火力発電とは?仕組みとメリット・デメリット、今後活用を見直していくべき理由

日本の発電のほとんどを占めているのが、火力発電です。

火力発電は燃料さえあれば安定して発電し続けられる点がメリットです。

しかし、地球温暖化が問題視されているいま、発電時に温室効果ガスを大量に発生させる火力発電の活用を見直す必要があります。

また、火力発電の燃料である石炭や石油はいずれ枯渇するエネルギーです。

今回は、火力発電の特徴、メリット・デメリット、日本および海外の現状などについて解説していきます。

火力発電とは

火力発電とは、石油や石炭などの燃料を燃やすことにより発生する熱エネルギーを利用した発電方法です。火力発電は具体的にどのように行われるのか、以下より説明します。

火力発電の仕組み・発電方法

(出典:四国電力)

火力発電は、化石燃料といわれている燃料を燃やすことによって、熱エネルギーを生じさせて、それを利用して電気を起こす発電方法です。

火力発電およびそれに利用する化石燃料にはさまざまな種類があります。

火力発電で使用している化石燃料

火力発電で使用する化石燃料には、以下の種類があります。

  • 石炭
  • 石油
  • LNG

石炭は植物が腐敗する前に地中に埋没して地熱・地圧を受けて、数千年〜数億年かけて変質することによって生まれます。

かつては、日本の火力発電で使用される石炭は国産のものでした。しかし現在はオーストラリア産などの輸入物のほうが安価なため、輸入物の石炭がメインとなっています。

火力発電で使用される石炭はすりつぶして粉状にして、それを専用のボイラーに入れて燃やされます。

石油は、プランクトンの死骸が数千万年かけて変質してできた燃料です。石炭のような固形物ではなく液状のため、貯蔵・運搬に手間がかからないのが特徴です。

石油も輸入物がメインとなっていますが、輸入先が政治情勢が不安定である中東諸国であるため、情勢によって価格が高騰する場合があり、元の価格も石油より高額です。

火力発電において最も使われている燃料がLNGです。LNGは、価格が石炭と石油の中間に位置する燃料です。気体状になっている天然ガスをマイナス160℃まで冷却して、気体の600分の1も小さい液体に凝縮して運びます。

火力発電の種類

火力発電の発電方法には、以下のような4通りの種類があります。

汽力発電

火力発電の主流となっている発電方式が、汽力発電です。燃料を燃やしたことによって生じる高温・高圧の蒸気の力でタービンを回転させ、そのタービンに接続された発電機を作動させることによって、電力をつくりだします。

蒸気の力を利用した機関は、ピストン運動による蒸気往復機関もありますが、汽力発電​​はそれに比べると軽量で大きな出力が得られるのが特徴です。100万kW以上もの電力をつくり出すところもあります。

高温の蒸気を冷却するために大量の水が必要なことがデメリットであるため、多くの発電所は海岸に近い立地です。

内燃発電

ディーゼルエンジンなどの内燃機関を使って発電をする方法が、内燃発電です。機関内で燃料を燃焼させて、それにより発生するエネルギーを利用します。

起動・停止が早いというメリットがありますが、大きな電力がつくれないことがデメリットであり、離島など小規模な発電所で使われるケースがほとんどです。

ガスタービン発電

内燃機関の一種であるガスタービンエンジンで発電する方法が、ガスタービン発電です。飛行機のジェットエンジンにも導入されています。

ガスタービン発電のメリットは、小型でありながらも高出力の発電が可能なため、スペースを取らずに発電できる点です。また、炭化水素・窒素酸化物が抑えやすい点もメリットに挙げられます。

発電にかかる時間も短いため、緊急災害時にも活用されている発電方法です。

コンバインドサイクル発電

ガス・蒸気の2つのエネルギーを組み合わせた発電方法が、コンバインドサイクル発電です。コンバインドサイクル発電は、以下の手順で行われます。

  1. 天然ガスを燃焼することによってガスの体積が膨張、その力でガスタービンを作動
  2. ガスタービン作動により排出された排ガスの高温を利用して蒸気をつくり、その力で蒸気タービンを作動
  3. 蒸気タービンにより発電

上記のように、複雑な手順となっていますが、他の発電方法と同じ燃料量で多くの発電が見込めるという発電効率の高さがメリットです。

また、他の火力発電に比べると、二酸化炭素・窒素酸化物の排出量が少ないため、環境汚染・地球温暖化などの問題に対応できます。

発電にかかる時間が短く出力調整も迅速にできるため、電力需要に対して即対応ができますが、発電システムが複雑な構造のために、コストがかかるのがデメリットです。

火力発電のメリット

火力発電は、他の発電手段と比較した場合、他にはないメリットが存在します。そのメリットとは大きく分けて主に3つです。

電気を安定供給できる

火力発電の代表的なメリットであり他の発電と異なるところは、電気供給が安定している点が挙げられます。

近年、地球温暖化・エネルギー枯渇問題に対応する発電手段として注目されているのが、再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーとは、太陽光・水力・風力といったエネルギー枯渇の心配がないエネルギーを指します。

自然から発生する力を利用した発電のため、資源が枯渇することがなく、温暖化の原因であるCO2排出がない点が再生可能エネルギーのメリットです。しかし、再生可能エネルギーには、以下のような問題点があります。

  • 天候・季節の変化によって電力供給が変動する
  • 発電のための設備にコストがかかる
  • 設置場所によって発電が活発にならない

再生可能エネルギーは自然の力を利用するために、風が強い・天気が良い場合であれば電力供給が安定しますが、毎日風が強い・晴れという保証はどこにもありません。

時期によってはまったく風が吹かない・太陽が見えないという日が何日も続くことも珍しくないため、そのような時期だと発電は一切できなくなります。

そして、自然の力をしっかりと受け取るための場所も重要です。いくら天気が良い・風が強い日が続いても設備の立地条件が悪いと、自然の力を受け取ることはできません。

また、自然の力を使っているため、燃料に関しては枯渇・コストがかからないというメリットがありますが、それを発電のためのエネルギーに変換するための設備に費用がかかります。

これら再生可能エネルギーのデメリットに一切影響を受けないのが、火力発電です。火力発電は、燃料さえ充足していれば、燃焼によって生まれるエネルギーを駆使して発電が可能です。燃焼さえできれば、外部の変化・設備の立地条件など、一切関係ありません。

いつでも、安定した電力供給が可能なのが、火力発電のメリットです。

発電コストが安い

火力発電は、他の発電手段と比較した場合、発電コストが安いというメリットがあります。発電のコストはエネルギー返還率を確認して判断することが可能です。

エネルギー変換率とは、別名・変換効率とも呼ばれている割合で、水力・火力などのエネルギーが、他のものに変換できる割合を数字で表したものを指します。

エネルギー返還率の数値が高いほど、効率良くエネルギー変換が実施されていることになり、効率が高いということはそれだけコストがかからないということです。

では、日本で実施されている発電方法10種類において、どの発電方法がどれくらいのエネルギー変換率となっているのでしょうか。

(引用:関西電力

上記グラフを見てみると、火力発電は10種類のうち水力発電・天然ガス発電に次ぐ3番目に高いエネルギー変換率となっています。

わずかな資源で大きな発電が見込めるといわれている原子力発電、再生可能エネルギーとして資源のコストがかからないといわれている風力発電よりも、火力発電のエネルギー変換率は高いことがわかります。

再生可能エネルギーであり、将来の発電手段として注目されている太陽光・地熱発電も、エネルギー変換率に関しては、火力発電のわずか4〜5分の1程度の変換率となっています。

常に安定して高いエネルギー変換率を誇っているのが、火力発電が他の発電手段に差をつける確固たる理由です。

出力調整が他の発電方法よりも実施しやすい

火力発電は、他の発電方法よりも発電量の出力調整がしやすいこともメリットです。電力の消費量は時間帯・季節によって落差があります。

しかし、消費電力が多い時期に発電機関の出力が少ないと、電力の供給量が追いつかず、その結果やってくるのが生活における電力不足です。電気は生活のライフラインとして重要な役割を果たしているため、電力不足に陥ると普段の生活が送れなくなります。

風力・太陽光などの再生可能エネルギーは、天候や季節によって発電量が左右されるため、安定していません。このような不安定な発電量を補えるのが火力発電です。他の発電が不足している時に出力を調整することによって、発電不足をカバーするといった対応ができます。

再生可能エネルギーは、電力不足の逆の現象である需要オーバーが起きるケースがあることも特徴です。風邪が強い・天王が良い日が続き必要以上に発電が促進されると、電力が余った状態になるため、消費者は必要以上に電力を消費しないといけません。

そのような事態を回避するために実施されているのが、出力抑制です。これにより需要と供給のバランスが保たれますが、発電事業者は本来電気の供給によって得られるはずの報酬が得られないというデメリットがあります。

火力発電は電力供給のコントロールがしやすいため、出力制御の優先順位が高くなっています。

火力発電であれば、出力調整に負担がかかりにくいため、発電不足・必要以上の発電といった事態が起きません。天候や季節に左右されず、電力供給をコントロールしやすいのが、火力発電のメリットです。

火力発電のデメリット・課題

先述したような数多くのメリットが存在する火力発電ですが、デメリットともいえる点もあります。

温室効果ガスを排出する

火力発電の最大のデメリットは、CO2などの温室効果ガス(GHG)を排出することです。

火力発電は、他の発電手段と比べてどれくらいの温室効果ガスを排出しているのでしょうか。資源エネルギー庁が作成・公表したグラフでは、以下のような結果になっています。

このように、枯渇する問題のない再生可能エネルギーを利用した太陽光発電地熱発電、あるいはウランを燃料にして発電する原子力発電と比較した場合、石炭・石油を燃焼させて発電する火力発電は、合計数百倍ものCO2を排出しています。

CO2などの温室効果ガスは、地球温暖化の原因です。そのため、自動車メーカーなどはガス排出を抑制したエコカーなどの開発を行ない、環境問題に対して積極的な姿勢を見せています。

発電の世界でも環境問題・地球温暖化は深刻な問題で、電力供給の代償として多量の温室効果ガスが排出される発電手段は、大きな問題であるのが現状です。

世界全体の温暖化という環境問題に加えて、石油や石炭といったエネルギーの元になる資源は決して無限ではないという枯渇問題も火力発電が抱える問題となっています。

温暖化・資源枯渇の問題に対応できるのが、再生可能エネルギーである風力・太陽光・地熱などを利用した発電手段です。

そのため近年は、再生可能エネルギーによる発電に移行する流れになっていますが、コストの問題・電力供給の不安定さなど、課題も少なくないため、迅速な移行は難しいといえます。

燃料は輸入に頼らなければならない

火力発電の燃料である石油・石炭はほとんどが輸入ものです。日本のエネルギー自給率と、日本が使用している燃料の輸入先は以下の通りになっています。

(引用:関西電力

上記を見て分かる通り、豊富な土壌を持つカナダ・オーストラリア・ノルウェーは、資源の半数以上を自国でまかなっています。それに対して、日本が利用している国産の資源は全体のわずか1割程度で、ほとんどが輸入品に頼っているというのが現状です

日本が頼っている輸入先は、アメリカ・カナダ・オーストラリアから、南アフリカ・インドネシアなど世界各国となっています。輸入物の特徴は輸入先の政治情勢によって価格が左右される点です。

政治情勢が不安定だと輸入物の価格も不安定となり、時期によっては高騰する可能性もあり、スムーズに輸入できないケースもあります。

再生可能エネルギーであれば、自然の力を利用するため輸入資源に頼らずとも発電できますが、火力発電は石炭などの燃料が必須なので、資源の豊富な海外に頼るしかありません。

世界・日本の火力発電の普及率

火力発電は日々の生活においてどれくらいの普及率となっているのでしょうか。世界・日本の火力発電の普及率をそれぞれ説明します。

世界の現状

世界における火力発電の現状は、自然エネルギー財団がサイト上に公表した以下の棒グラフで確認できます。

(引用:自然エネルギー財団

火力発電は日本を含めたアジア諸国で最も活発に行われています。

それに対して、アメリカ大陸は自然エネルギーに意欲的で、ブラジルやカナダが半数以上の割合で導入をしていることがわかります。

ヨーロッパ諸国は、デンマークはほぼ自然エネルギーで電力をまかない、その一方で他国はガス発電が主流のところ、スウェーデンのように原発と自然エネルギーのみといったところもあり、主流としている発電方法はさまざまです。

全体的に見て、火力発電は古い発電方法でありながらも、各国ではまだ活発に行われていることがわかります。

日本の現状

日本の発電における火力発電の割合は、以下の通りです。

(引用:資源エネルギー庁

日本の電力は約80%が石炭・LNGなどによる火力発電に依存していることがわかります。

日本でも一部の地域で再生可能エネルギーが導入されていますが、コスト面・立地条件などの課題があるために、まだ本格的な全国規模の導入は時間がかかるといわれています。

日本のエネルギーの今後

火力発電が主流になっている日本ですが、今後日本はエネルギーに関してどのような取り組みを行っていくべきなのでしょうか。現在の日本が抱える課題について説明していきます。

火力発電の発電割合を減らし再エネ普及率をあげる

日本は火力発電に代表される化石燃料に依存している状態です。火力発電は発電効率が良いといったメリットがありますが、火力発電に今後も頼り切った状態が続くと、資源の枯渇・輸入物の価格高騰などの問題から脱することはできません。

そのため、海外諸国のように自然エネルギーに移行して、省エネ問題・資源枯渇問題に対処するのが、賢明な判断といえます。

しかし、日本は一部ですでに自然エネルギーが導入されていながらも、立地やコストなどの問題で、早急に移行するのは難しいという状況です。

自然エネルギー導入に関するさまざまな問題をクリアすることが、今後の課題といえます。

石炭や石油ではなくアンモニアを使った発電方法の実用化

近年の日本では、石炭や石油などの燃料ではなく、アンモニアを使用した発電方法の研究が進められています。

アンモニアを燃料として使用した場合のメリットは以下の通りです。

  1. 燃焼してもCO2排出がなく、地球温暖化の問題に対応できる
  2. 液体にもできるため、貯蔵・運搬が円滑にできる
  3. 以前からさまざまな分野で使用されてきたため、貯蔵・運搬・保管のシステムが出来上がっている

まだ実際の現場では導入されていないアンモニア発電ですが、今後の研究の成果が期待されています。

COP28で日本は4年連続化石賞を受賞

2023年12月3日、国連の気候変動会議「COP28」において、日本は「化石賞」という不名誉な賞を受賞しました。

化石賞とは、世界130ヵ国の1,800を超えるNGO団体のグループ「気候変動ネットワーク」が、COPの期間中毎日、気候変動対策に消極的だと判断した国を選んで贈っている賞です。

日本が「温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない石炭火力発電所の新規建設は行わない」「火力発電の化石燃料をアンモニアに転換して排出削減を進める」と表明したことに対し、「既存の石炭火力を延命し、再生可能エネルギーへの移行を遅らせている」との批判が込められています。

今後は、本の脱炭素政策をさらに具体的・積極的なものにし、世界に発信していくことが重要であると言えるでしょう。

COP28における日本以外の化石賞受賞国は、以下の通りです。

  • ニュージーランド
  • アメリカ
  • ブラジル
  • ロシア
  • カナダ
  • ノルウェー
  • 韓国
  • イスラエル
  • オーストラリア
  • EU
  • ベトナム
  • サウジアラビア
  • コロンビア

まとめ

火力発電は、安定した電力供給・コスト削減・出力調整が簡単などのメリットがある反面、デメリットもある発電方法です。

そのデメリットとは、CO2の排出・輸入物による価格高騰などがあります。エネルギー枯渇問題・地球温暖化の問題に対応できる再生可能エネルギーが注目される中、現在の日本および世界情勢において、どのような取り組み方をするのかが、火力発電の今後の課題といえるのではないでしょうか。

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