グリーン電力証書とは?価格やメリット・デメリット、非化石証書との違い・購入方法を解説

  • CO2削減
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企業に対し、気候変動や脱炭素への強い意識が求められる中、太陽光発電や風力発電等により作られた電気を「環境価値」に換えて取引できる「グリーン電力証書」が注目を集めています。

CO2の排出主体である企業が、グリーン電力証書を発行したり購入することで環境への配慮が認められ、企業自体の価値も高まるメリットがある一方、

認知度が低いことや市場の規模が小さいなど、デメリットも存在します。

グリーン電力証書の仕組みや、非化石証書・J-クレジットとの違い、価格や購入方法等について理解していきましょう。

グリーン電力証書とは

グリーン電力とは、下記のような再生エネルギーを使った発電方法により作られる電気のことで、太陽光発電や風力発電がそれにあたります。

その電力を環境価値にし、販売可能にしたものがグリーン電力証書です。

たとえば発電時に化石燃料を用いる火力発電は大量の電気を生み出しますが、CO2排出量が多いため環境負荷が高い、という弱点があります。

それに対して太陽光発電などは、化石燃料を用いる発電方法よりもCO2の排出量を大幅に削減できるため、脱炭素社会の実現に不可欠なのです。

グリーン電力証書の仕組み

グリーンエネルギーは発電時のCO2排出量が少なく環境負荷も低いため、それ自体が「環境価値」という独自の価値を持ちます。そしてその「環境価値」は「グリーン電力証書」という、他社と売買取引できる証書に換えることができます。

  1. 太陽光発電等により電気(グリーン電力)が作り出される
  2. 電気(グリーン電力)には「環境価値」という付加価値がある
  3. 「環境価値」は「グリーン電力証書」に替えられる
  4. 「グリーン電力証」は他社に売却してお金に替えられる

ここで重要なのは、「電気(グリーン電力)」と「グリーン電力証書」は同等でありながら、それぞれ切り離されている点です。売買できるのは電気ではなく、あくまで証書の方です。

グリーン電力証書を購入した会社は、購入した分を「グリーン電力を使用した」とみなすことができます。この「みなす」ことへのメリットについては、後ほど詳しく解説します。

グリーン電力証書と非化石証書・J-クレジットの違い

グリーン電力証書と似ており混同されやすい仕組みとして「非化石証書」や「J-クレジット」があります。それぞれの違いは次のとおりです。

非化石証書」とは、化石燃料を使用しない発電で作られた電気に対して発行される証書のことであり、他の企業に売却できる点はグリーン電力証書と共通しています。ただし原子力発電で作られた電気も対象になるという、大きな違いがあります。

価値の取引が可能という点では「J-クレジット」も似た仕組みですが、こちらは電気ではなくGHG(温室効果ガス)の削減量・吸収量に応じてクレジットが発行される仕組みなので、前者2つとは大きく異なる制度といえます。

現在の日本では非化石証書を購入する企業が主流となっています。

グリーン電力証書の価格推移

グリーン電力証書の価格は、証書発行事業者によって異なります。自然エネルギー財団の調査によると、大口の購入で2~4円/kWh程度が標準的とのことです。(参考:電力調達ガイドブック(2024年版)

例えば、公益財団法人東京都環境公社のグリーン電力証書の価格推移は以下の通りです。

年度 販売量 販売価格(外税) 販売単位(最小)
2016年度 107,720,000kWh 7円/kWh 1,000kWh
2019年度 136,792,680kWh 7円/kWh 1,000kWh
2020年度 136,792,680kWh 7円/kWh 1,000kWh

(出典:エネルギ―情報センター 新電力ネット「グリーン電力証書の価格推移」)

また、松山市の「まつやまグリーン電力証書事業」が発行しているグリーン電力証書の価格は以下の通りです

100kWh以上10,000kWh以下 15円/kWh
10,100kWh以上100,000kWh以下 10円/kWh
100,100kWh以上 8円/kWh
(平成27年3月16日から適用)

(出典:松山市 グリーン電力証書を販売しています

基本的に、価格は事業者が決めるため、直接問い合わせる必要があります。

グリーン電力証書を購入するメリット

次はグリーン電力証書を購入する3つのメリットについて、それぞれ解説していきます。

CO2削減に貢献できる

グリーン電力証書を購入することにより、CO2の削減に貢献できます。なぜなら購入した企業や自治体は証書に記載されている「発電量」分を、自社が削減したCO2の量としてカウントし、報告できるからです。

中には「証書を購入しただけで削減したわけではない」という方もいますが、証書はあくまで削減目標を定めている事業者が「目標を達成できない場合」に購入するものであり、実際は企業努力によって多くのCO2排出量を削減しています。

RE100に報告可能

グリーン電力証書の購入が企業にとって実質的なCO2削減になるという仕組みは、単に誰かが「そういうことにしている」わけではありません。実際に「CDP」や「RE100」といった国際基準に準拠している制度であり、CO2の削減量として報告できます。

環境省も参画している「RE100」は、事業における電力消費割合の100%を「再生可能エネルギー」が占めることを目標とするものです。日本では2023年2月時点で77の企業が参画しており、今後も増加していくものとみられます。

環境問題に取り組んでいる企業としてアピールできる

グリーン電力証書を購入する企業は、環境問題解決や脱炭素に積極的に取り組んでいることを対外的に表明できるため、企業としての社会的地位が向上します。この動きは今後より強くなるとみられ、企業が日本のみならず世界的に生き残るためには必要不可欠です。

また、再生エネルギーを取り入れた企業は国際基準である「CDP」の加点対象にもなります。CDPには多くの機関投資家が署名をしているため、CDPの点数が高い企業は、ESG投資を行う投資家に対して大きなアピールができます。

グリーン電力証書を購入するデメリット

次はグリーン電力証書を購入する2つのデメリットについて、それぞれ解説していきます。

市場規模が小さく発行量が少ない

グリーン電力を導入する企業は年々増加していますが、まだ市場規模はそれほど大きくなく、発行量も少ないです。相対的な市場規模に関しては、他の認証制度における発行量(2017年度時点)と比較すると分かりやすいです。

  • グリーン電力証書:3億7,800万kWh
  • 非化石証書:約11億kWh
  • J-クレジット:531億kWh

(出典:自然エネルギー財団

また日本品質保証機構が公表している資料によると、2012年にはグリーン電力量の認証を受けた件数が1,330件、認証電力量も「3億kWh」を超えていました。

2022年には認証電力量が「8.6億kWh」となり過去最高を記録しましたが、2023年2Qの段階では「4.16kWh」となっており、前年を下回ると推測されます。特に認証件数は下降傾向にあり、2022年には347件、2023年2Qの段階ではまだ132件しか認証されていません。

他の環境価値に比べて割高

上記で解説した市場規模の小ささにより、証書の購入価格が他の証書やクレジットと比較して割高となっています。

  • グリーン電力証書:約2~7円/kWh
  • 非化石証書:約0.3円/kWh(最低価格・FIT)
  • J-クレジット:0.5~1.0円/kWh

(出典:環境省「はじめての再エネ活用ガイド(企業向け)」

現時点では水準が最高7円程度まで値上がりしているグリーン電力証書は、この「割高さ」が普及のネックとなっています。売る側の収益性も含め、今後は導入する事業者にとって、よりインセンティブが高い制度に洗練されていく必要があるでしょう。

グリーン電力証書を発行するメリット

次はグリーン電力証書を発行し、販売する側の2つのメリットについて解説していきます。

収入が増える

グリーン電力証書を発行し、販売する事業者は売上による収益を計上できます。たとえば「5円/kWh」という単価で「20万kWh」分の電力証書を売却した場合、売却益は「100万円」となります。

これは再生エネルギーの導入が地球規模の問題解決だけでなく、新しい「収益体制の確立」という分かりやすいメリットにつながることを示しています。現状では収益性に関して課題もありますが、今後多くの企業がグリーン電力を導入するきっかけとなるでしょう。

脱炭素化社会実現に貢献できる

現代では先進国を中心として多くの国が「脱炭素化社会(ゼロカーボン)」の実現を目指しており、日本も2050年を目処に、CO2の実質排出量をゼロとする「カーボンニュートラル」の実現を掲げています。

とりわけCO2の排出主体である企業にとって、グリーン電力の導入と使用はCO2排出量の大幅な削減につながるため、直接的に脱炭素化社会の実現に貢献できます。グリーン電力証書を発行すれば、脱炭素化社会の推進企業であることを対外的にも表明できます。

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グリーン電力証書を発行するデメリット

次はグリーン電力証書を発行し販売する、2つのデメリットについて解説していきます。

民間取引のため公的保証がない

グリーン電力証書の主体は一般財団法人であり、証書を発行するのも民間の発行事業者であるため、証書に対する公的保証を受けることができません。法的な拘束力が弱いため、何らかのトラブルが発生しても政府が介入できないというリスクがあります。

このままでは「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」や「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」のエビデンスとして使用できませんが、資源エネルギー庁の「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度」で認証を受けると、それらのエビデンスとしてグリーン証書が使用できるようになります。

価格が下がる可能性がある

グリーンエネルギーの購入価格は発行事業者が決められますが、相場は需要・供給バランスの影響を受けます。これは環境省も資料の中で指摘している点ですが、今後需要が供給を下回れば価格を下げることになり、収益性が悪化する可能性があります。

グリーン電力証書の購入方法

グリーン電力証書を購入する流れは、次のとおりです。

  1. 証書の購入先を決める
  2. 見積もりを行う
  3. 証書を購入する
  4. 購入した事実を公表する

グリーン電力証書は、認可を受けている発行事業者から直接購入します。販売の仕方は事業者毎に異なるため、日本品質保証機構が公開している発行事業者リストや、事業者の公式サイトから問い合わせ先を確認する必要があります。

購入費用を見積もる際の計算式は次のとおりです。

  • (使用予想電力量 ✕ グリーン電力使用割合 ✕ 単価)+ 手数料 + 消費税

見積もりに関しては、事業者が公式サイト上で見積もりツールを公表していることもあるため、有効活用しましょう。その後、事業者ごとに定められている正規の手順に則って証書を購入します。

グリーン電力証書を購入したことは、世間に公表できます。ただし発行事業者マークや購入した目的等の記載が必要であるため、要件を満たしているかどうか、公表前にガイドラインを必ず確認しましょう。

グリーン電力証書制度が始まった背景と目的

グリーン電力証書の仕組みは、ある一つの企業から始まりました。この仕組みができるまでの時系列は次のとおりです。

  • 1957年:日本品質保証機構(JQA)が一般社団法人として設立される
  • 2000年:日本自然エネルギー株式会社がグリーン電力証書の企画を発表する
  • 2001年:グリーン電力認証機構が第三者認証機関として設立される
  • 2008年2月:政府による「グリーンエネルギー利用拡大小委員会」の設置
  • 2008年4月:グリーン電力拡大のため「グリーンエネルギー認証センター」を設立
  • 2008年6月:委員会により「グリーン電力証書ガイドライン」が策定される
  • 2018年:事業が「日本品質保証機構(JQA)」へ譲渡される

クリーンエネルギー認証制度は、主に企業によるグリーンエネルギーの使用推進や発電設備設置を促進する目的で作られました。グリーン電力の「環境価値」は証書という形で移動するため、より多くの企業への普及・拡大が見込まれる算段でした。

2000年に初めてグリーン電力証書の企画をスタートさせたのは「日本自然エネルギー株式会社」です。その後翌年には初めてグリーン電力の認証機構が設立され、民間の取り組みとして制度がスタートしました。

元々、制度の主体は「日本エネルギー経済研究所(IEEJ)」でした。現在は認証事業が「日本品質保証機構(JQA)」のものとなり、同機構は事業者と連携しながら属性情報の管理や、国際基準に準拠しているかどうかの検証等を行っています。

グリーン電力証書発行事業者一覧

グリーン電力証書発行事業者は、「一般財団法人日本品質保証機構」の公式サイトから確認できます。

グリーン電力証書の購入はOFFSEL(オフセル)

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グリーン電力証書でのカーボンオフセットをしたい方には、エレビスタ株式会社の「OFFSEL(オフセル)」がおすすめです。

OFFSEL(オフセル)は、グリーン電力証書・J-クレジット・非化石証書といった環境価値の調達代行を行っています。

相談料や手数料は無料ですので安心です。「グリーン電力証書を活用したいけど何から始めたらいいか分からない」という方は、一度連絡してみてください。

また、J-クレジットは1kWhから、トラッキング付FIT非化石証書は1t-CO2からと、少量単位から購入可能です。単価も他社より安価な設定となっているため、コストを抑えてカーボンオフセットができますよ。

問い合わせはこちら

まとめ

太陽光や風力などのグリーンエネルギーを元に作られた電気を「環境価値」として取引できるグリーン電力証書は、売る側と買う側の両方にメリットがある仕組みです。

現時点ではまだ課題もありますが、今後より多くの事業者が導入することでグリーンエネルギー発電が普及し、脱炭素社会の実現に一歩近づくことが期待できるでしょう。

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    編集者

    maeda

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