サプライチェーンとは?企業が抱える問題と今後の課題・事業を通して温室効果ガスを削減する重要性

企業により商品・サービスが作られ、消費者のもとに届けられるまでの一連の流れである「サプライチェーン」について意識する機会は、そう多くないかもしれません。

商品が作られる個々の工程に注視する機会は多いですが、国内だけでなく世界を相手にする企業が事業を正しく、円滑に進めるためには、サプライチェーンを効率化する必要があります。

そこで今回はサプライチェーンについての基本的な解説とマネジメントの重要性、さらに温室効果ガス(GHG)削減との関連性や、サプライチェーン排出量削減を進めるために「カーボンオフセット」が重要な理由について、詳しく解説していきます。 

サプライチェーンとは

(引用:サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?導入メリット等を紹介 Business Navi~ビジネスに役立つ情報~:三井住友銀行

サプライチェーンとは、企業が行う事業の「流れ」や「全体像」のことを指します。原材料が調達され、その原材料を用いて工場で製品が作られ、作られた商品は物流にのって消費者に届けられます。

  1. 原材料(A)を調達する
  2. 調達した原材料(A)をもとに製品(B)を作る
  3. 作られた製品(B)が流通(C)される
  4. 流通(C)された商品が販売(D)される
  5. 販売(D)された商品が消費者(E)に届けられる

5つの工程がすべて連鎖して動いているさまは、まさにチェーン(連鎖)のようです。そのためチェーンのどこかに問題が生じた場合、すべての工程に遅延などの影響が出ることになります。

サプライチェーンは商品やサービスが消費者に「供給」されるまでの流れ全体を表しているため、サプライチェーンにおいて連鎖しているのは「供給網」と言い換えられます。網の目一つひとつに注目すると、複数の部署や事業者を経由していることがわかります。

サプライチェーンとバリューチェーンの違い

サプライチェーンが「工程の連鎖」であるのに対して、バリューチェーンは事業全体における「価値の連鎖」を指します。原材料の調達、商品の製造、流通と販売など、それぞれの過程において異なる価値が商品に付加されている、という考え方です。

どの過程で、どのような価値が付加されているか理解するためには、事業全体をサプライチェーンとは異なる2つの視点で捉える必要があります。その2つの視点とは「主活動」と「支援活動」です。

  • 主活動:物流・製造・出荷・販売(マーケティング)・サービス
  • 支援活動:インフラ・人事・技術開発・調達

文字通り、この2つの違いは「商品が消費者に届くまでの流れ(サプライチェーン)」に、直接的に携わっているかどうか、という点です。一見「主活動」の方がメインであり支援活動はサブのように感じるかもしれませんが、実際はどちらも重要です。

商品の設計から製造に関わる人材の管理や、製造の技術開発を担う人がいるからこそ、サプライチェーンの連鎖は成立します。それぞれの役割が異なる「価値(バリュー)」を生み出すことで、ようやく利益が最大化できるのです。

サプライチェーンの流れ

冒頭に解説したサプライチェーンの流れについて、連鎖を作る1つひとつの要素をもう少し詳しく解説していきます。

購買物流

企業が自社の計画した製品を作るためには、材料メーカーから原材料を調達する必要があります。また調達した原材料は適切な場所に配分・貯蔵される必要があります。この一連の活動のことを「購買物流」といいます。

製造

企業は購買物流により調達した原材料を用いて、工場で製品の製造を行います。製造は決められた設計・手順どおりに行います。ただ作るだけでなく、製品として基準に達しているかどうかのテストや、出荷するためのパッケージングも行います。

出荷物流

工場で製造された商品は物流に乗って店頭に並び、やがて消費者がその商品を購入します。この一連の流れを「出荷物流」といい、サプライチェーンにおける「物流・販売・購買」に該当します。

サプライチェーンの抱える課題

サプライチェーンには、次に挙げるような明確な課題があります。

  • 一部の工程における障害は全体に影響する
  • 特定の国からの輸入依存は調達リスクにつながる
  • 企業はサプライチェーン全体での脱炭素化を求められる

サプライチェーンはそれぞれの工程が連鎖する「鎖」であるため、途中の工程に問題や障害が発生すると、その後の工程に伝播します。

分かりやすい事例が「半導体不足」です。主に2021年から2022年にかけて、感染症による需要変動や工場火災等により世界的に半導体不足が深刻化しました。それにより多くの製造業で製造の大幅な遅延や、物流の滞りなどの問題が発生しています。

また、原材料等の「調達先」を海外の一部の国に依存することにもリスクがあります。問題なく調達できている期間は良いですが、予測できない問題が発生して供給元からの供給がストップすると、企業のサプライチェーンが一気に途絶してしまいます。

そのような難しい状況の中でも脱炭素化の流れは止まらないため、企業は温室効果ガスの排出削減を求められます。それも「製造工程だけ」「物流工程だけ」ではなく、サプライチェーン全体での削減が要求されるため、カーボンオフセット等の仕組みをうまく活用する必要があります。

サプライチェーン・マネジメント(SMC)とは

人間が物事を進めている以上、必ずどこかでひずみが発生します。それにより連鎖がストップしてしまう事態を避けるために、常に誰かがチェーンの状態を管理・監視し、最適化する必要があります。それを「サプライチェーン・マネジメント(SMG)」といいます。

サプライチェーン・マネジメントによる事業の最適化は、調達から購買に至るまでのすべての工程において必須です。具体的には、次のようなことを行います。

  • 徹底した在庫管理を行い、過剰生産や原材料ロスを防ぐ
  • 商品に問題が生じないように、徹底した品質・生産管理を行う
  • 物流がスムーズに進むように、出荷状況や販売先を正しく管理する
  • 売上データを常に監視・予測し、需要の見誤りによる過剰生産を避ける

このような取り組みは、自社だけではできません。それぞれの工程で異なる部門・取引先と円滑に情報共有し、常に連携できる体制を構築する必要があります。

SMCにより完全に最適化されたサプライチェーンには少しの緩みもなく、問題が発生して連鎖が止まるリスクも小さくなります。

サプライチェーンを通じて生じた温室効果ガス(GHG)の捉え方

サプライチェーンマネジメントによる最適化は、昨今の企業が要求される、事業全体での温室効果ガス(GHG)削減にも関係します。

国際イニシアチブの「CDP」や「RE100」に参画する企業は、次から解説する「GHGプロトコル」準拠の3カテゴリでGHG排出量を削減する必要があります。

分類 内容
スコープ1 自社が直接排出する
温室効果ガス
スコープ2 自社が間接排出する
温室効果ガス
スコープ3 原材料仕入れや販売後に
排出される温室効果ガス

スコープ1(Scope1)

GHGプロトコルにおける「Scope1」カテゴリは、自社が事業活動において「直接的に排出」した温室効果ガスを指します。

たとえば工場で製品を作る際に燃料を燃焼することで発生する温室効果ガスが該当し、企業はその排出量を正確に算出・報告する必要があります。

スコープ2(Scope2)

GHGプロトコルにおける「Scope2」カテゴリは、自社が他社からエネルギー(電気・熱・蒸気)を使用することで「間接的に排出」される温室効果ガスを指します。

これには電力会社から供給された電気で工業製品を動かすときに発生する温室効果ガスが該当します。

スコープ3(Scope3)

GHGプロトコルにおける「Scope3」カテゴリは、「Scope1」および「Scope2」に該当しない活動により「間接的に排出」される温室効果ガスを指します。

たとえば原材料の調達や輸送、また従業員が通勤で車を利用した際に排出される温室効果ガスが該当します。

企業はサプライチェーン排出量削減を求められる

日本および世界の企業は、サプライチェーン全体での排出量削減が求められています。

  • サプライチェーン排出量 = Scope1排出量 + Scope2排出量 + Scope3排出量

一部の工程だけでなくサプライチェーン排出量削減を求められているのは、社会全体での脱炭素化が進む現代において、企業が温室効果ガス(GHG)の排出主体だからです。

国際イニシアチブによる違い

環境意識が強い企業は、続々と「SBT」や「RE100」といった国際イニシアチブに参画し、国際基準でのGHG削減を進めています。参画する企業は、サプライチェーン排出量削減のために具体的な目標・指針を立てて実行し、定期的に削減量を報告する必要があります。

参画する国際イニシアチブの種類によって、排出量の報告対象となるカテゴリが次のように異なります。

サプライチェーン SBT RE100
Scope1
Scope2
Scope3

パリ協定の気温上昇抑制水準が基になる「SBT」では、すべてのカテゴリが報告対象となります。しかし企業の自然エネルギー導入推進が中心の「RE100」では「Scope3」の報告は求められません。

排出量の報告に伴い企業が各カテゴリの排出量を正確に算出する際には、次のいずれかの方法を使います。

  • 自社で活動量を収集し、該当事業の「排出源単位」に乗算する
  • 取引先から提供を受けた排出量を用いる

このうち、もっとも正確に排出量を算出できるのは前者の「自社算定」です。なぜなら前者の方法では、サプライチェーン全体の排出量を算出するのが困難だからです。

活動量とは事業活動による使用電気量や輸送量、廃棄物処理量を合算したものであり、排出源単位とは環境省が公表している「排出係数」のことです。

サプライチェーン排出量の削減方法

最後は、企業がサプライチェーン全体の排出量削減目標を達成するためにできる、2つの方法について解説していきます。

再生可能エネルギーの導入・使用

企業は太陽光発電等の再生可能エネルギーを導入することで、化石由来エネルギーの消費量を減らし、GHG排出量を削減できます。

契約している電力会社のGHG排出量は、スコープ2の対象です。太陽光パネルを自社ビルや工場の屋根に設置し、二酸化炭素排出量ゼロの電気を自家消費することで、スコープ2のGHG排出量を削減できます。

ここでいう「導入」とは、工場の屋根などに太陽光パネルを設置し発電環境を整えることなどを指しますが、発電施設の建設には多額の初期投資が必要となります。そこでおすすめできるのが、次に解説する「カーボン・オフセット」という方法です。

カーボンオフセット

カーボン・オフセットとは、自社の取り組みだけでは達成できない削減目標を補う(オフセットする)ために、「環境価値」の付加されたカーボンクレジットを購入することです。

企業が購入できるカーボンクレジットには次の種類があります。

それぞれの制度の違いについては、次の表をご覧ください。

比較項目 J-クレジット 非化石証書 グリーン電力証書
主体 政府 低炭素投資促進機構 日本品質保証機構
対象 GHGの削減量・吸収量 再生可能エネルギー・原子力由来の電気 再生可能エネルギー由来の電気
取引方法 仲介事業者から購入・相対取引 非化石価値取引市場で入札 証書発行事業者から直接購入
転売 不可 不可
準拠イニシアチブ RE100・SBT RE100・SBT RE100・SBT

この制度をすでに多くの企業が活用し、化石エネルギーから再生エネルギーへの転換を進めています。もちろん自社でGHG削減のために包括的な取り組みを行うことが前提となりますが、脱炭素化推進企業であることを投資家や消費者にアピールできます。

環境価値でのオフセットなら調達代行サービス『OFFSEL(オフセル)』に相談

オフセル

環境価値が付されたクレジット・証書でのオフセットを検討している方は、エレビスタ株式会社の「OFFSEL(オフセル)」というサービスがおすすめできます。

OFFSEL(オフセル)とは、本来他の事業者や取引市場から購入する必要があるカーボンクレジットの調達を代行してくれるサービスです。利用することで、カーボンクレジット調達に伴うコストや煩雑な事務処理をカットできます。

OFFSEL(オフセル)は次の証書・クレジットの調達に対応しています。

  • J-クレジット:1kWhから
  • トラッキング付FIT非化石証書:1t-CO2から

それぞれ右に記載の少量単位購入に対応しており、価格も他社と比較して安いです。購入手数料や年間契約金も必要ありません。

OFFSEL(オフセル)で調達したカーボンクレジットは「SBT」や「RE100」といった国際イニシアチブに準拠しているため、GHG削減量にカウントして報告できます。

カーボンオフセットを検討している事業者は、一度無料相談を申し込んでみてはいかがでしょうか。

まとめ

サプライチェーンにおけるリスクを減らし「連鎖」をうまく機能させるためには、サプライチェーンマネジメント(SMG)による最適化が欠かせません。これは脱炭素化のためのGHG削減も同様であり、企業全体での包括的な取り組みは、サプライチェーン排出量削減に直結します。

今後サプライチェーン排出量削減を推進する事業者は、ぜひカーボンクレジットを活用しましょう。それは単なる利益の増加だけでなく、投資家や消費者から高い評価を受け、社会的な地位を向上させることにもつながるからです。

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