地球温暖化による気候変動などの環境問題が先進国だけでなく、世界のすべての国が協調し対策するべきだ、という共通認識を得られるようになってから40〜50年が経過しています。
その共通認識は京都議定書やパリ協定といった枠組みが作られたことで生まれたものですが、実はそれらのベースとなった「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」という条約があります。
この条約について理解することは、温室効果ガスを多く排出する現代の企業が歴史を知り、事業者として何をするべきか検討するうえで重要です。
今回はその「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」の内容や、削減目標を達成するために企業ができるのか、という点を詳しく解説していきます。
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)とは?
温室効果ガスによる気候変動のリスクが世界中で本格的に周知されはじめたのは、1970・80年代のことです。
各国の研究によってすぐにでも手を打たなければいけない問題であることはわかっていたものの、日本を含む世界の国々が急速な経済成長を遂げる中で、成長にブレーキを掛けかねない温室効果ガスの削減に関して協調を取るのは、簡単なことではありませんでした。
そこで1992年の5月に、温室効果ガスの削減に関して世界的な枠組みを作るために採択されたのが「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」です。
この条約は「地球サミット(国連環境開発会議)」で採択され、1993年には日本が条約に批准し、1994年に条約として正式に発効されました。
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)が採択された背景
次は「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」が採択された、2つの背景について解説します。
気候変動枠組条約締結国会議(COP)
地球温暖化の直接的な原因は、工業製品が排出する二酸化炭素(CO2)やメタン(CH₄)という温室効果ガスの濃度が大気中で高まることです。これは一部の国だけでなく世界的な問題であるため、先進国を中心とした包括的な取り組みが必要でした。
そこで温室効果ガスの排出削減・濃度安定を世界中で促進するため、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)が採択されたのと同時に、1年ごとに「気候変動枠組条約締結国会議(COP)」を開催し、温室効果ガス削減の取り組みを推進するための議論を行うことが決まりました。
京都議定書
気候変動枠組条約締結国会議(COP)は、今までは「任意」であった各国の温室効果ガス削減に関して、一定の法的拘束力(強制力)を持たせることに成功しています。その分かりやすい例が、1997年に採択された「京都議定書」です。
この条例は第3回気候変動枠組条約締結国会議(COP3)で採択されました。主に先進国に対して、2008年から2012年(第1期)、2013年から2020年(第2期)という期間において、具体的な温室効果ガスの削減義務を課しています。
たとえば日本は2008年から2012年にかけて「6%」の削減が義務化されました。アメリカも「7%」、EU諸国も「8%」の削減目標が課されています。
排出削減目標を達成できない国には罰則もありましたが、途上国(非附属書I国)には削減目標が課されていませんでした。これにより公平さが欠如している、包括的な取り組みでない、といった問題点が指摘されていました。
パリ協定
2015年に開催された第21回気候変動枠組条約締結国会議(COP21)において、京都議定書の欠点を改善した「パリ協定」が採択されました。
パリ協定は、京都議定書のように削減目標の策定義務を先進国と途上国で分離していません。すべての締結国が独自に削減目標を定め、目標達成のために等しく努力することが求められています。
言うまでもなく、パリ協定や京都議定書のベースとなったのは1992年に採択された気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)です。最初に基盤を作り、具体的な削減目標¥ルールの策定という肉付けに成功したという意味では、たとえ20年以上前の条約であっても、大きな意味があったといえます。
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)では何が定義されている?
次は気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の目的・加盟国・内容について、それぞれ解説していきます。
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の目的
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)には、次のような目的があります。
- 大気中の温室効果ガス濃度を安定化させる
- 1の水準を、生態系や食料生産、経済開発の持続化が可能な期間内に達成させる
すでに解説したとおり、気候変動をもたらす地球温暖化の直接的な原因は、大気中の二酸化炭素(CO2)やメタン(CH₄)といった温室効果ガス濃度が高くなることです。これにより徐々に気温が上がり、ゆっくりと生態系が破壊されていくことが懸念されています。
そこで気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)では、特に温室効果ガスの排出量が多い先進国(附属書I国)は削減努力を行う「責任」があると定義しました。これにより、先進国は温室効果ガス削減のための明確な「行動」を取る必要性が生じています。
当条例においては具体的な削減目標は定められず、途上国(非附属書I国)に対する削減責任についても言及されませんでした。しかし無意味な条約では決してなく、京都議定書やパリ条約につながる「基盤づくり」という役割を果たしました。
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の加盟国
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)には、198の国と機関が締結しており、もちろん日本も含まれています。
日本は発効当初から削減責任のある先進国(附属書I国)に分類されており、自国の削減努力だけでなく、積極的に途上国の支援を行うべき立場にあります。その他に、次の国も締結国に含まれています。
- オーストリア
- ベルギー
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- イタリア
- オランダ
- ポーランド
- ポルトガル
- ルーマニア
- スペイン
- スウェーデン
- イギリス
ちなみにこれらの国は、京都議定書において削減義務がある国にも含まれています。またアメリカや中国、インドやブラジルなど、現在排出量の上位に位置する国も含まれているものの、いくつかの国はその時点で途上国であったり、後に脱退・復帰した国もあります。
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の内容
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の目的は大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることですが、先進国と途上国を含む締結国には異なる義務が課せられています。先進国に義務化されているのは次の点です。
- 2000年までに温室効果ガス排出量を90年代の水準に戻す
- 温室効果ガス削減のために具体的な措置を講じる
- 排出量に関する報告を行う
- 途上国を資金面・技術面で支援する
日本を含めた先進国(附属書I国)には、温室効果ガス削減による気候変動抑止を実現するための「枠組み」が規定されました。具体的な数字は規定にないものの、2000年までに排出量の水準を90年代と同等にするための、具体的な施策を実行することが求められています。
また先進国(附属書II国を含む)は、定期的な報告書の提出と発展国への援助も要求されています。当時における途上国は確かに一人あたりの排出量が先進国と比較して比較的少ない状況にあり、国ごとの個別のニーズに配慮しながら支援を行うことは適当であると考えられていました。
現在でもこの認識は変わっていませんが、パリ協定では先進国・途上国の区別なくすべての締結国に対して削減目標の策定・達成を求めています。この点で、当条約が採択された当時よりも公平・効果的な形で温室効果ガス削減が進められているといえます。
企業が温室効果ガスを削減することで得られるメリット
次は、企業が積極的に温室効果ガス削減を行う3つのメリットを解説します。
環境問題への取り組みを外部にPRできる
企業は温室効果ガス削減の取り組みを積極的に行い、成果を外部に発信することで、環境問題に対して高い意識を持つ企業であることをアピールできます。これは消費者からのイメージアップや、投資家からの投資を促すことにつながります。
とりわけ近年では多くの人がSNSから情報を取得する傾向にあり、それは対個人だけでなく対企業も同様です。そこで企業は自社の環境保全活動内容をより多くの人に伝えるために、SNSを活用して環境への取り組みをPRする例が増えています。
ESG投資の潮流がある
企業が温室効果ガス削減を促進することは、投資家からのESG投資を促すことになります。ESG投資とは企業の環境・社会性・ガバナンスを評価して投資することであり、企業の持続可能性を測る指標ともなります。
温室効果ガス削減に取り組む企業は、気候変動への問題意識や、企業が負うべき社会的な責任、企業としての透明性や信頼性が高く評価されます。そのような持続可能性の高さを基準にしている投資家からの投資機会が増えることは、資金調達の機会が増えることにもなります。
カーボンニュートラルの実現に貢献できる
日本は2050年までの「カーボンニュートラル達成」を目標に掲げており、この目標の達成には日本企業の努力が必要不可欠です。
カーボンニュートラルとは、自国における温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることです。カーボンニュートラルを達成するためには、温室効果ガスの削減量を増やすだけでなく、植樹等により吸収量を上げる必要もあります。
温室効果ガス排出量を削減するために企業ができること
次は企業が温室効果ガス排出量を削減するためにできる3つのことについて、それぞれ解説していきます。
再生可能エネルギーの導入・切り替え
企業が排出する温室効果ガスを削減するための最も効果的な方法は、自社で再生可能エネルギーを導入することです。主に次の方法で再生可能エネルギーを導入できます。
- 自社の敷地内に太陽光発電施設を設置する
- 自社の敷地内に発電施設を設置してもらい、電力を購入する
- 電力会社と契約しているプランを変更する
もっとも効率的に再生可能エネルギーを導入できるのは、自社敷地内に太陽光発電施設を設置する方法です。太陽光パネルや変換装置などを導入するために多額の初期費用が必要になりますが、ランニングコストはもっとも低く済みます。
自社だけでの導入が難しい場合は、自社敷地を電力会社に貸し、代わりに太陽光発電施設を設置してもらうことも可能です。これはいわゆる「PPAモデル」という方式であり、設置費用は無料なので導入コストを大幅に削減できます。
すぐにでも再生エネルギーを導入したい企業は、電力会社との契約プランを「再生可能エネルギープラン」に変更することも可能です。これにより供給される電力が再生可能エネルギー由来の電力に切り替わります。
省エネ設備の導入
企業は自社の店舗や工場等の施設に省エネ設備を導入することで、温室効果ガス排出を削減できます。具体的には、次のような方法が挙げられます。
- 新設するビルに高効率の照明・空調を導入する
- 事務所の外窓・内窓を断熱性の高いガラスに交換する
- 工場で使用するボイラーをエネルギー消費効率が高いものに交換する
これらの方法はいずれも環境負荷を低減するだけでなく、ランニングコストも下げられるというメリットがあります。ただし導入費用が高額になるという理由で、二の足を踏んでいる中小事業者も多いです。
そこで利用できるのが、国が提供する省エネ診断事業です。これは企業が専門家から省エネに関わる設備投資のアドバイスを受けられる仕組みであり、中小企業または「直近1年間のエネルギー使用量が1,500kl未満の事業所」が対象となります。
所定の診断費用は発生しますが、状況によっては新しい設備を導入せずにコストを大幅に下げられることもあります。排出削減のためにどのような省エネ設備を導入すれば良いか分からない、という事業者はぜひ利用を検討してみましょう。
カーボンオフセット
企業は自社の削減努力だけで目標を達成することが難しい場合、「カーボンオフセット」によって削減量を補てんすることができます。
カーボン・オフセットとは、他社が発行した再生可能エネルギー由来の「環境価値」を持つカーボンクレジットや証書を買うことにより、自社で達成できない削減を投資活動で埋め合わせることです。これには次のようなメリットがあります。
- コストがかかる再生エネルギー設備を導入しなくても脱炭素に貢献できる
- 電力を省エネ電力に切り替えなくても利用できる
日本国内であれば「J-クレジット」や「非化石証書」といった制度を利用できます。それぞれの制度の違いは次のとおりです。
比較項目 | カーボンクレジット (J-クレジット) |
非化石証書 |
創出者 | 事業者や自治体 | 発電事業者のみ |
対象活動 | 温室効果ガスの削減・吸収 | 非化石電源による発電 |
価値の移動 | 可 | 不可(購入者のみ) |
単価(最低価格) | 1円~/kWh | 0.3円/kWh |
有効期限 | なし | あり(翌年の6月まで) |
J-クレジットが削減・吸収量に応じて発行されるものであるのに対して、非化石証書は主に電力会社の非化石電源(太陽光発電や原子力発電など)の発電量に応じて発行できるものです。
どちらも取引が可能なものですが、市場や取引量により変化する単価や、購入方法などの明確な違いもあります。それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで活用することをおすすめします。
カーボンクレジットの調達代行は業界最安値『OFFSEL(オフセル)』
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の重要性を理解し、脱炭素化の取り組みをさらに加速させようと検討している事業者におすすめできるサービスがあります。それがカーボンクレジットの調達代行をしてくれる「OFFSEL(オフセル)」です。
OFFSEL(オフセル)は「J-クレジット」および「非化石証書」の調達代行に対応しています。本来クレジット・証書を調達するには煩雑な事務手続きが必要ですが、それにかかる時間やコストを大幅に削減できます。また、少量から買えるのもメリットです。
- J-クレジットの最低購入単位:1t-CO2
- 非化石証書の最低購入単位:1kWh
OFFSEL(オフセル)は次に挙げる3つの国際基準に準拠しています。これにより当サービスを利用して調達した分を「削減量」としてそれぞれの運営機関に報告できます。
- CDP:英国発の情報開示システムを運用する非営利団体の名称
- SBT:CDPが設立に関わった、パリ協定を水準とする温室効果ガス削減を促進する国際イニシアチブ
- RE100:CDPとパートナーシップを組み運営している、使用電力の再生可能エネルギー率10割を目指す国際イニシアチブ
調達代行サービスの利用に不安がある方でも、無料相談や見積もりを利用したうえで購入量・単価が確定されるため、安心です。また中小企業や自治体も購入できるうえ、年間契約をする必要もありません。
非化石証書の次回調達は、2024年2月・5月・8月・11月となります。
カーボンオフセットを推進していこうと考えている事業者は、ぜひ一度「OFFSEL(オフセル)」の無料相談を利用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)は、気候変動の抑止および社会の脱炭素化に関して世界が同じ方向を向いた「京都議定書」や「パリ協定」のベースとなった、歴史的にも重要な条約です。日本の2050年カーボンニュートラルという大きな目標に貢献したい事業者は、改めて自社に何が可能で、何を達成できるか考えてみてはいかがでしょうか。
参考:
気候変動に関する国際枠組み|外務省
気候変動枠組条約 | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
環境省_気候変動に関する国際連合枠組条約
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