CO2排出量削減計画とは?策定の必要性や流れ、日本企業の取り組み事例について解説

地球温暖化による報告が増えている近年「カーボンニュートラルを目指そう」という声が高まると共に、世界各国でCO2削減計画が立案・実施されるようになりました。

CO2削減計画策定までの流れや、国内企業2社の取り組み事例を解説します。環境省が発行している参考文献の概要もあわせてご覧ください。

CO2排出量削減計画とは

2015年にフランスで開催されたCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)で合意され、2016年に採択されたパリ協定において、CO2排出量の削減目標が定められました。世界各国で計画が立案・表明され、日本では2021年4月に以下2つの計画を表明しました。

  • 2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減を目指す
  • さらに50%の高みを目指して挑戦し続ける

2021年10月に地球温暖化対策計画の改定版が閣議決定されています。改定内容は以下の通りです。

(出典:「地球温暖化対策計画の改定について」

日本だけではなく世界各国がそれぞれの計画に基づいた取り組みを実施しています。

(参考:「地球温暖化対策計画の改定について」
(参考:環境省「地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)」

CO2排出量削減計画はなぜ策定が必要?

CO2排出量の削減は計画を策定した上で実行する必要があります。計画の概要があいまいなままで実行すると、労働力・資源・資金などの浪費というリスクが生じやすいからです。無駄なアクションのない効率的な脱炭素経営を実施するためには、現状を把握した上で具体的な計画を策定し、実施しなければなりません。

環境省やCO2削減計画を紹介しているサイトなどでCO2排出量の削減計画の策定と実行の手順や流れを解説しているので、正しい情報を確認しておきましょう。

CO2排出量削減計画策定までの流れ

環境省は、CO2削減を達成するための脱炭素経営の手順を以下の4ステップに分けて解説しています。

  1. 事業に影響を与える気候関連リスク・機会の把握
  2. サプライチェーン排出量算定/排出削減目標の設定
  3. 排出削減計画の策定
  4. 削減対策実行/脱炭素が前提の事業遂行

1から3までを行った後に削減対策の実行と脱炭素前提の事業遂行を並行して行うことを推奨しています。

この4ステップを把握した上で、企業と関わる金融機関・投資家とTCFD提言に沿った情報を開示し、交渉を進めていくのが流れの概略です。

(参考:脱炭素ポータル「脱炭素経営の手順とは?」

CO2排出量削減計画の国内での取り組み事例

日本・世界各国の企業がCO2排出量を削減する取り組みを実施しています。この章では日本企業の取り組み事例を見ていきましょう。

①トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車は、気候変動への対応策として2015年から複数のチャレンジに取り組んでいます。

取り組み内容の一部を紹介します。

ライフサイクル
CO2ゼロチャレンジ
トヨタ環境チャレンジ2050 2050年にライフサイクルにおけるGHG排出量を差し引きゼロに
2030マイルストーン 2030年ライフサイクルでのGHG排出量を2019年比で30%削減
新車
CO2ゼロチャレンジ
トヨタ環境チャレンジ2050 2050年に新車の走行時の平均GHG排出量をプラスマイナスゼロに
2030マイルストーン 2030年新車の走行で生じる平均GHG排出量を2019年比で33.3%削減
工場
CO2ゼロチャレンジ
トヨタ環境チャレンジ2050 2050年工場生産過程のCO2排出量をゼロに
2035 工場生産過程でのCO2排出量を実質ゼロに

(参考:TOYOTA「気候変動サステナビリティ」

②株式会社大川印刷

大川印刷は、2016年に自社印刷事業で発生するCO2を算出し、その全量をJ-クレジットなどの活用でオフセットするCO2ゼロ印刷を開始しました。

2019年には、太陽光パネル設置で自家発電が20%に達し、残り80%をカーボンオフセット済みの風力発電の電力を青森県横浜町から購入することで再生可能エネルギー100%の印刷工場を実現しています。

CO2ゼロ印刷の仕組みは以下の通りです。

(出典:大川印刷「CO2 ZERO PRINTING」

CO2ゼロ印刷を発注する顧客にも以下のメリットがあります。

  • 発注する印刷物のCO2排出の量がゼロカウントになり、スコープ3の削減実績になる
  • 印刷物に「CO2ゼロ印刷」と表記して内外にPRできる
  • 具体的な気候変動対策としてSDGsに貢献できる

(参考:大川印刷「CO2 ZERO PRINTING」

CO2排出量削減計画策定に関する参考文献

環境省は、CO2排出量の削減計画策定への理解を深めるため、公式サイトでPDF形式の参考文献を公開しています。以下が代表的な参考文献です。

中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック

本書は、温室効果ガス削減目標を達成することを目指して作成・公開されました。2023年3月に発行されたのが2024年1月時点での最新版です。

脱炭素経営を始めようとしている中小企業へCO2削減のノウハウを、知る・測る・減らすの3ステップに分けて解説しています。

第1部では脱炭素経営のメリットと企業の事例を3社分掲載しました。第2部では脱炭素化の基本的な考え方・CO2削減計画策定までの手順・省エネ対策や再エネ調達手順を解説しました。ケーススタディを8社分の紹介と参考資料を本書の最後で紹介しています。

第1部の企業事例では企業の代表者へのインタビューを記載しており、第2部のケーススタディではモデル事業の実施内容・現状・対策の精査と計画へのとりまとめの詳細・削減計画の表などが確認できます。

(参考:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」

SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック

本書は、SBTなどを目指し、GHG排出量の削減計画策定の手順を示しています。2021年に発行され、2023年3月に改訂版が「2022年度版」として公開されました。

企業が中期・長期的視点からSBTなどに取り組むため、排出削減計画策定を成長戦略の一環として検討する手順・視点・国内外の企業の事例・参考データを紹介しています計画策定の背景に始まり、策定手順を5章に分けて解説しています。

策定手順の中では排出の現状と今後の見通しの把握の必要性などを説明しました。スコープ3排出削減の核となるサプライヤーと連携して排出を削減することに関連した解説が最新版に付記されています。また、企業の取り組み事例19社の情報も図表を交えて掲載しています。

参考文献は他にも「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド」と「インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン~企業の脱炭素投資の推進に向けて~」の2022年度版があるので、環境省でご確認ください。

(参考:環境省「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック(2022年度版)」
(参考:JCCCA「脱炭素経営の促進に関する各種ガイドが改訂されました(環境省)」

まとめ

CO2削減の計画は熟慮の末に策定し、実行することが大切です。

国内各地の自治体の多くがCO2・温室効果ガスの削減計画を公式サイトで公開しており、すでに計画の成果を報告している企業も増えています。世界各国の政府・自治体・企業の削減計画の概要をチェックして削減の意識を高めていきましょう。

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