メガソーラーとは?メリットと環境破壊などのデメリット、日本企業の導入事例を解説
- 再生可能エネルギー
メガソーラーとは、1,000kW以上の太陽光発電システムです。
広大な土地に太陽光パネルを設置し、太陽光エネルギーを電気に変換することで電気を生み出す仕組みです。
近年、再生可能エネルギーの普及が進められている中、メガソーラーの導入を検討する企業が増えています。
しかし、メガソーラーにはメリットだけでなく、デメリットや注意点もあります。また、環境破壊への懸念も指摘されています。
メガソーラーの導入を検討する企業に向けて、メリット・デメリット・注意点と環境破壊への懸念について解説しましょう。
目次
メガソーラーとは?
太陽光発電設備の中でも、1MW以上(1,000kW以上)の出力を持つものをメガソーラーと呼びます。
出力とは発電量のことで、1MWのメガソーラーは、200世帯以上の家庭用電力を賄えるのに等しいです。
住宅用の屋根に設置するタイプの太陽光発電とは比べ物にならないほど、メガソーラーは発電能力が高く、約100倍以上に値します。
メガソーラーを設置するには、数千枚もの太陽光パネルが必要です。
例えば、長野県飯田市にあるメガソーラー発電所「メガソーラーいいだ」では、4,704枚の太陽光パネルが使われています。
一方、出力5kWの住宅用太陽光発電では、太陽光パネルは20枚程度です。
このように、メガソーラーと住宅用太陽光発電では、発電能力や設備規模、太陽光パネルの枚数など、あらゆる点で違いがあります。
メガソーラーが注目されている理由と社会背景
メガソーラーが注目されている理由と社会背景について、以下に説明します。
それでは詳しく見ていきましょう。
エネルギー源の枯渇
(出典:日本原子力文化財団)
世界の人口と経済が拡大するにつれて、エネルギーの需要も高まっています。
特に、アジアの途上国では、化石燃料の消費が増え続け、2040年には2014年と比べてエネルギー需要量が約1.3倍になると予測されています。
特に石油は、輸送や発電だけでなく、プラスチックなどの原料としても広く利用されており、世界で最も消費量が多い資源です。
化石燃料は有限な資源であるため、このような状況では資源が枯渇してしまいます。
現在の採掘ペースでは、石炭は約118年、ウランは約106年、天然ガスは約59年、石油は約46年で使い果たされるとされています。
これらの資源は地球が長い時間をかけて蓄積したものであり、再生することは不可能です。
地球温暖化が加速
メガソーラーが注目されている背景には、年々加速する地球温暖化があります。
(出典:JCCCA 世界の地球気温の経年変化)
JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)によると、上記のグラフから分かるように、1880年から2012年までの約130年間で地球の平均気温が0.85℃上昇しています。
この数字は小さく見えるかもしれませんが、すでに多くの影響が現れています。地球温暖化による影響として、主に以下の2つの現象が挙げられます。
海面の上昇
(出典:JCCCA 海面水位の変化観測)
海面上昇は、海水の温度が上がることで海水が膨張したり、氷河や氷床が溶けたりすることで起こります。
1901年から2010年までの間に、世界平均海水位は19cmも上がりました。
この影響で、海抜の低い島国では高潮の際に海水が町や道路に流れ込み、浸水被害が深刻化しています。
海洋酸性化
(出典:国立研究開発法人 国立環境研究所 サンゴと気候変動)
海洋酸性化とは、海に溶け込んだ二酸化炭素が増えることで、海水のpHが下がり、中性に近づく現象です。
海洋酸性化によって、貝やサンゴなどの石灰質の骨格や殻を作る生物の生育が妨げられたり、海の生物多様性や食物連鎖に影響が出たりします。
再エネ比率をあげる必要がある
(出典:資源エネルギー庁)
上のグラフから、日本の再エネ電力比率が2020年度には約19.8%に達したことが分かります。しかし、世界各国の数値には劣り、今後はより普及を促進する必要があります。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、従来の火力や原子力とは異なり、大規模な発電所を一箇所に集中させるのではなく、小規模な発電所を多数分散させなければなりません。
なぜなら、再生可能エネルギーを最大限に活用するためには、エネルギー資源の分散化や分散配置による気候による影響を最小限に抑える必要があるからです。
また、エネルギーの損失という点でも発電所からあまりに遠い電力会社に送電することでロスが生じ、せっかく発電した電気が無駄になってしまいます。分散型の発電方式は、エネルギーの地産地消を実現し、エネルギーマネジメントを効率化するメリットもあります。
一方で地域住民の環境への影響や景観への配慮など、さまざまな課題も生じます。
自治体は再生可能エネルギーの利用に関する正しい情報を住民に提供し、そのメリットやデメリットを共有することが重要です。
また、自治体自身が公共施設で再生可能エネルギーを活用することで、住民に対してモデルケースを示すことも有効でしょう。再生可能エネルギーは日本のエネルギー政策の将来において不可欠な要素です。
自治体と住民との協働による再生可能エネルギーの普及を目指す必要があります。
メガソーラーが問題視されている原因・デメリット
メガソーラーは太陽光発電の大規模な形態です。多くのメリットがありますが、完全に無害というわけではありません。
メガソーラーには、環境への影響やコスト面、安定性などの問題があります。
具体的には、以下の3つのデメリット・問題点が挙げられます。
- 環境を破壊していると問題視されている
- 高圧連系に費用がかかる
- 自然災害の被害を受ける可能性がある
それでは詳しく見ていきましょう。
環境を破壊していると問題視されている
太陽光発電は、森林伐採による設置スペースの確保が必要な場合があります。
大規模なメガソーラーを設置する際には、森林を伐採する範囲も大きくなります。このような場合は、地域住民や自治体と協議して、環境への影響を最小限に抑えることが望ましいです。
しかし、実際には、そうした協議が十分に行われないまま、不適切な場所に太陽光パネルが設置されるケースもあり、生態系の破壊や地滑り、森林減少などの環境問題を引き起こす可能性があります。
再生可能エネルギーの普及は、重要な目標ですが、その過程で環境を犠牲にすることは避けるべきです。メガソーラーの建設に関しては、より責任ある判断と対話が必要だと言えるでしょう。
高圧連系に費用がかかる
メガソーラーの昇圧設備と変圧器(キュービクル)の設置にかかる費用は、数百万から数千万円と高額になります。
メガソーラーは、高圧や特別高圧の電力系統に接続するための手続きや設備が必要です。電気事業法により、発電出力が50kW〜2,000kW未満の場合は、保安規程や電気主任技術者の配置などの義務があります。
発電出力が2,000kW以上の場合は、工事計画届出書の提出を義務づけられています。
自然災害の被害を受ける可能性がある
自然災害による影響は、メガソーラーの欠点のひとつです。
野外に設置されているため、風や雨などの要素にさらされています。特に風が強いときは、パネルが剥がれたり飛んだりする危険性が高いです。
飛んだパネルが建物に当たって窓を割ったりするなど、他の被害も発生する可能性があります。
具体的には次のような二次被害が報告されています。
- 太陽光パネルの損傷
- 吹き飛んだパネルによる二次被害
- 2021年7月に発生した熱海土砂崩れの原因説も
詳しく見ていきましょう。
二次被害①:太陽光パネルの損傷
台風の影響で、大阪市住之江区にある物流施設の屋根に設置された太陽光パネルが大きな被害を受けました。2万8,160枚のうち、約半分にあたる1万3,780枚が強風で破損したり飛ばされたりしました。
さらに、一部のパネルは内部から発火するという事故も発生しました。太陽光パネルは水で消すと感電する恐れがあるため、消火器で対処しました。
同じく大阪沿岸部の別のメガソーラーでも、3万6,480枚のパネルのうち、1万3,413枚が風でひび割れるなどの損傷を受けました。
二次被害例②:吹き飛んだパネルによる二次被害
太陽光パネルは強風で飛ばされると大変危険です。
重いパネルが人や建物に当たる可能性があるだけでなく、破損しても発電し続けるので、近寄ったり触ったりすると感電する可能性があります。
太陽光発電は自然災害に対して脆弱という問題があります。
日本では台風や地震が頻繁に起こるので、自然災害に耐えられる工夫をしなければなりません。
二次被害例③:2021年7月に発生した熱海土砂崩れの原因説も
2021年の夏、東海地方には前代未聞の豪雨が降り続きました。その影響で、静岡県熱海市の伊豆山地区では土砂崩れが起こり、多数の方が亡くなられました。
この悲劇の原因として、最初に疑われたのが近隣のメガソーラーでした。山を開発してメガソーラーを設置したことが、地盤を弱めて土砂崩れを引き起こしたという説がありました。
しかし、その後の調査では、明確な原因は判明しませんでした。それでも、メガソーラーに対する反感は高まったという見方もあります。
企業がメガソーラーを導入するメリット
太陽光発電は、2050年のカーボンニュートラルの目標に向けて、必要不可欠なエネルギー源です。政府も太陽光発電の普及を促進するために、様々な支援策を講じています。
メガソーラーを導入することで、企業は以下の3つのメリットを享受できます。
- カーボンニュートラル実現に貢献できる
- 売電収入を得られる
- 税制面の優遇処置を受けられる
それでは詳しく見ていきましょう。
カーボンニュートラル実現に貢献できる
メガソーラーは、カーボンニュートラルの達成に向けて重要な役割を果たします。
日本の電力需要の大部分は、化石燃料に依存する火力発電によってまかなわれています。
これは地球温暖化の主要な原因である二酸化炭素の排出量を増やすだけでなく、有限な資源の枯渇にもつながってしまいます。
そこで注目されるのが、メガソーラー(太陽光発電)です。
太陽光発電は、再生可能エネルギーの一種であり、発電過程で二酸化炭素を排出しません。また、太陽光は枯渇することなく利用できるエネルギー源です。
メガソーラーを建設・運営することで、日本の電力供給における再生可能エネルギーの割合を高めることができ、カーボンニュートラル社会の実現に向けた大きな一歩となります。
売電収入を得られる
メガソーラーで発電した電気は、再生可能エネルギーの普及を支援するFIT制度やFIP制度を利用して電力会社に売電できます。
これらの制度は太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電力を一定の価格で電力会社に買い取らせる仕組みです。この制度によって、メガソーラー発電所の運営者は、安定した収入源を確保することができます。
長期的な電力販売契約を締結することで、投資コストを早期に回収し、その後は売電収入を利益として計上できます。
税制面の優遇処置を受けられる
太陽光発電設備は、法定耐用年数17年間で減価償却できる資産です。減価償却費を経費として計上することで、課税所得を削減できます。
さらに、2016年から「中小企業経営強化税制」が適用されており、次の2つの優遇措置のうち1つを選択できます。
- 即時償却(特別償却):太陽光発電設備の導入費用を、導入した年度に全額経費として計上できる
- 税額控除:太陽光発電設備にかかる税金を、10%または7%減額できる
即時償却は、通常は決められた年数で分割して減価償却しなければならないものを、申請した年度に一括して減価償却できる制度です。
太陽光発電設備の投資により、売電収入が増加する初年度の税金を抑制できます。
税額控除は、太陽光発電設備に対して直接税額を減額する制度です。課税所得ではなく、法人税から差し引くため、最終的な節税効果はこちらの方が高くなります。
この制度は、2025年3月31日までに認定された場合に限ります。(認定期限であり、申請期限ではありません)
(参考:中小企業庁 中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き)
メガソーラーを導入している自治体・企業の取り組み事例
実際にメガソーラーを導入している自治体・企業の取り組み事例として、以下の3例を紹介していきます。
- 東京都【森ケ崎水再生センター】
- 鹿児島県【崎市枕崎空港跡地第一発電所・第二発電所】
- 鹿児島県【鹿児島七ツ島メガソーラー発電所】
それでは詳しく見ていきましょう。
東京都【森ケ崎水再生センター】
(出典:森ケ崎水再生センター|東京都下水道局)
森ヶ崎水再生センターは大田区昭和島にある日本最大の水再生センターです。
東西2つの施設から成り、東施設は太陽光発電と水力発電を組み合わせて環境にやさしいエネルギーを生み出しています。
高層ビルのない立地に4,480枚の太陽パネルが設置され、最大で1MW(1,000kW)の発電が可能です。
これは、一般家庭の約320世帯が1年間に消費する電力に匹敵します。水力発電も併用することで、年間で約900tの二酸化炭素の排出を抑えることができます。
鹿児島県【枕崎市枕崎空港跡地第一発電所・第二発電所】
(出典:全国初、空港跡地のメガソーラー発電所が稼働|オリックス株式会社)
オリックスと九電工が2014年9月枕崎市の空港跡地でメガソーラー事業を開始しました。空港跡地にメガソーラー発電所を建設する全国初の事業です。
33,544枚のパネルで8.2MWの最大出力を持ち、一般家庭約2,550世帯分の電力を供給可能です。
空港跡地の一部は環境教育施設に改修され、メガソーラーの仕組みや地域への貢献などを学べます。
鹿児島県【鹿児島七ツ島メガソーラー発電所】
(出典:鹿児島メガソーラー発電株式会社)
鹿児島七ツ島メガソーラー発電所は2013年10月、薩摩半島の錦江湾に面した IHI 所有地に完成しました。
127万平方メートルの敷地に約29万枚の太陽電池モジュールが設置され、年間発電量は約7900万kWhで国内最大級です。
これは約2万2000世帯分に匹敵します。CO2排出量を年間約 25,000t減らすことが可能で、再生可能エネルギーとして高い評価を受けています。
発電した電力は九州電力に全量売却し、年間の収入は30億円以上と収益性も高いです。
まとめ
再生可能エネルギーはカーボンニュートラルな社会を実現するために欠かせないものです。
その中でもメガソーラーは多くの企業が導入しているエネルギー源となっています。しかし、設置場所の選定やパネルの廃棄方法などには十分な配慮が必要です。
メガソーラーを設置する場合は、環境への影響を考慮すると同時に近隣住民との話し合いを図り理解を得なければなりません。
「企業・住民・環境の三方良し」を目指すことは、メガソーラーの運営をスムーズにするだけでなく、SDGsの目標達成にも貢献できるでしょう。
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編集者
maeda