地球沸騰化とは?意味や地球温暖化との違い、原因、取り組むべき対策について解説

地球沸騰化とは?意味や原因、取り組むべき対策について解説

地球温暖化による被害報告が世界中から寄せられている現代に「地球沸騰化」という新しい言葉が生まれました。

2023年7月に世界の平均気温が16.95度に達して観測史上最高気温を記録した事態に際し、国連のグテーレス事務総長が「地球温暖化時代は終わって地球沸騰化時代になった」と発言しています。この「地球沸騰化」は、2023年のユーキャン新語・流行語大賞に選ばれました。

地球沸騰化の意味・原因・影響・対策を見ていきましょう。地球温暖化との違いも解説します。

(参考:日刊スポーツ「【流行語大賞】「地球沸騰化」トップ10入り 7月の世界平均気温は観測史上最高を記録」

地球沸騰化の意味と原因

2023年に生まれた地球沸騰化という言葉とその言葉が生まれた意味を紹介します。地球沸騰化の原因も見ていきましょう。

地球沸騰化とは

国連のグテーレス事務総長の発言から生まれた地球沸騰化は、これまで世界各国で重大な問題になっている地球温暖化よりもさらに深刻な現象を表す言葉です。

(出典:気象庁「世界の季節平均気温」

1890年夏から記録されている世界の夏の平均気温偏差グラフを見ると、2023年夏の世界の平均気温が長期的に見て100年に0.73度の割合で上がっていることがわかります。

「気温変動対策を急ぐ必要がある」という意識を示すために生まれたのが「地球温暖化(Global Warming)」よりも気温上昇の深刻な状況を表す「地球沸騰化(Global Boiling)」という言葉だと言われています。

地球沸騰化の原因

2023年夏、日本・東京では観測史上初、8月全日が真夏日を記録し、世界各国で最高気温を更新し、熱波が原因で山火事が多数発生しています。この「沸騰化」の原因を日本と世界に分けて見てみると、日本も世界も複数の条件が重なったことによって異常な高温となったことがわかります。

原因
日本 ・7月後半に強く張り出した太平洋高気圧が強い日射を生み出した
・太平洋高気圧が日本周辺でさらに強まった
・上空約1万km付近で吹いている亜熱帯ジェット気流が北側に蛇行した
世界 ・2023年からエルニーニョ現象が発生して熱帯域が記録的な暑さとなった
・日本と同様に北側に蛇行した亜熱帯ジェット気流が気温を上昇させた

上記で紹介した沸騰化原因は、いずれも大気と海洋のメカニズムによるものです。しかし、人類の活動から生じた地球温暖化も猛暑の原因なのです。

(参考:東京海上研究所「2023年夏、どうして地球は『沸騰』したのか」

地球沸騰化と地球温暖化の違い

地球沸騰化は、地球温暖化よりも気温上昇の度合が高い状態を表現しています。「温まる」ではなく「沸騰する」と形容することで、現在の厳しい状況を強調しているのです。実際に地球が沸騰したわけではなく、地球上の水が気温上昇によって沸騰したわけではありません。

しかし、2023年夏の異常な気温は、これまで使ってきた「温暖化」というやわらかい言葉では不十分なほどの暑さでした。この暑さを表現するのにふさわしいという理由で「沸騰」と表現されたのです。

地球沸騰化による影響

地球の沸騰化により、さまざまな現象が生じています。地球の気温が大きく上昇したことが原因で世界の各地で起こった現象・今後起こりうる現象を見てみましょう。

気候変動による災害の増加

2023年夏、国内外でさまざまな災害が発生しました。世界各国で起こった代表的な被害をご覧ください。

地域 影響
ヨーロッパの各地域 熱波の頻発
ギリシャなど 大規模な山火事・森林火災発生
アメリカ・デスバレー 気温が54度近くまで上昇して最高記録更新
日本 影響範囲が広く速度が押し台風が発生しやすくなり鳥取県などで多大な被害

沸騰化と言われる暑さが続くことにより、熱中症で搬送される人、死亡する人が増加しており、2024年夏も同様の事態が発生することが危惧されています。 

気温上昇による労働生産性の低下

ILO(国際労働機関)は、2019年7月に「気候変動原因の暑さのストレスにより、2030年には8,000万人の常勤雇用分に該当する労働生産力を喪失する」という予測を報告書に記しました。21世紀末までに気温が1.5度上昇するというシナリオに基づいた予測で、予測される経済損失は2兆4,000億ドルに及びます。

2030年には、暑さストレスの影響が大きい西アフリカや南アジアの約5%の労働力が失われるという記述もありました。経済への影響を最も受ける貧しい地域は労働環境がさらに悪化し、経済移民の増加や国家間の貧富の格差拡大などを招く可能性が高いです。

(参考:E-SQUARE「ILO、気温上昇により2030年までに労働生産性が大幅に低下と報告」

農作物の供給量減少

地球沸騰化は、農作物の収穫量減少・生育障害・品質低下などの影響を及ぼします。

農研機構が気候変動予想を盛り込んだ米の収穫量のシミュレーションを実施した結果、栽培産地でも将来減収の可能性が高いことが判明しました。

また、豪雨・台風によって、農作物が被害を受けるだけではなく、農地・農道が崩壊するといった問題が発生しやすくなります。

これらの事態を招かないために、以下のような対策の実施が必要とされています。

  • 高温耐性がある品種導入
  • 高温の影響を受けにくい生産方法を考案・実施
  • 豪雨・台風の事前・事後対策を入念に行う

これに加えて、酷暑の中で農作業をする人の熱中症対策なども従来以上に注意しなければなりません。

地球沸騰化に有効な対策

地球の沸騰化現象に対して農業分野で取るべき対策は前述の通りです。この章では、社会全体に求められている対策・実施されている対策を解説します。

カーボンネガティブの推進

CO2の排出量と吸収・削減量をイコールにするカーボンニュートラルが推奨されていますが、地球の沸騰化を受けて「カーボンニュートラルよりも効果が大きいカーボンネガティブを推進するべき」という考えが広がっています。カーボンネガティブはCO2の吸収量が排出量を上回った状態だからです。

CO2の排出をゼロにするカーボンゼロの実現は難しいとしても、カーボンネガティブなら世界中で積極的に推し進めることによって実現できる可能性があり、世界各国の取り組み内容が注目されています。

ネガティブエミッション技術の実用化

ネガティブエミッションは、カーボンニュートラルやネットゼロ実現に向けて考案された手法の1つで、回収・吸収したCO2を貯留・固定化して大気中のCO2除去を行う技術を表します。自然のCO2吸収と固定化のプロセスに人為的プロセスを加えてCO2吸収・除去効果をさらに高める技術なのです。

経済産業省が示しているネガティブエミッション技術は以下の通りです。

(出典:経済産業省「ネガティブエミッション技術について」

海外企業では、ネガティブエミッション技術の取り組みが進んでいます。Amazonは2040年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げ、2030年までにカーボンネガティブを達成することを目指しているマイクロソフト社は、10億ドルの基金をネガティブエミッションを含む技術開発に設置すると宣言しました。

再生可能エネルギーの活用

地球の気温上昇を食い止める対策として、太陽光発電風力発電水力発電地熱発電バイオマス発電などの再生可能エネルギーを活用する動きが活発化しています。

現状のメインエネルギー源は温室効果ガスを大量に発生する火力発電ですが、環境に負荷を与えない再生可能エネルギーを活用することで、温室効果ガスの排出を減らすと同時に、地球温暖化と沸騰化を促進する化石燃料の利用率を減らせるからです。

エネルギー源の大半を輸入に頼っている日本では、エネルギー自給率向上も達成できる再生可能エネルギー導入が推進されています。

地球沸騰化に対する企業の取り組み事例

地球温暖化・地球沸騰化に対して、世界中の企業がさまざまな取り組みを実施しています。ここでは日本の企業2社の取り組み実例を紹介します。

取り組み事例①株式会社エコシステム

環境負荷が少ない舗装材や壁材を主体に製造・販売している株式会社エコシステムは、透水性や保水効果を備えたコンクリート舗装材・樹脂舗装材・特殊コンクリート製品「K-グラント」を開発しました。

(出典:A-PLAT「都市型洪水やヒートアイランド現象を抑制するリサイクル舗装材」

コンクリートやアスファルトの代わりに適用することで、都市型洪水・熱中症のリスクを軽減できるため、地球温暖化と地球沸騰化対策に活用できると期待されています。特殊コンクリートの原材料は瓦なので、リサイクルが難しい瓦のリサイクルができる点でも優れた製品です。

通常のコンクリート工場での生産は難しいのですが、移動可能で安価な車載式舗装材製造プラントを開発してK-グラントを製造しやすくし、利活用が全国に広がるよう取り組んでいます。

取り組み事例②日本航空株式会社

JALグループは、公式サイトで公開しているサステナビリティで気候変動への対応策を記載しています。CO2総排出量の削減実績と目標は以下の通りです。

(出典:JAPAN AIRLINES「CO2総排出量の削減」

旅客機などの航空機のCO2排出量は全世界で削減する方向に進んでおり、化石燃料から生成されたジェット燃料の代替品としてバイオ燃料の研究開発が推進されています。「環境負荷が少ないバイオ燃料活用によってCO2の排出を大幅に削減することで地球沸騰化をこれ以上進行させない」という姿勢です。

また、プラスチックの削減や紙の削減で有限資源の有効利用を行うと共に、環境汚染の予防策として廃棄物の削減も実施中です。

(参考:JAPAN AIRLINES「サステナビリティに関する主な取り組み項目(指標と目標)」

まとめ

地球沸騰化という言葉が生まれるほどの高温を記録した2023年夏を境に「世界中で地球の気温を下げて地球環境と地球の生命を守ろう」という声が一層大きくなりました。

日本でも世界各国でも気温をこれ以上上昇させないための取り組みを強化し、地球の環境を正常な状態に戻していかなければなりません。

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