I-REC (International Renewable Energy Certificate)とは、再生可能エネルギーにより発電された電気の再エネ価値を証書化したものです。
非営利団体I-REC Standardにより認証・管理されており、アジア圏等の国を中心に50か国以上に準拠されています。
地球環境に対する危機感や関心が全世界で高まっている中、I-RECのような地球環境に対する貢献度を客観的に示す手段が注目されています。
I-RECとは何かという基本的なことから、I-RECとその他の環境価値の違い、I-RECを購入するメリット、I-RECの購入方法・発行条件などを解説します。
I-RECとは
名称 | I-REC(International Renewable Energy Certificate) |
管理組織 | 特定非営利法人 “The International REC Standard Foundation” |
本社所在地 | オランダ |
準拠国 | アジア圏等において50カ国以上 タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、中国 他 |
I-REC(International Renewable Energy Certificate)は、再生可能エネルギー証明書の略です。
これは、再生可能エネルギーの発電が行われたことを証明する国際的な属性証書で、I-RECは再生可能エネルギーの発電を確認し、その起源を追跡するために使用されます。
再生可能エネルギー証明書は、電力の属性が再生可能エネルギー源(風力、太陽光、水力など)であることを確認するためのものであり、企業や組織が再生可能エネルギーを使用していることを示すのに役立ちます。
I-RECは環境に対する企業や個人の取り組みを透明にし、再生可能エネルギーの導入を促進するための手段として利用されています。
I-RECは国際的な属性証書であり、異なる国々で発生した再生可能エネルギーの発電をグローバルに認識し、交換することが可能です。
これにより、国境を越えて再生可能エネルギーの使用とその証明が行えるようになります。
経済産業省が提出している『平成30年度 国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費(国内における環境価値取引市場の動向調査) 報告書』では、次のように定義されています。
非営利組織である The I-REC Standard が提供する「ルールブック群及びそれに基づく電子的なトラッキングシステム」により認証・発行される再エネ電力証書」
引用:『平成30年度 国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費(国内における環境価値取引市場の動向調査) 報告書』
そもそも環境価値とは?
環境価値は、自然環境や生態系が持つ重要性や利益のことを指します。
これは、生態系が提供する生態学的なサービスや、自然環境の美的・文化的な魅力、そして人間の生活や経済に対する影響など、さまざまな側面を含みます。
例えば、再エネはCO2を排出しないため、脱炭素・環境保全への価値があることから、環境価値があるとされているのです。
他にも、自然エネルギーによりCO2の排出せずに作られた電力や省エネルギーはCO2抑制という付加価値を持っており、環境価値があるとされています。
企業も例外ではなく、地球温暖化をはじめとする環境問題への社会的関心が高まっています。
地球環境に対して企業がどのような取り組みを実施しているかどうかは、企業のイメージに直結するほど重要です。
企業が環境価値に注目して実際に取り組んでいることを客観的にアピールできれば、注目を集めることになるでしょう。
再エネ属性証書が重視されている背景
再エネ属性証書は、再生可能エネルギー源から発電された電力の環境的な価値を評価し、電力の使用や発電事業者が環境への配慮を示すための仕組みとして導入されています。
2023年1月から日本でも再エネ属性証書「I-REC」が発行可能となり、企業や再エネ発電者の一部は「I-RECでなければならない」とされています。
日本でも再エネの利用には大きな課題があり、問題を解決するための国際的なエネルギー属性証明の仕組みとして、再エネ属性証書「I-REC」が重要視されているのです。
I-REC対象国
主なI-REC対象国は、以下の通りです。
- 日本
- アルゼンチン
- ブラジル
- チリ
- 中国
- コロンビア
- コスタリカ
- コンゴ
- ドミニカ
- エジプト
- エルサルバドル
- ガーナ
- グアテマラ
- ホンデュラス
- インド
- インドネシア
- イスラエル
- ヨルダン
- ナイジェリア
- マレーシア
- メキシコ
- モロッコ
- オマーン
- パナマ
- ペルー
- フィリピン
- ロシア
- サウジアラビア
- スリランカ
- シンガポール
- 南アフリカ
- 南スーダン
- 台湾
- タイ
- トルコ
- UAE
- ウガンダ
- ベトナム
アジア圏等の国を中心に50か国以上に準拠されています。
日本では2023年1月よりI-RECの発行申請に関する受付を開始しており、太陽光発電事業を展開したい企業や再エネ電力の調達を検討する企業にとっては追い風となるでしょう。
I-RECとその他の環境価値の違い
ここからは、I-RECとその他の環境価値の違いについて解説していきます。
それぞれの特徴の違いを表にまとめましたので、参考にしてください。
特徴 | 活用できる国際イニシアチブ | |
非化石証書 | CO2を排出しない電気の環境価値の証書 | CDP SBT RE100 |
Jークレジット | 再エネ活用・森林管理等によるCO2削減・吸収量を国が認証 | |
グリーン 電力証書 |
自然エネルギー由来の電気の環境付加価値を証書にしたもの | |
GO | エネルギーの属性を証明する証書 | |
REC | 国際的な再エネ電力証明 |
※RE100ではトラッキング付非化石証書・電力由来J-クレジット・グリーン電力証書のみ活用可能(属性が確認できない証書や熱証書は対象外)
非化石証書
非化石証書は、発電時にCO2を排出しない環境価値だけを分離して証書化したものです。
非化石証書には大きく3つの種類があります。
- FIT非化石証書
- 非FIT非化石証書(再エネ指定)
- 非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
非化石証書を利用すれば、脱炭素を推進する企業にとって、「環境問題に配慮していることがPRになる」「ESG経営をする上で有利になる」などのメリットがあります。
非化石証書を活用すれば電力契約を変更しなくても再生可能エネルギー由来の環境価値を得られます。
事業の性質から再生可能エネルギーの導入が難しい工場や設備においても、実質的に再生可能エネルギーを取り入れられるということです。
J-クレジット
J-クレジットとは、CO2や温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。
J-クレジットは、経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成やカーボン・オフセットなどのさまざまな用途に活用できます。
省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用により、ランニングコストの低減やクリーンエネルギーの導入を図れます。
さらに、設備投資の一部をクレジットの売却益によって補うことで、投資費用の回収や更なる省エネ投資に活用できるのがメリットです。
グリーン電力証書
グリーン電力証書は、自然エネルギーにより発電された電気の環境付加価値を、証書発行事業者が第三者認証機関の認証を受けて「グリーン電力証書」という形で取引する仕組みです。
証書を購入する企業や自治体は、グリーン電力証書を取得することにより、発電設備を持たなくても証書に記載された電力量相当分の自然エネルギーの普及に貢献し、証書を購入しグリーン電力を利用したとみなされます。
契約と同時にグリーン電力の利用を示すためのマークが提供され、企業広告や建物、製品・サービスのPR、イベントのPR等にも利用できます。
GO
GOは、エネルギー(電気・ガス・熱)の属性(いつ・どこで・どんな方法で生成されたか)を証明する証書です。
GO制度により、属性情報を物理的なエネルギーと切り離して取引するため、環境価値等の二重主張を防止できます。
EUに加盟している国では、GOシステムの構築が義務付けられる「欧州エネルギー証明システム(EECS)」が運用されています。
このEECSにより、共通の国際取引が可能になっているのです。
REC
I-RECは、国際的な再生可能エネルギー電力証明です。
二酸化炭素(CO2)排出量の少ない再生可能エネルギーによる発電で生まれた環境付加価値を、取引可能な属性証書の形にして用いる制度です。
世界約50ヵ国で発行され、企業等が使用する電気の産地・電源種別などの電源属性を証明できます。
I-RECを購入するメリット
I-RECを購入するメリットは、以下の3点です。
- 国際イニシアティブの報告に利用できる
- カーボンニュートラルに貢献できる
- 非FIT電源が使える
国際イニシアティブの報告に利用できる
I-RECを購入すると、国際インシニアティブの報告に利用できます。
国際インシニアティブとは、企業が取り組んだ気候変動対策に対して、情報開示・評価の国際的基準です。
取引口座にあった再エネ属性証書を償却口座に移転し、移転された証明書は取引口座に戻せないので、証書の唯一性が保証されることになります。
カーボンニュートラルに貢献できる
I-RECを購入すると、カーボンニュートラルに貢献できるというメリットもあります。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることです。
I-RECを発行することで供給先に高い信頼性の再エネによる電力を届けられます。
このような取り組みは、脱炭素社会の実現が求められている世界において、高く評価されます。
非FIT電源が使える
I-RECを購入すると、非FIT電源が使えます。
非FIT電源とは、再生可能エネルギーの発電のうち、FIT制度(固定価格買取制度)の適用を受けていない発電設備のことです。
再エネ電源を導入せずに脱炭素経験を行うには、非FIT型再エネ電力から発行されているI-RECか他の再エネ電力証書を購入しなければいけません。
I-RECを購入すると非FIT電源が使えるので、選択肢が増えるということです。
I-RECの購入方法・発行条件
ここからは、I-RECの購入方法・発行条件について解説していきます。
- 自社で発行する
- 他社が発行したものを購入する
自社で発行する
- 太陽光パネルを設置し発電
- I-RECの発行手続きを行う
1つ目は、自社で発行する方法です。
例えば、太陽光発電を導入する場合、自社が管理する土地や事業所の屋根などに太陽光パネルを設置する必要があります。
はじめに登録者としての登録を済ませて、証書発行のための申請を行います。
自社で手続きをするのが難しい場合、仲介業者に任せることもできます。
他社が発行したものを購入する
- 仲介業者に依頼する
- 発行したものを購入する
2つ目は、他社が発行したものを購入する方法です。
I-RECを他社から購入する場合、I-RECのような証書の取引を仲介してくれる業者に依頼して購入します。
間接的にはなりますが、環境に負荷のかけずに脱炭素経営に取り組んでいることをPRできるのがメリットです。
ただし、直接自社で発行する方法とは異なるので、あくまでもサポートとしての役割と捉えることが大事です。
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まとめ
I-REC (International Renewable Energy Certificate)は、海外における再エネの属性証書の一つです。
日本でもI-RECの必要性が唱えられており、環境への貢献はもちろん、企業としてもイメージアップを図ることもできます。
環境問題に対して企業や自治体が責任を持つことは必須なので、少しずつ環境行動に取り組んでいきましょう。
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