COP21とは?パリ協定との関係や具体的な内容をわかりやすく解説

  • CO2削減
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「COP21」とは、第21回国連気候変動枠組条約締約国会議のことです。

気温上昇や干ばつ、海面水位の上昇など、地球温暖化による気候変動は世界でさまざまな悪影響を引き起こしており、その規模は年々拡大しています。

その中で開催された「COP21」は、気候変動の抑制に対して世界の国々が同じ方向を向くための転換点となり、日本もそれを境として本格的な「脱炭素化」への道を歩み始めることになります。

そこで今回は、その「COP21」では具体的に何が決められ、何が求められるようになったのか、詳しく解説していきます。世界5位のCO2排出国である日本の企業は、日本としての削減目標を達成するために何ができるのか、という点にも注目しましょう。

COP21とは?

まずは、世界が本格的に環境問題に対して向き合う転換点となった「COP21」の概要について解説します。

COPとは、1995年にドイツのベルリンで第1回が開催された「国連気候変動枠組条約締約国会議」のことです。基本的には開催された回数を付けて「COP10」「COP21」などのように呼称されます。

特に日本人にとって一番馴染みが深いのは、国際社会として環境問題に取り組むための包括的な枠組みである「京都議定書」が制定された、第3回会議(COP3)です。その名の通りCOP3は日本の京都で開催され、参加した160カ国のなかで日本が議長という立場を務めました。

パリ協定が採択されたのがCOP21

京都議定書が採択された「COP3」に続く大きな枠組みが制定されたのが、2015年にフランスのパリで開催された「COP21」です。

ここで採択されたのが、京都議定書の内容をブラッシュアップした「パリ協定」です。パリ協定では、気候変動を抑制するための世界的な脱炭素化に向けて、温室効果ガス削減の長期目標が具体化されました。

COP21の参加国

COPに参加する国は、次のようにグループ分けされています。

  1. 附属書Ⅰ国(先進国・市場経済移行国):UG(日本・アメリカ等)・EUなど
  2. 非附属書締約国(発展途上国):OPEC・EIG・AOSIS・BASICなど

附属書Ⅰ国には43カ国、非附属書締約国には153カ国がそれぞれ属しています。上記の2つのグループは、さらに次のように細分化されます。

  • UG(アンブレラグループ):日本・アメリカ・カナダ・オーストラリア等
  • EU諸国:ドイツ・フランス・イタリア・オランダ・フィンランド・ギリシャ等
  • OPEC:アラブ首長国連邦・アルジェリア・ナイジェリア・アンゴラ等
  • EIG:韓国・メキシコ・ジョージア・リヒテンシュタイン等
  • AOSIS:シンガポール・ジャマイカ・パプアニューギニア・サモア等
  • BASIC:中国・インド・ブラジル・南アフリカ

日本はアメリカやカナダ、オーストラリア等の国とともに「UG(アンブレラグループ)」に所属しており、主に環境と経済成長の両立を軸とした目標を立てる傾向にあります。

このようなグループ分けはあるものの、基本的には先進国・途上国の区別なくすべての国が「パリ協定」に締結国として参加することになりました

COP21で決定されたパリ協定の内容

COP21では、各国に温室効果ガスの削減を促す「パリ協定」が採択され、削減に関する明確な長期目標とルールが策定されました。その目標とは、世界の気温上昇を「産業革命前と比較して2度(または1.5度)以内に抑える」というものです。

ただしこれは共通の長期目標であるため、参加国はそれぞれ独自のNDC(削減目標)を決めて提出し、目標を達成するための具体的施策を取りまとめる必要がありました。ただし目標の未達による罰則等はありません。

それにくわえて、次の点も決められました。

  • 2年ごとに進捗状況を報告する
  • 5年ごとに目標を見直し提出する
  • 先進国は途上国に対して援助を行う
  • 目標達成のために市場メカニズム(クレジット・証書)を活用する

締結国には2年ごとの進捗報告と、5年ごとの目標見直しがルール化されています。これは技術の発達に応じて、より積極的な目標設定を促すためのものです。

また「附属書Ⅰ国(先進国)」に属する国は、途上国に対して資金・技術面での援助を行う必要があります。これにより排出量が多い一部の国だけではなく、世界規模での包括的な取り組みが可能となります。

さらに、取引可能な証書・クレジットによる市場メカニズムの活用も促されています。日本では3種類の制度が利用できますが、この点は後ほど詳しく解説します。

COP21を踏まえて日本が掲げた目標

COP21を踏まえて日本が掲げた目標は、2030年度に「26.0%(2013年度比)」水準まで温室効果ガスの排出量を削減する、というものです。

目標水準を量に換算すると、約「10.4億トン」です。2021年のデータでは排出量が「11.2億トン」であると公表されており、2030年までなら十分達成可能なようにも見えますが、実は2020年度比で「2.0%(2,150万トン)」ほど排出量が増加しているため、経済活動と両立しながら削減を継続することがどれだけ難しいことか実感できるでしょう。

日本以外の参加国の目標

COP21で日本以外の参加国が掲げた目標を紹介します。

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国・地域 2030年目標
アルゼンチン 排出上限を年間3.59億tとする
オーストラリア 排出量43%削減(2005年比)
ブラジル 排出量50%削減(2005年比)
カナダ 排出量40 ~ 45%削減(2005年比)
中国 ①CO2排出量のピークを2030年より前にする
②GDP当たりCO2排出量を65%以上削減(2005年比)
フランス・ドイツ
イタリア・EU
排出量55%削減(1990年比)
インド GDP当たり排出量45%削減(2005年比)
インドネシア 排出量31.89%削減(BAU比)(無条件)
排出量43.2%削減(BAU比)(条件付)
韓国 排出量40%削減(2018年比)
メキシコ 排出量22%削減(BAU比)(無条件)
排出量36%削減(BAU比)(条件付)
ロシア 1990年排出量の70%(30%削減)
サウジアラビア 2.78億t削減(2019年比)
南アフリカ 2026年~2030年の排出量を3.5~4.2億tに
トルコ 排出量最大21%削減(BAU比)
英国 排出量68%以上削減(1990年比)
米国 排出量50 ~ 52%削減(2005年比)
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脱炭素社会を実現するために企業ができること

次は、企業として脱炭素社会実現のためにできる3つのことについて、それぞれ解説していきます。

再生可能エネルギーを導入する

企業は温室効果ガス排出を削減するために、主に次の方法で再生可能エネルギー由来の電力を導入できます。

  • 難易度低:契約中の電力プランを「再エネ電気プラン」に変更する
  • 難易度中:PPAモデルを導入する
  • 難易度高:自社で再生可能エネルギー発電設備を導入する

契約中の電力プランを「再エネ電気プラン」に変更する

企業にとってもっとも簡単な再生エネルギーの導入方法は、電力会社と契約中のプランを「再エネ電気プラン」に変更することです。

再エネ電気プランとは、太陽光発電・風力発電・水力発電等の再生可能エネルギーが電源となる電力を供給するプランであり、電気使用時のCO2排出を実質ゼロにすることが可能です。

この方法のメリットは、プランを変更するだけ、という導入の簡易さです。ただし電気代は、自社で電力を賄う場合のランニングコストよりも割高になります。

PPAモデルを導入する

次点で導入しやすい方法は「PPAモデル」と呼ばれる、自社敷地に再生可能エネルギー発電施設を設置してもらう方法です。

  • 自社(需要家):電力会社に敷地・施設を貸し、生産された電気を購入する
  • 電力会社(供給者):太陽光発電設備を無償で設置し、電気を提供する

PPAモデルのメリットは、初期費用が不要なためコストを最小限に抑えられる点です。太陽光発電設備の設置だけでなく運用・保守も任せられるため、人件費やランニングコストも削減できます。

ただしPPAモデルはあらかじめ決められた契約期間があるため、将来性・継続性に関しては自社だけで設備を導入するよりも劣ります。また電気事業者の判断によりPPAモデルが導入不可なケースがあったり、電力の売却はできない点には注意が必要です。

自社で再生可能エネルギー発電施設を建設する

多額の初期費用が発生しても、再生可能エネルギー由来の電力供給を安定化させたい企業は、「自家消費型」の太陽光発電設備の導入を検討できます。

ここまで解説した2つの方法とは異なり、この方法は自社で敷地内に太陽光発電設備を導入し、そこで作った電気は基本的にすべて自社で消費します。この方法には、次のようなメリットがあります。

  • 電気代というランニングコストを削減できる
  • 災害等のリスクを低減できる

自家消費型の導入により、他社に電気代を支払って電気を買う必要がなくなる(または購入量が大幅に減る)ため、ランニングコストを大幅に削減できます。

また地震等の災害により電力会社からの供給がストップしても、太陽光発電により電力を自社で賄えます。これにより企業の持続性が向上し、事業の停止やサプライチェーンの途絶により多額の損失を被るリスクを減らせます。

省エネ設備の導入

企業は使う電気を「変える」だけでなく、省エネ設備を導入して電気使用量を「減らす」ことでも、温室効果ガスの低減に貢献できます。具体的には、次のような方法が挙げられます。

  • 照明設備を全てLEDに変える
  • 給湯循環ポンプの運用方法を改善する
  • 大型コンプレッサの吐出圧力を低減する

この取り組みにより、企業は年間で数十万円規模の省エネが可能となります。そのために中小企業は資源エネルギー庁の制度を利用して、自社で導入できる省エネ設備についてのアドバイスを受けることができます。

診断費用は発生しますが、自社における電気の使い方を短時間で見直せるだけでなく、省エネに有効な設備・機器の使い方やすぐにコストを削減する方法、さらに設備ごとのエネルギー使用量を基にした省エネの立案支援を受けることができます。

当制度の申込期限は2024年1月までなので、省エネ設備の導入を検討している中小事業者は利用を検討してみてはいかがでしょうか。

カーボンオフセット

企業は自社の取り組みで削減しきれない排出量を、環境価値を持つクレジット・証書を購入する「カーボンオフセット」という仕組みにより補填できます

たとえば国内で代表的な「J-クレジット」は、国際イニシアチブの「SBT」や「RE100」に準拠している制度です。別の事業者が削減・吸収したCO2の量に応じて発行される「取引可能なクレジット」を購入すると、その分を自社が削減した温室効果ガスの量とみなすことができます。

他にも「非化石証書」や「グリーン電力証書」などの制度がありますが、これらの制度を利用してカーボンオフセットすることには、次のようなメリットがあります。

  • 創出者・購入者の双方にメリットがある
  • 資金が循環し、より多くの排出削減・吸収量増加につながる
  • 要求される「追加性要件」により削減活動が形骸化するのを避けられる

自社努力でCO2の削減量を増やした企業は、目標を超えた余剰分を「環境価値」に換えて売却することで利益を得られますし、購入する側も資金を支出すれば自社の削減量を増やすことができます。

またクレジットの取引により資金が循環すると、それが新しい省エネ事業を生み、より多くのCO2削減が達成可能になります。実際のところ「J-クレジット」制度はクレジットの自由取引により、社会全体で温暖化対策の資金を最適に配分させるという目的があります。

カーボンオフセットで必要な追加性・永続性

「J-クレジット」等を利用したカーボンオフセットについて「削減量がお金で買えるなら、誰も削減努力をしなくなってしまう」と危惧する方もいるかもしれません。

確かに、クレジットが簡単に発行されてしまうなら実質的な削減が伴わない活動でも良くなり、最終的には流通するクレジットを企業間で交換しあうだけとなってしまいます。その結果制度は形骸化し、むしろ温暖化対策の足かせになるでしょう。

しかし実際は、そのような事態に陥らないようなルールが策定されてます。それが、排出量・吸収量という数字にプラスして要求される、「追加性」および「永続性」という要素です。

  • 追加性:追加的な活動の結果、達成された削減量・吸収量のみクレジット化できる
  • 永続性:今後も永続的に吸収されることが保証された場合のみクレジット化できる

J-クレジット制度でCO2の削減量をクレジット化するためには、その活動があくまで温暖化対策として「追加的に」取り組まれたものであり、本来の事業には不必要な活動でなければなりません。

追加性が認められる要件としては「初期投資回収に3年以上を要する」ことや、設備投資がない場合は「ランニングコストが継続的に上昇する」ことなどが挙げられます。

植樹などの森林管理プロジェクトを行う場合は、その活動により吸収されるCO2が今後も「永続的に」吸収されることを保証する必要があります。たとえば植樹された木は、吸収した炭素を固定し続けるために伐採されてはなりません。

このような厳しい要件を満たすことで発行されるJ-クレジットを購入するなら、確かに企業はカーボンオフセットによって環境保全に貢献し、パリ協定の目標を達成するため積極的に「市場メカニズムを活用した」と主張できるでしょう。

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企業だけでなく自治体や医療機関、教育機関なども利用できますし、COP21で制定されたパリ協定が基盤となる国際プロトコル「SBT」に準拠しているため、参画企業は調達したクレジット・証書を自社の削減量として報告できます

電力の切り替えや再生エネルギー発電設備の導入が難しくても、脱炭素社会の実現に貢献したいと考える事業者は、ぜひ一度「OFFSEL(オフセル)」の無料相談を利用してみることをおすすめします。

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まとめ

2015年の「COP21」で制定されたパリ協定は、世界全体で社会の脱炭素化に向けて取り組む必要性が改めて示された、歴史上の転換点だといえます。

当然ながら日本も、世界で5番目にCO2排出量が多い国であるため、結果を伴う行動が求められています。ぜひ「今からすぐにできる」ことを実行に移し、環境問題に積極的に取り組む事業者であることを表明していきましょう。

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    編集者

    maeda

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