Scope 2削減の方法|電力の切り替え・PPA・再エネ証書の比較と選び方
- CO2削減

Scope 2(購入した電力・熱の使用に伴う間接排出)を削減する手段は、主に「再エネ電力メニューへの切り替え」「PPA・自家発電設備の導入」「再エネ証書の調達」の3つです。いずれも電力の使用量を減らす省エネと組み合わせて検討します。どの手段を優先するかは、電力契約を自社で変更できるか、報告の期限がいつか、設備の設置場所や長期契約を検討できるかによって決まります。
本記事では、3つの手段を同じ比較軸で整理し、今年度の報告に間に合わせる短期対応と、次年度以降に移行する中長期の設計を、手順とあわせて解説します。再エネ証書による対応と「オフセット」の違いも説明します。
シミュレーター
最低調達量:1 kWh〜
本シミュレーターは ¥4,500 / t-CO2 を参考値として使用
最低調達量:1,000 kWh〜
目次
Scope 2削減の手段は3つ|使用量と契約条件から選ぶ
Scope 2の削減は、まず電力の使用量を減らし、そのうえで使用する電力を再エネ由来に切り替える、という順序で検討します。再エネ化の手段は、電力メニューの切り替え、PPA・自家発電設備の導入、再エネ証書の調達の3つです。電力契約を自社で変更できない場合や報告の期限が近い場合は、契約の変更を待たずに調達できる再エネ証書が主な選択肢になります。
Scope 2の対象範囲
Scope 2は、他社から購入した電力・熱の使用に伴う間接排出です。オフィスや工場で使用する購入電力が代表例です。自社で燃料を燃やす直接排出(Scope 1)や、サプライチェーン全体の排出(Scope 3)とは区別して扱います。Scope 3の削減施策は本記事の対象外です。各Scopeの定義はGHGプロトコルの解説記事で説明しています。
どの手段を優先するかの判断フロー
次の4つの問いに順に答えると、優先して検討する手段を絞り込めます。
- 電力契約を自社で変更できるか:テナントとして入居し、建物の所有者が電力契約を管理している場合は、電力メニューの切り替えやPPAを自社だけで決められないことがあります。この場合は再エネ証書が主な選択肢になります。
- 今年度の報告や取引先への回答に期限があるか:期限が近い場合は、再エネ証書で対象年度の電力使用量に対応し、電力契約の見直しを並行して検討します。
- 設備の設置場所や長期の契約を検討できるか:検討できる場合は、PPA・自家発電設備の導入を中長期の選択肢として評価します。
- 報告先や目標で使える手段か:温対法に基づく報告、CDP、RE100、SBTなど、報告先や目標によって算定方法と必要な証憑が異なります。手段を決める前に確認します。
Scope 2削減方法の比較|電力の切り替え・PPA・再エネ証書
3つの手段は、変更する対象、開始できる時期、費用の傾向が異なります。以下は一般的な傾向であり、実際の条件は契約内容や拠点の状況によって変わります。
| 比較軸 | 再エネ電力メニューへの切り替え | PPA・自家発電設備の導入 | 再エネ証書の調達 |
|---|---|---|---|
| 変更する対象 | 電力会社との契約(料金メニュー) | 発電設備の設置、または発電事業者との長期の電力購入契約 | 電力契約は変更せず、再エネ・非化石の環境価値を別途調達する |
| 開始できる時期 | 電力契約の見直し時期に左右される | 設置場所の確認や契約締結までに検討期間を要する | 契約の変更を待たずに調達を検討できる |
| 費用の傾向 | 通常の電力メニューより単価が高くなる場合が多い | 設備の初期費用や契約条件の検討が必要になる | 他の2つの手段と比べて費用を抑えやすい傾向がある |
| 向いている条件 | 自社で電力契約を管理しており、次の契約見直しが近い | 設置場所があり、長期にわたり再エネ電力を確保したい | 電力契約を変更できない、報告期限が近い、少量から始めたい |
| 注意点 | テナント入居中は自社で切り替えられない場合がある | 契約期間・設置条件の確認に時間を要する | 証書の種類によって使える報告・目標が異なる。GHGプロトコル改訂の影響を確認する |
3つの手段は二者択一ではありません。たとえば、契約を自社で管理している本社は次の契約見直しで電力メニューを切り替え、テナント入居の拠点は再エネ証書で対応する、という組み合わせも考えられます。
Scope 2で使う再エネ証書の種類と購入前の確認点
再エネ証書は、電力そのものではなく、その電力が再エネ・非化石電源に由来するという環境価値を取引するものです。単位はkWhです。国内拠点と海外拠点で対象となる証書が異なります。
| 証書 | 示す価値 | 主な対象拠点 | 確認する点 |
|---|---|---|---|
| 非化石証書 | 非化石電源(原子力を含む)由来の電力の価値。FIT由来のものは再エネ設備に由来する | 国内 | FIT・非FIT、発電設備のトラッキングの有無で種類が分かれ、使える用途が異なる。需要家が購入するのは主にトラッキング付きのFIT非化石証書 |
| グリーン電力証書 | 再エネ由来の電力の価値 | 国内 | 発電設備などの条件を指定して調達したい場合に検討される |
| I-RECなど海外の再エネ証書 | 海外の再エネ電力の価値 | 海外 | 対象国と取扱いの可否を確認する |
J-クレジットは、CO2の削減・吸収量をt-CO2単位で示すクレジットであり、kWh単位の再エネ証書とは性格が異なります。Scope 2の報告にクレジットを用いることができるかは報告先によって異なり、GHGプロトコルの改訂案でも扱いが議論されています。使用する前に、報告先の最新の規則を確認してください。
証書ごとの違いと用途別の選び方は、RE100で使える証書の解説記事でも説明しています。
購入前に確認する4つの項目
- 用途:どの報告・目標(温対法に基づく報告、CDP、RE100など)に使うか
- 対象期間:どの年度の電力使用量に充てるか
- 必要量:対象拠点の電力使用量(kWh)のうち、どれだけを証書で対応するか
- 証憑:無効化の記録や証明書など、報告先に提出・保管する書類の形式
Scope 2削減とオフセットの違い
再エネ電力や再エネ証書は、使用した電力に再エネ・非化石の環境価値を充て、マーケット基準で算定するScope 2排出量に反映する手段です。これに対してカーボンオフセットは、自社の排出量を、他の場所で生じた削減・吸収量(クレジット)で埋め合わせる考え方です。
| 項目 | 再エネ電力・再エネ証書 | カーボンオフセット(クレジット) |
|---|---|---|
| 主な対象 | 購入電力に由来する排出(Scope 2) | 用途に応じて定める排出量 |
| 単位 | kWh | t-CO2 |
| 示す内容 | 使用した電力を再エネ・非化石由来として扱う | 自社の排出量を他の場所の削減・吸収量で埋め合わせる |
| 使用電力量への影響 | 変わらない | 変わらない |
いずれの手段も、使用電力量そのものを減らすものではありません。社内外に示す際は、省エネなどによる実際の排出削減量と、証書・クレジットによる環境価値を区別して示すと、報告の読み手が誤解しにくくなります。「CO2ゼロ」などと表記する場合は、対象範囲(Scope 2のマーケット基準など)、対象期間、使用した証書の種類を併記してください。
Scope 2削減の進め方|5つの手順
Scope 2の削減は、次の5つの手順で進めます。
- 拠点・契約ごとに電力使用量を把握する:請求書などから拠点別の年間電力使用量(kWh)を集計し、電力契約を管理している主体(自社か、建物の所有者か)を整理します。
- 報告先と求められる算定方法を確認する:温対法に基づく報告、CDP、RE100、SBTなど、報告先ごとに算定方法と必要な証憑を確認します。
- 使用量の削減策を検討する:運用の見直しや高効率設備への更新など、電力使用量そのものを減らす施策を検討します。
- 条件に合う再エネ化の手段を選び、調達する:判断フローと比較表をもとに手段を選びます。再エネ証書の場合は、対象年度と必要量を決めて調達します。
- 証憑を保管し、次年度の計画に反映する:無効化の記録や証明書を保管し、報告に使用します。あわせて、次の契約見直しや中長期の手段への移行を検討します。
短期対応と中長期移行の設計
手段を時間軸で分けると、組み合わせを決めやすくなります。以下は、電力契約を自社で管理している拠点と、契約を変更できない拠点の両方を持つ企業を想定した例です。
| 時期 | 主な手段 | 目的 |
|---|---|---|
| 今年度(報告期限まで) | 再エネ証書の調達 | 電力契約の変更を待たずに、対象年度の電力使用量に環境価値を充てる |
| 次の契約見直し時 | 再エネ電力メニューへの切り替え(契約を自社で管理している拠点) | 電力契約そのものを再エネ由来に切り替える |
| 中長期 | PPA・自家発電設備の導入可能性の評価 | 長期にわたり再エネ電力を確保する |
GHGプロトコル改訂の動向を確認する
GHGプロトコルでは、Scope 2の算定に関するガイダンスの改訂が進められています。改訂案では、電力を使用した時間と証書の対象時間を一致させる要件や、電力を使用した地域と証書の発電設備の地域に関する要件が議論されています。改訂の内容によっては、現在利用している証書の扱いが変わる可能性があります。複数年にわたる調達計画を立てる場合は、GHGプロトコルの公式サイトで最新の状況を確認してください。
Scope 2削減に関するよくある質問
再エネ証書だけでScope 2を削減したと言えますか?
再エネ証書は、マーケット基準で算定するScope 2排出量に反映できる手段です。ただし、使用電力量そのものは変わらないため、省エネによる削減量とは区別して示します。証書の扱いは報告先によって異なるため、事前に確認してください。
テナントビルに入居しており、電力契約を変更できません。どの手段がありますか?
建物の所有者が電力契約を管理している場合、電力メニューの切り替えやPPAを自社だけで決められないことがあります。この場合は、電力契約を変更せずに調達できる再エネ証書が主な選択肢になります。建物の所有者と電力契約の見直しについて協議することもあわせて検討します。
再エネ証書はいつまでに調達すればよいですか?
報告の対象年度と提出期限から逆算して計画します。証書の種類によって調達できる時期や手続きが異なるため、対象年度と必要量が決まった段階で調達方法を確認することをおすすめします。
まとめと次に読む記事
- Scope 2削減の手段は、再エネ電力メニューへの切り替え、PPA・自家発電設備の導入、再エネ証書の調達の3つです。省エネと組み合わせて検討します。
- 電力契約を変更できない場合や報告期限が近い場合は、再エネ証書が主な選択肢になります。
- 証書・クレジットによる環境価値は、実際の排出削減量と区別して示します。
- 短期は証書、次の契約見直しで電力メニュー、中長期でPPA・設備と、時間軸で組み合わせを設計します。
Scope 1・2・3の定義と算定の枠組みはGHGプロトコルの解説、報告・目標ごとに使える証書はRE100と非化石証書の解説をご覧ください。証書ごとの商品情報は、FIT非化石証書、グリーン電力証書、海外の再エネ電力証書の各ページで確認できます。
自社の拠点と報告先に合うScope 2削減手段の整理や再エネ証書の調達は、OFFSELの相談窓口でご相談いただけます。
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編集者
imaoka



