カーボンクレジット認証機関「Verra(ベラ)」とは?特徴や認証基準・制度を解説

カーボンクレジット認証機関「Verra(ベラ)」とは?特徴や認証基準・制度を解説

「Verra(ベラ)」はカーボンクレジットの世界最大手の認証機関です。

カーボンクレジットの取引をけん引している、Verraの特徴や認証基準・制度をまとめました。

また、カーボンクレジット市場の動向は、Verraのプロジェクトを見ることにより予測することができます。

カーボンクレジット認証機関「Verra(ベラ)」とは

「Verra(ベラ)」とは、2007年に設立した米国ワシントンDCに拠点を置く非営利法人で、民間カーボンクレジット認証の大手プロバイダーです。

世界で最も取引量が多い民間カーボンクレジット(ボランタリークレジット)VCSの認証・管理をはじめ、他のプログラムも認証・管理を行っています。

Verraは2009年3月に最初のカーボンクレジットを認証して以来、13年間で1億トンのクレジットを生み出してきています。

2022年11月11日には、VCSのプログラムの認証クレジット数が10億クレジットを達成したと発表があり、発表された10億トンを超えるクレジットは、アフリカ・ケニアで開発中のREDD+プロジェクト「Chyulu (チユル)Hillis REDD+ Project」によるものです。

民間のカーボンクレジット取引の活発化をVerraが牽引していることが伺えます。

「Verra(ベラ)」は京都議定書を背景に設立

京都議定書では、途上国の排出削減事業は「クリーン開発メカニズム(CDM)」として取引を承認しましたが、先進国の削減プロジェクトは対象外だったことが背景にあります。

京都議定書による気候変動対策を目指して、2005年に米国カーボン市場投資アドバイザーのClimate Wedge社とそのビジネスパートナーであるCheyne Capitalが共同で、「Verra(ベラ)」の前身である自主的カーボン基準(VCS : version1.0)を立ち上げ、先進国を取引対象としました。

「Verra(ベラ)」の特徴・活動内容

「Verra(ベラ)」は、民間認証クレジット「VCS(Verified Carbon Standard)」の発行、VCMGD(自主的炭素市場グローバルダイアログ)の支援、企業と連携し気候変動に関する取り組みを実施と主に3つの活動をしています。

民間認証クレジット「VCS(Verified Carbon Standard)」の発行

「Verra(ベラ)」は、世界で最も取引量が多い民間認証クレジット「VCS(Verified Carbon Standard)」の発行を行っています。

VCSのクレジットの創出方法は「エネルギー」「工業プロセス」「建設」「輸送」「廃棄物」「工業」「農業」「森林」「草地」「湿地」「家畜」「家畜と糞尿」の11種類と豊富です。また、11種類に該当しない提案もできることから、民間認証クレジットの2018年の年間取引量では全体の66%を占めています。

VCMGD(自主的炭素市場グローバルダイアログ)の支援

開発途上国は、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)のCDM(クリーン開発メカニズム)から、メリットをほぼ受けなかったため、「Verra(ベラ)」は開発途上国の声を最適なVCM(ボランタリーカーボンマーケット)の中心に届けることを目的に、「自主的炭素市場グローバルダイアログ(VCMGD)」をまとめました。

「安定した気候、自然への敬意、すべての人々が安全で健康で豊かな生活を送るために保証された権利によって定義される持続可能な未来への移行をVCMによって加速させる」とのビジョンを掲げています。

企業と連携し気候変動に関する取り組みを実施

「Verra(ベラ)」は世界で最も多く流通しているVCSの発行を行っていることから、世界中の企業と連携し気候変動対策に取り組んでいます。

日本企業もVreeaを介して、森林分野でのプロジェクトに数多く参入し、中国・ペルー・インドネシア・ブラジル・ケニアなど、世界でプロジェクトを実施しています。

また、Vreeaは近年、プラスチックのリサイクルに力を入れていることから、「Initiative」や「Enaleia」と連携しプロジェクトに取り組みました。

日本においては、Vreeaと渋谷ブレンドグリーンエナジー株式会社・一般社団法人Co・株式会社REMAREが連携し、プラスチックのリサイクルだけでなく、プラスチックによる海洋汚染の改善や漁業者の海洋プラスチック回収に対する報酬を提供できるように取り組みを始めています。

Verra(ベラ)の認証基準・制度

カーボンクレジットの認証機関「Verra(ベラ)」の5種類の認証制度を、ピックアップして紹介します。

①VCS(Verified Carbon Standard)

VCS(Verified Carbon Standard)は、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD:World Business Council For Sustainable Development)や国際排出量取引協会(IETA:InternationalEmissions Trading Association)、気候グループ(The Climate Group)の、民間企業が参加している3団体が2005年に設立した認証基準・制度です。

森林や土地利用に関連するプロジェクト(REDD+を含む)や湿地保全による排出削減プロジェクトなど多様なプロジェクトが実施されています。

創出方法論が「エネルギー・工業プロセス・建設・輸送・廃棄物・工業・農業・森林・草地・湿地・家畜・家畜と糞尿」の11種類と多様なことから、主なボランタリークレジットの中で、発行量が最も多く2018年年間取引量の66%を占めており 、大気中から 10 億トン以上の炭素およびその他の GHG 排出量を削減または除去しました。

②JNR(Jurisdictional & Nested Redd+)

JNR(Jurisdictional & Nested Redd+)は、複数のフレーム間におけるプロジェクトでCO2排出の削減ができた時に、削減量がフレーム間で重複して計上されないようにするルールであるネスティングされたプロジェクトの認証基準です。

森林減少・劣化の抑制に加え、森林保全、持続可能な森林経営や森林炭素蓄積の増加に関する取組を対象としており、代替生計手段としてのアグロフォレストリーの推進にも寄与しています。

③CCB(Climate Community & Biodiversity)

CCB(Climate Community & Biodiversity)は、2005年5月に設立された、地球温暖化の軽減等を実現していくための適切な土地利用(LandUse)プロジェクトに対して、生物多様性、気候変動対策、地域社会への影響などを評価する基準で、プロジェクトの設計段階、或いはプロジェクト開発の早い段階で評価をします。

プロジェクトが CCB の認証を受けるためには、プロジェクト提案者は、23項目の基準情報(15の必須基準と8つの任意基準)についてまとめて報告しなければなりません。

実際の認証は、この情報を元に 第三者機関である DOE(Designated OperatingEntity)等が行います。

④Plastic Program(Plastic Waste Reduction Program)

Plastic Program(Plastic Waste Reduction Program)は、プラスチック廃棄物削減基準です。

毎年使用されるプラスチックは、 3 億 5,000 万トンを超えますが、リサイクルされるプラスチックはほんの一部です。

未使用プラスチックの削減や、リサイクルされず海洋汚染を引き起こしているマイクロプラスチックなどの廃棄物は、世界各国の政府や企業、そして消費者にとって大変憂慮される事態となっています。

この状況を打開するために、Plastic Programは、様々なプラスチック廃棄物の収集・リサイクル活動に対してクレジットが発行され、取引を行うために使用されます。

ウェイストピッカーの生活改善にも役立っています。

⑤SD VISta(Sustainable Development Verified Impact Standard)

SD VISta(Sustainable Development Verified Impact Standard)は、持続可能な開発検証効果基準の認証制度で、専門家の第三者監査人を利用して検証が行われます。

ジェンダー平等や経済発展から手頃な価格のクリーン エネルギーや野生動物の回復気候変動に至るまで、21世紀の世界が抱える課題、SDGs(国連持続可能な開発目標)の社会および環境プロジェクトの現実世界の利点を認証するための最高の基準です。

SDGsに関連するプロジェクトであれば、気候変動以外のものも申請できます。

まとめ

「Verra(ベラ)」は、京都議定書を背景に設立された民間カーボンクレジット認証の大手プロバイダーです。

世界で最も取引量が多い民間カーボンクレジットVCSの認証・管理をはじめ、他のプログラムも認証・管理を行っている他、VCMGD(自主的炭素市場グローバルダイアログ)の支援や、企業と連携し気候変動対策に取り組んでいます。

Verraの認証制度には、前出のVCS・森林保全の基準JNR・土地利用の基準CCB・プラスチック廃棄物削減基準のPlastic Program・SDGsの認証基準のSD VIStaがあります。

Verraは、2022年にVCSのプログラムの認証クレジット数が10億クレジットを達成したと発表するなど、民間のカーボンクレジット取引の活発化を牽引していると言っても過言ではないでしょう。

 

参考:

Verra
カーボン・クレジット・レポートの概要|経済産業省
世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等を取り巻く状況|経済産業省
VER(Verified Emission Reduction)認証機関・方法の概要
米Verraの民間認証クレジットVCSと自主的炭素市場グローバルダイアログの概要
気候変動で脚光 カーボンオフセット ってなに? – 日本経済新聞
【日本初】海洋プラスチックの収集・リサイクルによるプラスチッククレジット創出プロジェクトを開始
自主的カーボンクレジット認証の最大手、米Verra。認証クレジット量が10億クレジットを達成。ケニアのREDD+事業のクレジット認証で。脱炭素化の広がりでクレジット需要増を反映(RIEF)
NET ZERO NOW | 環境経営を わかりやすく

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