スコープ2の排出削減を目的とする「TIGR (Tradable Instruments for Global Renewables)」とは?メリット・デメリット

TIGR

海外の環境証書・TIGR(Tradable Instruments for Global Renewables)を紹介します。

TIGRの発行国や対象にできる発電設備や使用期限などの情報に加えて、どのようなメリットがあるのか、デメリットはあるのかなどを見ていきましょう。

TIGR (Tradable Instruments for Global Renewables)とは?

TIGR (Tradable Instruments for Global Renewables・以降本文中では「TIGR」と記述)は、北米以外の国や地域での利用を目的に発行している環境証書(電力証書)で、アメリカ合衆国・カリフォルニア州に本拠地を置くAPX社(An Xpansiv Company)が標準化を担当しています。

以下表にTIGRの概要をまとめます。

対象国 インド・インドネシア・グアテマラ・シンガポール・タイ・台湾・中国・バングラデッシュ・フィリピン・ベトナム・マレーシアなどアジアを中心に発行(北米以外の国)
発行者 APX社
対象となる発電設備 太陽光発電がメイン
電源特定の可否 可能
国際イニシアチブの活用可否 発行国のRE100・CDP・SBTなどが活用可能
使用期限 なし

TIGRの対象国はアジアが中心で、特にシンガポールの太陽光発電の証書が多く、自家発電設備の証書もあります。アジア諸国のほか、南米・グアテマラの証書も発行されています。これらの国全てでI-RECが発行されていますが、TIGRの取引も活性化してきました。

TIGRの取引の価格は発行される国・発電方法によって異なりますが、太陽光発電証書の2021年時点の平均価格は1kWhあたり約0.2円から0.3円でした。

(参考:自然電力グループ「海外における環境証書」

(参考:自然エネルギー財団「電力証書が自然エネルギーを増やす」

TIGR (Tradable Instruments for Global Renewables)が発行された背景・理由

TIGRは、企業がRE100を達成するための手段として発行されました。スコープ2の排出削減が目的でTIGRを入手した場合には、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)への情報開示が義務となっています。

TIGRを購入した企業はTIGRレジストリに自社でアカウントの開設を行い、プロジェクト開発者からTIGRを購入し、自社企業で譲渡・償却などのプロセスを管理できる仕組みです。TIGRレジストリにアカウントを開設している小売事業者を仲介してTIGRを購入する企業も多いです。

企業は上記のような方法でTIGRを入手し、償却してから情報開示のスキーム(RE100・CDP・SBTiなど)に報告を行います。

数多くの企業がこのシステムを構築することにより、RE100などの目標を達成しています。

(参考:JETRO「中国における脱炭素に向けた取組・方法に関する調査」

TIGR (Tradable Instruments for Global Renewables)を購入するメリット

日本企業がTIGRを購入する際にどのような利点があるのかを見てみましょう。

  • 海外のクレジットの方が国内クレジットよりも安価
  • スコープ2の目標に設定できる
  • 日本よりも適応の自由度が高いため目的に合わせてクレジットを選択可能
  • 国によってその国の貧困救済に貢献できる

TIGRは、SBTi(科学と調整した削減目標イニシアチブ)目標の設定に際して企業がマーケットベースでの算出方法を選んだ場合、スコープ2の目標にTIGRを組み込むことができるようになっています

電力関連の環境証書なので、購入・活用することによって環境保全に貢献できますが、TIGRを発行している国が貧しい国の場合には救済措置という姿勢での購入も可能です。

複数の分野で社会に貢献したという実績を得ることができ、政府・自治体・他企業・消費者にPRできるのは、企業にとって非常に大きなメリットになります。

TIGR (Tradable Instruments for Global Renewables)を購入するデメリット

TIGRの購入には解決されていない課題もあります。

  • RPS制度で使用できない可能性がある
  • 詳細な情報が少なくて不透明

中国のRPS制度で使用できないというデメリットは、同じ条件を持つ日本企業にも当てはまるケースがあるのです。

また、日本語で詳細を紹介しているサイトが少ないのもデメリットです。TIGRは北米以外の全ての国家で使用可能なクレジットですが、日本国内での知名度がまだ低いため、購入・活用しているというPRが空回りをしてしまう可能性もあります。

提供できる情報が少ないためにグリーンウォッシュという誤解を招きかねないので、TIGR活用の有用性をアピールしていく努力が必要です。

TIGR (Tradable Instruments for Global Renewables)の活用方法

TIGRはスコープ2においてエネルギー属性証書としての役割を果たします。

また、I-RECとGECは分散型再生可能エネルギープロジェクトで証書を発行できませんが、TIGRは証書発行が可能です。取引価格もGECより安く、グリーン電力調達よりも取引手順がシンプルなので、容易に取引でき、活用しやすい証書です。

脱炭素経営に取り組んでいる企業にとって、TIGRの使い勝手の良さはありがたい長所です。国内のクレジットでは適用できなかった分野にも適用できるので、幅広く活用できるでしょう。

(参考:JETRO「中国における脱炭素に向けた取組・方法に関する調査」

まとめ

TIGRは北米を除く全ての国と地域で発行・取引が可能な国際グリーン証書なので、国内の証書にはない特性を備えています

広いジャンルのビジネスに適用可能で、国内の電力証書よりも安価に取引できる点でも、脱炭素経営の資金難に悩む企業にとっては申し分のない電力証書といえます。

今後国内での活用が増えることにより、さらに利用しやすくなるでしょう

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