環境価値の無効化は何をする?|J-クレジット・非化石証書・グリーン電力証書の手続きと証明書
- CO2削減

非化石証書、J-クレジット、グリーン電力証書を排出量の報告や開示に使う場合、購入しただけでは使用したことになりません。各制度で定められた手続きによって環境価値を使用済みの状態にし、手続きが完了したことを示す書類(証憑)を保管する必要があります。この手続きは一般に「無効化」や「償却」と呼ばれ、同じ価値を複数の企業が重ねて使うこと(ダブルカウント)を防ぎます。
手続きの名称、実施者、手続き後に手元に残る書類は、制度ごとに異なります。本記事では、報告・監査の前に担当者が確認すべき点を制度別に整理します。制度の説明は2026年10月時点で確認した公表資料に、OFFSELの支援内容は自社の業務に基づきます。
シミュレーター
最低調達量:1 kWh〜
本シミュレーターは ¥4,500 / t-CO2 を参考値として使用
最低調達量:1,000 kWh〜
目次
環境価値の「無効化」とは:報告に使う前に必要な手続き
無効化とは、使用した証書やクレジットを、登録簿や取引システム上で再利用できない状態にする手続きです。同じ1t-CO2、同じ1kWhの価値を複数の企業が使わないようにするための手続きであり、報告や開示に使う環境価値の信頼性を支える前提になります。
報告に使う場合は、次の2点を同時に満たしていることを確認します。
- 制度で定められた手続きが完了し、その価値が自社(または自社が指定した名義)で使用済みになっていること
- 手続きが完了したことを示す書類(証憑)を、報告・監査の時点で提示できること
制度別の比較:手続きの名称・実施者・手元に残る書類
「無効化」という言葉は制度によって使われ方が異なります。報告に使う前に、制度ごとの手続きと、手続き後に残る書類を確認します。
| 制度 | 手続き | 実施者 | 手続き後に残る書類 | 取り消し |
|---|---|---|---|---|
| J-クレジット | J-クレジット登録簿システムでの無効化 | 口座保有者。口座がない場合は代理無効化を依頼 | 無効化通知書(手続きをした者が登録簿システムから出力) | 実行後は用途・目的詳細・利用者名などを変更できない |
| 非化石証書 | JEPXの非化石価値取引システム上で、証書の保有区分を「確定」にする手続き | JEPXの会員。会員でない企業は会員である事業者に依頼 | 使用を示す証明書(記載内容・発行者は依頼先に確認) | 確定後は取り消せない |
| グリーン電力証書(温対法で使う場合) | 償却(国の口座への移転) | 証書の保有者が申請 | 償却・取消通知書 | 証書発行事業者に確認 |
※グリーン電力証書の行は、国の認証を受けた「グリーンエネルギーCO2削減相当量」を温対法の報告に使う場合の手続きです。各行の出典は、以下の制度別の節に記載しています。
J-クレジットの無効化手続きと無効化通知書
J-クレジットは、どの用途で使う場合も、J-クレジット登録簿システムで無効化の手続きを行う必要があります(出典:J-クレジット制度事務局「クレジットの活用手続き」)。
手続きの前に社内で確定しておくこと
無効化は、実行した後に用途・目的詳細・利用者名などを変更できません(出典:J-クレジット制度事務局「無効化手続きの注意点」)。手続きの前に、次の項目を社内で確定します。
- 無効化する量と、対象のクレジット
- 用途(どの報告・目的に使うか)
- 目的詳細:いつ、何を、何のために、誰が無効化(主張)するのかがわかる記載
- 利用者名(報告する法人名と一致しているか)
1回の無効化で、別々の目的をまとめて処理することはできません。目的ごとに手続きを分けます。また、利用法人名や目的詳細に環境依存文字を使うと、通知書のPDFで正しく表示されない、または手続きがエラーになる場合があると案内されています。
無効化通知書の出力と保管
無効化通知書は、無効化の手続きをした者が登録簿システムからPDFで出力します。事務局から送付される書類ではないため、手続きをした担当者が出力し、報告・監査の時点で提示できるように保管します(出典:J-クレジット制度事務局「よくあるご質問」)。
登録簿の口座を持っていない場合
口座を持たない企業は、J-クレジット・プロバイダー、または代理無効化に対応している購入先の口座保有者に「代理無効化」を依頼できます(出典:J-クレジット制度事務局「クレジットの活用手続き」、同「J-クレジット・プロバイダー」)。購入先に依頼する場合は、その口座保有者の許諾が必要です。販売のみを行い、代理無効化に対応しない保有者もあるため、購入前に次の点を確認します。
- 購入先が代理無効化に対応しているか
- 無効化通知書を、どの名義で、どの方法で受け取れるか
報告制度で使う場合
報告制度に使う場合は、無効化の手続きで、その制度に対応する用途を選択します。たとえば省エネ法の定期報告に使う場合は、該当する用途区分を選び、無効化通知書などの関係書類とともに報告します(出典:J-クレジット制度事務局「クレジットの活用手続き」)。
非化石証書の手続きと使用の証明:対象年度と期限
手続きを行える事業者
非化石証書は、JEPX(日本卸電力取引所)の非化石価値取引市場で取引されます。市場で調達し、使用のための手続きを行うには、JEPXの会員である必要があります。会員には入会金と年会費がかかり、年会費は年度ごとに取引所が定める額です(出典:JEPX「非化石価値取引会員規程」)。会員でない企業は、会員である事業者に調達と手続きを依頼することで、自社でJEPXに加入せずに証書を使用できます。
対象年度と手続きの期限
非化石証書のオークションは年4回実施され、会計年度ごとに区切られます(例:2026年度分は2026年4月〜2027年3月)。JEPXの公表スケジュールでは、2026年度分の口座移動の終了日は2027年6月25日とされています(出典:JEPX「2026年度分非化石価値取引市場スケジュールのご案内」)。報告対象年度に合う証書を、期限内に手続きできるかを確認します。
保有区分と取り消し
JEPXの非化石価値取引システムでは、証書の保有区分が「認定」「調達」「確定」に分かれ、確定後は取り消せないとされています(出典:JEPX「非化石価値取引システム利用ガイド」2026年7月14日改定)。確定の前に、使用する量・名義・対象年度を確定します。
手続き後の証明書
トラッキング付きの非化石証書では、使用を示す証明書に発電所の設備コードなどが記載されます。設備コードから、どの発電設備に由来する電力価値かを確認できます。
グリーン電力証書の償却と温対法での扱い:有効期限の考え方
温対法の報告に使う場合
グリーン電力証書のうち、国の認証を受けた「グリーンエネルギーCO2削減相当量」は、温対法の算定・報告・公表制度で国内認証排出削減量として使えるとされています。使用する場合は、国の口座へ移転する「償却」を申請し、償却後に発行される償却・取消通知書に記載されたIDを、報告様式の該当欄に記入します(出典:資源エネルギー庁「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度 利用の流れについて」)。
報告に使う場合は、報告する前年度の3月ごろから証書発行事業者へ相談するよう、公表資料で勧められています。なお、温対法の算定方法は令和7年度報告から変更されています。詳細は環境省「令和7年度報告からの変更点について」(令和7年3月3日)を確認してください。
有効期限と対象年度
グリーン電力証書には、制度として一律の有効期限を設けていないとする資料があります(出典:グリーン購入ネットワーク「グリーン電力証書」購入ガイドライン)。一方、証書を認証する日本品質保証機構の証書発行ガイドラインでは、購入者が年度をまたいで充当するような発行を認めない趣旨の規定があります(出典:日本品質保証機構「証書発行ガイドライン」)。
どの年度の報告に使えるかを一般論として示した公表資料は確認できていません。実際の利用期間と対象年度は、証書の発行事業者との契約で確認してください。
報告・監査の前に確認すること
報告や監査の前に、少なくとも次の点を確認します。
- 使用する報告・開示の制度(温対法、省エネ法、CDPなど)と、その制度で認められる環境価値の種類
- 報告対象年度と、証書の対象年度・手続きを行った時期が対応しているか
- 手続きが完了し、取り消せない状態になっているか
- 手続き後に残る書類(無効化通知書・証明書・償却・取消通知書)の名義と記載内容が、報告する企業・拠点と一致しているか
- 必要な量(t-CO2またはkWh)を満たしているか
- J-クレジットの場合、用途と目的詳細が報告の内容と一致しているか
OFFSELの支援内容
OFFSELは、非化石証書について、JEPXでの調達から使用の手続き、証明書の納品までを代行しています。複数の顧客の注文をまとめて調達し、各社に割り当てて手続きを行うため、顧客がJEPXに加入する必要はありません。
よくある質問
環境価値の無効化とは何ですか。
使用した証書やクレジットを、登録簿や取引システム上で再利用できない状態にする手続きです。同じ価値を複数の企業が使うこと(ダブルカウント)を防ぎます。制度によって「無効化」「償却」など呼び方が異なります。
無効化は取り消せますか。
J-クレジットは実行後に用途・目的詳細・利用者名などを変更できず、非化石証書も保有区分の確定後は取り消せないとされています。手続きの前に、量・名義・対象年度・用途を確定してください。グリーン電力証書の取り消し可否は、証書発行事業者に確認してください。
無効化通知書はどこで入手しますか。
J-クレジットの無効化通知書は、無効化の手続きをした者が登録簿システムからPDFで出力します。代理無効化を依頼した場合は、通知書の受け取り方法を依頼先に確認してください。
口座を持っていなくても使えますか。
J-クレジットは、J-クレジット・プロバイダーや、代理無効化に対応している購入先に依頼する方法があります。非化石証書は、JEPXの会員である事業者に手続きを依頼すれば、自社でJEPXに加入する必要はありません。
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編集者
imaoka


