省エネとは?意味や重要性、企業・個人でできる取り組み事例を紹介

省エネとは?意味や重要性、企業・個人でできる取り組み事例を紹介

近年では、原油高騰や世界情勢の不安定化・地球温暖化などの問題も山積し、世界全体として『省エネルギー』の活動がさらに活発になっています。

省エネが必要とされる背景もさまざまで、省エネの意義は高まっています。この記事では、企業・個人でできる省エネの取り組みを紹介します。

省エネとは

省エネとは、『省エネルギー』の略で、エネルギーを効率よく使うことをいいます。

石油や石炭、天然ガスなどの限りあるエネルギー資源を無駄遣いせずに、効率的に活用することを目指すものです。

エネルギーを無駄に使わないことで、地球温暖化の防止や資源の節約につながります。

また、エネルギーの使用を抑えることで、電気代やガス代などのコストを削減することが可能です。

これらの理由から、省エネは企業だけでなく、個人でも積極的に取り組むべき重要なテーマです。

省エネが必要とされる背景

省エネが必要とされる背景としては、地球温暖化の進行やエネルギー資源の枯渇といった環境問題に対する対策が大きく、エネルギーの効率的な使用が求められています。

特に、化石燃料の消費による二酸化炭素の排出が地球温暖化を引き起こしている他、世界的なエネルギーの需要増加により既存のエネルギーの使用を抑える「省エネ」が重要視されています。

また、エネルギー資源の枯渇は、エネルギー供給の安定性やエネルギー価格の安定に影響を及ぼす可能性があり、これを防ぐためにも省エネが必要とされています。

地球温暖化による気温の上昇

産業革命以降、エネルギーの多くは石油や石炭などの化石燃料を燃やして作られてきました。その後の研究で、化石燃料を燃やすことで熱を蓄える性質を持つ二酸化炭素の排出が、地球温暖化を引き起こしているという科学的な認識が広まりました。

気温は産業革命前と比較して、2018年の世界気象機関(WMO)の報告で1.15℃高いとされています。この結果、地球全体の海面温度の上昇、南極の海氷面積の記録的な低さ、陸地での異常気象等が明らかな要因とされています。

(参考:世界の平均気温、産業革命前から1・15度上昇…国連事務総長「地球が出す遭難信号」 : 読売新聞

エネルギー需要の世界的な増加

世界の人口増加と経済成長に伴い、エネルギー需要は増加の一途を辿っています。特に、新興国の経済発展に伴い、エネルギー消費が大幅に増えています。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、2040年の世界のエネルギー消費量は、2014年と比べて約1.3倍に増加するとの予測です。その増加分の多くを占めるのが、中国やインドなどのアジアを中心とした新興国だと予測しています。

新興国は、近年大きな経済発展を遂げており、今後ますますその成長は加速していくでしょう。これに伴い、経済を支える石油や石炭、天然ガスといった化石燃料の需要も増加すると考えられます。

(参考:世界のエネルギー事情|エネルギーの現状 |エネルギー|事業概要|関西電力

一般家庭で消費されるエネルギーも増加傾向

国内で消費されるエネルギーの17%は家庭によるもので、その割合は年々増加傾向です。1973年度から2020年度での消費電力量の伸びは、家庭部門で1.9倍となっています。

家庭のエネルギー消費のおよそ3割は冷暖房に費やされています。家のエアコン設置台数も増えていますし、昨今の猛暑もあいまって使用は増えています。

他にも、パソコンやお掃除ロボット等の家電の増加などエネルギー利用機器や自動車の普及で大きく増加しています。

(参考:安定供給 | 日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 |広報パンフレット|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
(参考:第1部 第2章 第1節 (3)暮らしから考える資源と消費 | 消費者庁 (caa.go.jp)

特にエネルギー消費の多い家電

一般家庭で使用される家電のうち、最もエネルギー消費が多いものは、エアコンです。冷房や暖房に大量の電力を消費します。また、冷蔵庫も一年中稼働している、洗濯機も消費電力の大きい家電にあげられます。

最近では「省エネ」を意識した製品の登場で幾分ましになっているとはいえ、家庭内での電気消費の中ではまだまだ消費量は大きいです。逆に言いますと、これらの家電は古いほど電気消費が大きくなります。

省エネを行う意味・重要性

省エネ、つまりエネルギーの効率的な利用は、私たちの生活の多くの側面で重要な役割を果たしているとともに、世界の持続的な発展のために非常に重要な意味合いを持ちます。特に環境保全、エネルギー供給の安定、2つの観点から非常に重要です。

地球温暖化防止になる

地球温暖化とは、温室効果ガスの増加によって地球の平均気温が上昇する現象です。地球温暖化は、気候の変動、海面の上昇、生態系の破壊、食糧の不安定化、感染症の拡大など、人類や自然に様々な影響を及ぼします。

地球温暖化の主な原因は、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出です。二酸化炭素は、太陽の熱を地球に閉じ込める役割を果たす温室効果ガスの一種で、二酸化炭素の濃度が高くなると地球の温度が上昇します。

省エネを行うことで、二酸化炭素の排出量を減らすことができます。二酸化炭素の排出量を減らすことで、地球温暖化の進行を遅らせることができるとともに、エネルギーの節約やコストの削減にもなります。

化石資源の枯渇防止になる

化石資源とは、有機物が長い時間をかけて変化したものです。化石資源は、エネルギー源として広く利用されていますが、有限で再生できません。

化石資源の枯渇は、エネルギーの不足や価格の高騰、経済の混乱、国際紛争など、深刻な問題を引き起こす可能性があります。現在の生産量を前提とした場合、石油・天然ガス共にの採掘可能年数は約50年前後と言われています。

採掘可能年数は新たな油田開発などで多少伸びるかもしれませんが、資源として限られていることは変わらず、いずれ枯渇してしまうでしょう。省エネにより、この枯渇を防止することにつながるため非常に重要です。

省エネに関する日本・世界の取り組み

地球温暖化や化石資源の枯渇は世界的な問題であることから、日本のみならず世界中で省エネに対する取り組みが行われています。

日本での取り組み

日本は、エネルギー資源が乏しく、化石燃料の輸入に依存している国です。そのため、省エネルギー(省エネ)は、エネルギーの安定供給と地球温暖化防止のために重要な取り組みとなっています。

2011年の東日本大震災以降、原子力発電所の停止に伴って、エネルギー需給の逼迫が生じました。これを受けて、政府は「エネルギー基本計画」を策定し、2030年までにエネルギーの自給率を24%に引き上げるとともに、温室効果ガスの排出量を2013年比で26%削減するという目標を掲げました。

さらに日本は、2050年にカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量の実質ゼロ)を目指しています。

そのために、法律の積極的な改正や、省エネ推進に関する補助金を拡充しています。

省エネ法の積極的な改正

日本はエネルギー資源に乏しいため、省エネは国家的な課題として取り組みがなされてきました。その大柱が『エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律』、いわゆる省エネ法です。

この法律も変わりゆく時代に合わせて積極的に改正が行われてきてきました。

直近では2023年4月の改正により、事業者に対する義務や努力義務が強化されました。

具体的には、エネルギー管理者の配置やエネルギー消費量の報告、エネルギーの使用の合理化計画の策定や実施、非化石エネルギーの導入や電気需要の最適化などが求められています。

また、家庭やオフィスなどの需要サイドにも、省エネ製品の表示や選択、節電の習慣化などが促されています。

省エネに関する補助金を拡充

日本では、省エネルギーの取り組みを促進するために、様々な補助金制度が設けられています。

工場や事業所においては、先進的な省エネ設備やシステムの導入や、エネルギー管理システムの導入や改善などの取り組みに対して、一定の割合で補助金が交付されます。

また、中小企業等に対しては、省エネの専門家が訪問して省エネ診断、講師派遣、AIやIoTなどの新技術を活用した診断を提供するなどの支援も行われています。

家庭やオフィスにおいては、高断熱窓や高効率給湯器、エコ住宅設備などの省エネ設備の導入や改修に対して、一定の金額で補助金が交付されます。

特に、子育て世帯や若者夫婦世帯に対しては、高い省エネ性能を有する新築住宅の取得に対しても補助金が交付されます。

(参考:各種支援制度 | 省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト

アメリカでの取り組み

アメリカは世界最大のエネルギー消費国であり、温室効果ガスの排出量も中国に次いで第2位です。

そのため様々な政策や施策を通じて省エネに取り組んでいます。その中で、州レベルでの代表的な取り組みの一つが、EERS(Energy Efficiency Resource Standard)です。

EERSとは、エネルギー効率資源基準のことで、電力会社やガス会社に対して、一定の期間内にエネルギー効率を向上させる目標を設定し、達成することを義務付ける制度です。州政府がそれぞれの状況に応じて目標や方法を設定するため、柔軟性が高いです。

2004年にテキサス州が最初に導入し、その後、多くの州が追随しました。 現在、EERSは、全米の約半数にあたる26州で採用されています。

EERSの導入によって、アメリカでは省エネの効果が現れています。 例えば、2019年には、EERSのある州では、エネルギー効率プログラムによって、電力の需要が約2.5%、ガスの需要が約1.1%削減されました。

(参考:米国・欧州における省エネルギー政策について

中国での取り組み

中国は、世界有数のエネルギー消費国であり、温室効果ガスの排出量も最大です。

中国では、国家レベルでの政策や施策を通じて省エネに取り組んでおり、その中心的なものが「第14次5か年計画における省エネ・排出削減総合作業計画」です。

2021年1月に中国の国務院が発表したもので、2021年から2025年までの第14次5か年計画期間中に実施する省エネ・排出削減の目標や方策を示しています。この計画では、以下のような内容が盛り込まれています。

  • 単位GDP当たりのエネルギー消費量を2020年比で13.5%削減する。
  • 単位GDP当たりのCO2排出量を2020年比で18%削減する。
  • エネルギー消費総量に占める非化石エネルギーの割合を20%前後に高める。
  • 森林の炭素吸収量を60億トン以上に増やす。

この目標に向けて10大重点プロジェクトも推進されています。

その中では、省エネに向けた設備改良・既存建築物の省エネ化、交通、物流面における省エネ・排出削減の推進、石炭使用量の削減・クリーン高効率利用とクリーン燃料による代替、VOC排出抑制対策の推進などの項目のプロジェクトが行われることが示されました。

(参考:「第 14 次 5 か年」再生可能エネルギー発展計画の印刷配布に関する通知

 

企業が行う省エネへの取り組み事例

国家レベルでの省エネ取り組みが積極的に行われる中、企業においても省エネに対する取り組みが行われています。

①トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社は、地球環境の問題に対して積極的に取り組んでいる企業の一つです。その取り組みの中心にあるのが、「トヨタ環境チャレンジ2050」です。

2015年に発表されたトヨタの長期的な環境戦略で、「もっといいクルマ」「もっといいモノづくり」「いい町・いい社会」の3つの領域で6つの具体的な目標を掲げています。

  • 新車CO2ゼロチャレンジ:2050年までに新車の平均走行時CO2排出量を2010年比で90%削減する。
  • ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ:製品のライフサイクル全体でのCO2排出をゼロにする。
  • 工場CO2ゼロチャレンジ:2050年までに工場のCO2排出をゼロにする。
  • 水環境インパクト最小化チャレンジ:各国地域事情に応じた水使用量の最小化と排水の管理を行う。
  • 循環型社会・システム構築チャレンジ:日本で培った「適正処理」やリサイクルの技術・システムのグローバル展開に向けて取り組む。
  • 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ:自然保全活動を、グループ・関係会社から地域・世界へつなぎ、そして未来へつなぐ。
    (「トヨタ自動車「トヨタ環境チャレンジ2050」より引用)

これらの目標に向けて、ハイブリッド車の普及促進、燃料電池自動車(FCV)の開発と販売、再生可能エネルギーの活用、工場でのCO2排出削減などトヨタは様々な取り組みを進めています

②株式会社エスコ

株式会社エスコは、省エネ診断・コンサルティングや省エネ設備更新工事などのサービスを提供する企業です。環境省から省エネ診断の専門機関に認定されており、2万社を超えるお客様の省エネ・コスト削減対策支援の実績があります。

エスコの省エネへの取り組み事例としては、以下のような例があります。

  • 食品工場への太陽光発電の導入:「自家消費型」太陽光発電を設置することで、消費電力を低下。
  • オフィスビルへのデマンドコントローラーの導入:デマンドコントローラーにより、空調機の電力を自動コントロールし、ピーク電力ならびに通常使用時の無駄・ムラをなくし、コスト削減。
  • 病院へのLED導入:60Wの白熱電球から7WのLEDになり、消費電力を大幅削減。

以上のように、エスコは様々な業種や施設において、省エネ診断・コンサルティングから省エネ設備更新工事までワンストップでサポートしています。エスコのサービスを利用することで、エネルギーの無駄を減らし、環境負荷を低減するとともに、経営の効率化にも貢献できます。

(参考:省エネ・コスト削減のエスコ(ESCO) | エスコ(ESCO)の豊富な実績とノウハウで、省エネ・節電・コスト削減対策をサポートいたします

個人でもできる省エネへの取り組み

個人においても、様々な方法で省エネに取り組むことができます。

消費電力を減らす

家庭で消費電力を減らす場合には、以下のようなことができるでしょう。

  • 電気製品は必要な時だけ使用し使用時間を減らす
  • 冷暖房・冷蔵庫等の設定温度を1度上げるだけでも電力消費量を削減が可能
  • 太陽光発電によって発電した電気を自分で使うことで電力会社からの購入量を減らせる
  • エコキュートは、空気中の熱を利用してお湯を沸かすシステムで、電気温水器よりも消費電力が約3分の1になる

省エネ家電への買い替えを検討する

古くなったエアコンや冷蔵庫など消費電力が大きい家電を、現代の省エネ技術を導入した家電への買い替えも省エネにつながります。また、発熱電灯をLED証明に変更するだけでも節電効果は大きくあります。一時的にお金はかかりますが、高騰している電気代を鑑みると買い替えの検討は現実的でしょう。

まとめ

省エネは産業革命以後の世界の問題です。二酸化炭素などの温室効果ガス排出量が増え続けると、地球温暖化等に影響を及ぼしてしまいます。

このままいくと水没する国が現れるなど、影響はさらに大きくなるでしょう。

これは現代の課題のみならず未来に対する課題でもあり、国家から一個人まで省エネの取り組みを行うことで、よりよい未来にしていきましょう。

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