表制度

温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度とは、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律・地球温暖化対策推進法)に基づき、平成18年4月1日から温室効果ガスを相当程度排出する者・事業者に対して、自らの温室効果ガスの排出量を算出し、国に報告することが義務付けられていることです。

温室効果ガス排出量算定方法

温室効果ガス排出量の算定は、次の計算式で求めます。

「温室効果ガス排出量 = 活動量 × 排出係数」

ここでいう活動量は、生産量、使用量、焼却量など、排出活動の規模を表す指標です。

排出係数は、活動量あたりの排出量のことを指します。

まず、どの温室効果ガスがどの排出源から発生しているかを特定し、活動データを基に排出係数をかけて実際のガス排出量を算出します。

1つ例を紹介すると、A事業者の排出量を次のように仮定してみましょう。

温室効果ガス 排出量
非エネルギー起源 CO2 2,000 tCO2
CH4 2,000 tCO2
N2O 2,000 tCO2

この場合、各温室効果ガスとも排出量が3,000 tCO2 未満のため、各ガスとも算定・報告・公表制度の対象ではありません。

一方で、B事業者の排出量が次のような場合、N2O排出量が3,000 tCO2 以上のため、 N2O について算定・報告・公表制度の対象となります。

温室効果ガス 排出量
非エネルギー起源 CO2 500 tCO2
CH4 500 tCO2
N2O 3,500 tCO2

(参考:環境省|温室効果ガス排出量の算定方法より

国際的には、企業や国が採用すべき計測、報告、検証(MRV)の原則もあるので、覚えておきましょう。

例えば、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のもとでのパリ協定などでこれらの原則が強調されています。各国や国際機関は、GHGの排出量算定方法や報告ガイドラインを定めています。

温対法と省エネ法の違い

温対法と省エネ法には、次の3つの違いがあります。

  1. 目的
  2. 対象者
  3. 罰則

ひとつずつ解説していきます。

目的

温対法の目的は、地球温暖化対策推進です。

一方で、省エネ法はエネルギーの使用の合理化及び、非化石エネルギーの転換等に関する法律です。

簡単に説明すると、エネルギーを効率良く利用していくために制定された法律です。

温対法と省エネ法では、制定されたそもそもの目的が異なります。

温対法 省エネ法
対象物質 ・二酸化炭素
・メタン
・一酸化二窒素
・ふっ化硫黄
・ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
・パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
・燃料(石油、ガス、石炭)
・燃料を熱源とした熱と電気

対象者

温対法と省エネ法は、その法律が課せられる対象者も異なります。

温対法 省エネ法
対象者 【特定事業所排出者】
次の2点の要件をみたす事業者・温室効果ガスの種類ごとに全ての事業所の排出量合計がCO₂換算で3,000t以上
・事業者全体で常時使用する従業員の数が21人以上
【特定事業所排出者】
全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者・省エネ法の特定事業者
・省エネ法の特定連鎖化事業者省
・エネ法の認定管理統括事業者又は管理関係事業者のうち、全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上の事業者
・上記以外で全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上の事業者【特定輸送排出者】
・省エネ法の特定貨物輸送事業者
・省エネ法の特定旅客輸送事業者
・省エネ法の特定航空輸送事業者
・省エネ法の特定荷主省エネ法の認定管理統括荷主又は管理関係荷主であって、
貨物輸送事業者に輸送させる貨物輸送量が3,000万トンキロ/年以上の荷主
・省エネ法の認定管理統括貨客輸送事業者又は管理関係貨客輸送事業者であって、
輸送能力の合計が300両以上の貨客輸送事業者

(参考:温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度

似ている部分が多く、かなりややこしい部分もありますが、それでも対象者に該当する場合は義務があるので、必ず理解しておく必要があります。

罰則

温対法と省エネ法には、罰則があります。

上記で紹介した対象事業者に該当するのに、義務を無視していると次のような罰則が課せられます。

温対法 省エネ法
罰則 報告をせず、又は虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料の罰則 ・届出をしなかった場合、虚偽の届出をした場合:50万円以下の罰金
・提出をしなかった場合、虚偽の報告をした場合:50万円以下の罰金
・選任・解任の届出:届出をしなかった場合、虚偽の届出をした場合:20万円以下の過料
・エネルギーの使用の合理化の状況が著しく不十分と認められたのにも関わらず命令に従わない場合:100万円以下の罰金

(参考:温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度改正省エネ法の罰則

温対法は、省エネ法の罰則と比較しても罰則は緩いです。

一方で省エネ法では、最大100万円の罰金が課せられてしまう場合もあります。

温対法が制定された背景

温対法は、平成10年にCOP3での京都自邸所の採択などを背景に、地球温暖化への対策を国や自治体、事業者、国民が一体となって取り組めるようにするために制定されました。

制定された当初は、政府における基本方針の策定や地方自治体の実行計画の策定などが主な内容でした。

現在の温対法は、合計7回の改正を経て、地球温暖化対策本部の設置や温室効果ガスの排出量算定・報告・公表制度などが制定されました。

温室効果ガスの増加

温対法は、温室効果ガスの排出量が基準年度に比べて大幅に増加している状況も踏まえて、定められました。

待機中に占める温室効果ガスの割合は、過去80年間で前例のない水準に達していると考えられています。

このまま温室効果ガスが増加し続けると、今世紀末までに平均気温が3.3〜5.7℃上昇すると言われており、これらの上昇を少しでも食い止めるために制定されました。

地球温暖化による各所への影響が顕著

地球温暖化による各所への影響は、さまざまなところにあります。

  • 気候変動
  • 異常気象
  • 海面上昇
  • 生態系の変化

気候変動

気候変動問題は、この地球上の全ての生き物にとって、避けることのできない課題です。

世界的にも平均気温が上昇していたり、大雨、台風等による被害、農作物や生態系への影響も観測されています。

気候変動を抑制するには、温室効果ガスの排出を大幅かつ持続的に削減する必要があり、適応と併せて実施することで、気候変動のリスクの抑制が可能となるとされています。

異常気象

地球温暖化による異常気象の影響として、まずは農作物への被害が挙げられます。

例えば、みかんの場合、日本での収穫時期はだいたい11月〜12月が一般的ですが、異常気象による影響を受けると収穫時期には果実が日焼けしたり、浮皮症になってしまい、出荷できなくなることがあります。

海面上昇

海面上昇の主な原因は、海水の温度上昇による膨張と氷河や氷床の融解であると言われています。

1901年〜2010年の約100年間で、海面が19cnも上昇しています。

日本ではまだ海面上昇への影響が露呈していませんが、既に海外では高潮の影響で潮が満ちると、海水が住宅や道路に入り込んで問題となっているのが現状です。

(参考:全国地球温暖化防止活動推進センター|海面上昇の影響について

生態系の変化

地球温暖化が影響し、食物が採れなくなったり、動物が繁殖できなくなり、数を減らす生態系も存在しています。

種の絶滅や生息・生育域の移動、減少、消滅などを引き起こし、生態系サービスの低下にもつながってしまいます。

温対法の改正経緯

温対法のこれまでの改正経緯は、次の通りです。

時期 主な制定内容
平成10年 気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)での京都議定書の採択を受け、
国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みを制定
平成14年 京都議定書の的確かつ円滑な実施を確保するために都議定書目標達成計画の策定、
計画の実施の推進に必要な体制の整備等を制定
平成17年 温室効果ガスの排出量が基準年度に比べて大幅に増加している状況も踏まえ、
温室効果ガス算定・報告・公表制度の創設等について定める
平成18年 政府及び国内の法人が京都メカニズムを活用する際の基盤となる口座簿の整備等、
京都メカニズムクレジットの活用に関する事項について制定
平成20年 事業者の排出抑制等に関する指針の策定、地方公共団体実行計画の策定事項の追加、
植林事業から生ずる認証された排出削減量に係る国際的な決定により求められる措置の義務付け等を制定
平成25年 地球温暖化対策計画の策定や、温室効果ガスの種類に3ふっ化窒素(NF3)を追加することなどを制定
平成28年 国民運動の強化と、国際協力を通じた温暖化対策の推進を追加
令和3年 地域の再エネを活用した脱炭素化の取組や、企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化を推進する仕組み等を制定
令和4年 温室効果ガスの排出の量の削減等を行う事業活動に対し資金供給等を行うことを目的とする
株式会社脱炭素化支援機構に関し、その設立、機関、業務の範囲等を定めるとともに、国が地方公共団体への財政上の措置に努める旨を規定

(参考:地球温暖化対策推進法の成立・改正の経緯

温対法の対象事業者例

経済産業省が実施した、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度に基づく平成30(2018)年度温室効果ガス排出量の集計結果を元に、温対法の対象事業者の例を紹介します。

特定事業所排出者 平成30(2018)年度 平成29(2017)年度
報告事業者数(報告事業所数) 12,150事業者(15,040事業所) 12,341事業者(15,194事業所)
報告排出量の合計 6億3,945万t-CO2 6億5,513万t-CO2
調整後排出量 6億2,040万t-CO2 6億3,881万t-CO2

 

特定輸送排出者 平成30(2018)年度 平成29(2017)年度
報告事業者数(報告事業所数) 1,314事業者 1,319事業者
報告排出量の合計 2,968万t-CO2 3,098万t-CO2

 

特定事業所排出者 平成30(2018)年度 平成29(2017)年度
報告排出量の合計(①+②) 6億6,914万t-CO2 6億8,611万t-CO2

(参考:経済産業省|温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度に基づく平成30(2018)年度温室効果ガス排出量の集計結果

温対法での報告にも利用できるJ-クレジット

温対法での報告にも利用できる「J-クレジット」とは、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取り組みによる、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。

省エネ設備の導入や再生エネルギーの活用により、ランニングコストの低減やクレジットの売却益、温暖化対策のPR効果などを見込めます。

さらに、J-クレジット制度に参加することで、省エネの取り組みが具体的な数値化として”見える化”でき、組織の取り組み意欲向上や意識改革にもつながります。

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まとめ

温対法は、地球温暖化の進行を抑制・防止するために制定された法律です

地球温暖化は世界的にも深刻な問題となっており、事業者や個人が力を合わせて対策を講じる必要があります。

省エネ法と似ている部分がありますが、目的・対象者・罰則は大きく異なります。

J-クレジット制度を利用すれば、温対法の調整後温室効果ガス排出量や、調整後排出係数の報告に利用可能です。

今ある条件や設備を少しずつ変えてみる取り組みから始めてみてください。

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