GO(Guarantee of Origin)とは?発行された背景・必要性と導入するメリット・デメリット・将来性
- CO2削減
GO(Guarantee of Origin)とは、EUが2001年に開発・導入した電力証書です。GOは。発行後、証書に記載された情報の高い現実性と標準化された証書管理システムなどが高く評価され、世界中に広められています。
GOが発行された背景と必要性をはじめ、導入する際に期待できるメリットや、注意するべき点やデメリットなどを見ていきましょう。
GOに参加している国や発行量・失効量・償却量の推移、ボランタリークレジットの概要やGOを活用する方法もあわせてご覧ください。
目次
GO(Guarantee of Origin)とは
GO(以下本文中ではGOと記述)はEUが2001年に開発を開始・導入した電力証書で、GoOという名称でも呼ばれています。
特に再生可能エネルギーから供給される電気、ガス、冷却・冷房エネルギーの出所の証明を形にしたものです。
証書に記載されている情報の現実性が高い点や標準化された証書管理システムも高く評価されており、「世界各国で発行されている環境証書の中でも最先端」との呼び声が高いのが現状です。
そのGOを標準化している機関や参加国などを以下表に示します。
標準化機関 | EU・AIB(Association of Issuing Bodies) |
参加国 | EUに加盟している27カ国・スイス・ノルウェー・セルビア・アイスランド |
対象電源 | 国ごとに取り決め |
発電方法 | 国ごとに取り決め |
証書の使用者 | 供給事業者・消費者 |
取引方法 | 相対取引及び市場取引 |
使用期限 | 発電日から1年以内 |
発行量 | 8,357億kW(2021年の取引日ベース) |
EUは新規の指令を計画中で、国や自治体などの補助金を支給されている自然エネルギーで生成された電力もGOの対象にすることを義務化しようとしています。
「2030年までに温室効果ガス排出量を1990年と比べて55%以上削減する」というEU全体の目標を達成するため、自然エネルギー電力の環境価値をGOによって確認できるようなシステムを構築し、CO2排出量削減を推進しています。
EECS(欧州証書管理システム)によるGOの発行量と失効量と償却量の推移は以下の通りです。
ヨーロッパの各国で自然エネルギー導入量が増えたことにより、GOの発行量は増加し続けています。
(参考:自然エネルギー財団「電力証書が自然エネルギーを増やす 日本と海外で隔たる制度」)
GOはボランタリークレジットに属する
ボランタリークレジットとは、脱炭素化実現を目的に活用されるようになった環境証書・クレジットで、特に民間企業やNGOが発行するものを指します。
CO2を含む温室効果ガスの排出削減量を取引するシステムで、現在は海外の民間企業・団体が発行・販売しています。
国の政府あるいは自治体などの制度ではなく、民間の企業や団体が自主的に取り組んでいる制度なので、民間考案の制度ならではの利点が多いです。
以下がボランタリークレジットの代表的なメリットです。
- 温室効果ガスの排出を埋め合わせられる
- 行政に規制されないため、広範での用途に利活用できる
- 温室効果ガス排出量削減以外の効果(環境保全・生物多様性保全への貢献など)を獲得可能
- 企業の環境対策のPRができる
報告書に公的なCO2排出量削減方法として記載できないというデメリットがありますが、自由に利用できる脱炭素化対策として活用する企業が増え続けています。
(参考:自然電力グループ「ボランタリークレジットとは?意味・メリット・種類を網羅的に解説」)
GO(Guarantee of Origin)が発行された背景・必要性
電力小売が自由化されたことにより、電力商品が多様になりました。
しかし、識別できない電気を消費者に説明する際に説明内容と実情が乖離することを防止すると共に、消費者の知る権利及び選択する権利を守らなければなりません。
電力に関連した情報を性格に公開することと証明することの必要性が高まったことから、EUはGO開発と制度化に着手しました。GOの着手には「温室効果ガス削減のためにクリーンな自然エネルギーの普及が求められた」という背景もあります。
GOの導入経過と今後の計画は以下表の通りです。
2001年 | GO開発を取り決め |
2009年 | 電力供給者に対しGOのエネルギー源情報開示義務化を要請 |
2018年 | GOを自然エネルギー利用を証明するただ一つの方法と規定 |
2020年代の予定 | 補助金の支給対象となっている自然エネルギー由来の電力もGOの対象に追加する計画を予定 |
2021年9月にGOの需要が一気に高まり、取引額が従来の2倍近くになりました。取引額高騰の主な理由を以下に示します。
- CO2排出枠の取引額の上昇によりCO2排出量削減に利用可能なGO取引額が上昇した
- 新型コロナウイルスの感染拡大により化石燃料の価格が値上がりした
RE-Source(欧州の自然エネルギー推進団体)は、2022年から2023年の見積もり額は1.3ユーロ/kWhまで上昇したと公表しています。GOの必要性は高まる一方なのです。
(参考:ISEP「発電源証明(GoO)の活用」)
(参考:自然エネルギー財団「電力証書が自然エネルギーを増やす 日本と海外で隔たる制度」)
GO(Guarantee of Origin)のメリット
GOのメリットは以下の通りです。
- エネルギー源が具体的に証明できる
- 認証管理システムが国際的に統一されている
- 再生可能エネルギーの普及を促進する
- 活用することでCSRを果たせる
エネルギー源が具体的に証明できる
GO制度では、エネルギーの発電場所・発電方式に関する情報を具体的に証明できます。
通常の電力会社から電気を購入する場合、そのエネルギーがどこから来たものなのかは確認できません。
GOでは電力の由来を詳しく知ることができ、透明性・信頼性が向上するため、グリーン電力を使用したいと考える消費者や企業にメリットが大きくなります。
認証管理システムが国際的に統一されている
GO制度はEU諸国を中心として国際的に利用されています。認証管理システムが統一されているので、違う国と取引したり、比較したりすることが可能です。
グリーン電力の市場が広がることで再生可能エネルギーの開発が活性化し、地球温暖化問題に対する国際的な協力の促進に繋がると言えます。
再生可能エネルギーの普及を促進する
GO制度でグリーン電力の取引が活性化すると、再生可能エネルギー事業者は収入が得やすくなります。そうなれば、再生可能エネルギー発電の開発や事業拡大により多くの資金を投じられ、再生可能エネルギーの普及促進が可能です。
GO制度を活用する事業者が増えることで、消費者が再生可能エネルギー由来の電力を選択できる機会が増えると期待できます。
企業が活用することでCSRを果たせる
GOを活用することで、やむを得ず排出してしまった温室効果ガスをカーボンオフセットすることができ、CSRを果たすことができます。
2050年までのカーボンニュートラル達成を目指し、企業にも脱炭素化への努力が求められています。
省エネ設備や太陽光発電設備の導入が効果的ですが、初期費用が高額ですぐに全てを実行することはできない場合もあるでしょう。また、経済活動を行う以上、温室効果ガスの排出量をゼロにすることは難しいです。
GOの活用をPRすることで、環境問題への取り組みを示すことができ、企業価値の向上に繋がります。
GO(Guarantee of Origin)のデメリットと課題
GOは優れた電力証書ですが、国内企業の導入に関してはいくつかの課題があります。運用している欧州でも問題視されているデメリット及び課題を見てみましょう。
日本国内ではクレジットに信頼性が高くない
国内企業がGO導入を迷う理由の1つは、クレジットの信頼性が高くないことです。GOは欧州で最も活用されている電力証書ですが、国内で発行されたものではないため、環境対策の実績にカウントする際にも信用度が低いと見なされているのです。
民間企業や団体が発行したクレジットなので国や自治体の保証がないという点でも、企業が導入に前向きになれない原因になっています。「民間で発行された自由度の高い電力証書」というメリットがデメリットに転じているのです。
取引価格が確実ではないことも「予算の管理を妨げる」として問題視されています。
市場が小さい
企業がGOを導入しないのは、現状では国内の市場が小さいことです。市場が小さいため、資金不足を理由に事業を拡大したり、新規企業を設立したりするなどの事業活動が難しくなるのです。
GOを導入する企業が増えれば市場が小さいというデメリットがなくなるため、GOの導入に意欲的な企業や団体が率先して市場を拡大する努力を積み重ねる必要があります。
GO管理システムを統一することによってGO取引が活性化し、グリーン電力市場を発展させることが期待されています。
(参考:ISEP「グリーン電力と原産地証明に関する調査報告書」)
再生可能エネルギーがダブルカウントされる可能性がある
欧州でも問題とされている課題は、再生可能エネルギーのダブルカウンティングの可能性があることです。GOのシステムは完全に整備されているとは言えないため、ダブルカウントが危ぶまれている国が多いのです。
各国で制度が微妙に異なっていることも、ダブルカウントの可能性を高めています。
ダブルカウンティングを防止するため、以下の措置がGOを導入している各国で実施されています。
- 一度利用したGOを無効化する
- 登録・発行・転送などの業務を行う機関を一機関にまとめる
これらは最低限の対策として実施されており、国ごとにさらにダブルカウント防止対策を取ることでGOのデメリットの払拭に努めています。
(参考:ISEP「グリーン電力と原産地証明に関する調査報告書」)
GO(Guarantee of Origin)の活用方法
GOの施行状況は国によって異なりますが、活用方法は基本的に一致しています。主な活用方法を見ていきましょう。
- 再生可能エネルギー利用の促進
- 再生可能エネルギーを使用する取引業者・電力生産者が、取り扱っている電力が再生可能だと証明する
- 電力供給者が消費者に示す電力ディスクロージャーとして活用
- グリーン証書制度の一部分として活用
- 再生可能エネルギー発電に対応する他の制度の補助
- 消費者に対して電力市場の透明性を高める方法として活用
GOを導入しているEU諸国の多くは、再生可能エネルギー利用の推進や電力ディスクロージャーとしての役割やグリーン証書制度を補う要素として活用されています。
(参考:ISEP「グリーン電力と原産地証明に関する調査報告書」)
まとめ
EUが発案・発行した電力証書・GOは、日本国内では知名度・普及度・信頼性が高いとは言えないのが現状ですが、世界的には最大級の電力証書であることから、国内での導入が広がりつつあります。
GOには、日本国内での信頼性が高くないこと、市場が小さいこと、再生可能エネルギーのダブルカウントの可能性などのデメリットが問題視されており、日本国内では海外ほど普及率が高くありません。
しかし、エネルギー源を具体的に証明できる点や国際的に認証管理システムが統一されていることや再生可能エネルギー普及促進が期待できること、企業の活用によりCSRが実現できるなどの数多くのメリットもあります。
導入を妨げているデメリットや課題を解決していくことにより、GOを活用する国内企業が増えていくでしょう。
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編集者
pn.garrden