Jブルークレジットとは?仕組みや価格、Jクレジットとの違いなどわかりやすく解説

  • CO2削減
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Jブルークレジットは2020年度に始まった制度で、ブルーカーボン生態系の保護を目的のプロジェクトを対象に発行されるカーボンクレジットです。

Jブルークレジットが制定された経緯やカーボンオフとの関係、ブルーカーボン・オフセットの概要や企業の活用事例などを解説します。活用のメリットとデメリットもあわせてご覧ください。

Jブルークレジットとは?

Jブルークレジットは、JBE(ジャパンブルーエコノミー技術研究組合)がブルーカーボン生態系の保護・育成が目的のプロジェクトを対象に発行・販売しているカーボンオフクレジットです

ブルーカーボンは海洋植物(海藻など)が大気から海水に溶けたCO2を吸収し、光合成によって作り出した有機炭素化合物で、代表的なブルーカーボン生態系は藻場・干潟・マングローブ林などです。

地球温暖化を食い止めるためにCO2の排出量を削減あるいは吸収する試みが実施されている中、ブルーカーボンがCO2吸収源として注目され、2020年度にJブルークレジットが初めて認証・発行されました

Jブルークレジットが誕生した背景

日本政府は2050年にカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げ、国内の自治体や企業にも協力を呼びかけています。

カーボンニュートラル実現のためにCO2削減・吸収を積極的に実施する必要がありますが、自力でCO2排出量をゼロにできない場合、他者が行ったCO2削減・吸収で生まれたカーボンクレジットを購入することでカーボンオフできます

Jブルークレジットはカーボンオフとして取引できる制度として2020年に始まりました。

(参考:八千代エンジニヤリング「Jブルークレジットによるカーボンニュートラルへの道

ブルーカーボン・オフセット制度

2050年カーボンニュートラル実現を目標に、ブルーカーボン生態系を活用して吸収源の拡大を図るため、藻場の保全活動などの実施によって創り出されたCO2吸収量をクレジット認証し、CO2削減を実施する企業・団体などとクレジット取引を行うことを「ブルーカーボン・オフセット制度」と呼びます

ブルーカーボン・オフセット制度の試行を実施しているJBEは、ブルーカーボン・オフセット制度のイメージを以下のように表現しました。

(出典:JBE「ブルーカーボン・オフセット制度の試行について」

JBEは、横浜港金沢区鳥浜の藻場を対象にしてブルーカーボン・オフセット制度に関連する一連の手続きを実施し、今後の課題の抽出などを図っています。

コアカーボン原則を遵守

コアカーボン原則は、カーボンクレジット創出に当たり、高品質なカーボンクレジット要件を表す言葉です。ブルークレジットもコアカーボン原則を基準として創出されています。

CO2などの温室効果ガス排出削減量を企業間メインで売買可能にするカーボンクレジットに対して、持続可能な開発とネットゼロ移行の要件が盛り込まれています。高い信頼性と品質を確保する目的で10項目の原則と評価フレームワークが定められました。

温室効果ガスを削減させるためには、従来のカーボンクレジットよりも条件が厳しく設定されているコアカーボン原則に投資するのが早道です。グリーンウォッシュが世界各国で問題視されていることもコアカーボン原則策定を後押ししました。

Jクレジットとの違い

ブルークレジットとJ-クレジットは、どちらもカーボンクレジットの1種で、カーボンオフセットに利用されます。主な違いは、対象となるプロジェクトと発行元です。

ブルークレジット J-クレジット
対象プロジェクト 海洋植物による
CO2吸収量
省エネ・再エネ・植林による
CO2削減・吸収量
発行元 ジャパンブルーエコノミー
技術研究組合
日本政府
対象地域 世界 日本のみ

J-クレジットの対象は、省エネ設備や再生可能エネルギーの導入によるCO2削減量や、植林によるCO2吸収量です。日本政府により認証・発行され、日本国内でのみ取引されます。

対して、ブルークレジットの対象は海洋植物によるCO2吸収量です。世界的な国際機関で認証され、グローバルに取引されています。

Jブルークレジットの活用事例

2020年度にJブルークレジットを購入したのは、住友商事株式会社と株式会社セブン-イレブン・ジャパンと東京ガス株式会社の3社でした。この3社の活用事例を紹介します。

(参考:ブルーカーボンプロジェクト「Jブルークレジットとは?その実施主体、実施実績を簡単に解説」

事例①住友商事株式会社

住友商事・住友商事東北とグループ会社Insight Edge・ナイルワークスは、2050年カーボンニュートラル達成を目標にしています。

CO2排出量削減・CO2吸収と固定と利活用による気候変動緩和のための活動などを推進してきた住友商事グループは、CO2吸収源と注目されているブルーカーボン事業に着手しました。

ブルーカーボン事業においては、藻場の創出と浅海生態系保全活動を実施して持続可能な漁業を行っている岩手県洋野町の支援活動を行っています

洋野町にある増殖溝の藻場に高いCO2固定能力があることに着目し、藻場面積計測・ブルーカーボン量算定・JBEとの連絡調整などを行い、洋野町のクレジット認証取得を支援していました。

(出典:J-STAGE「浅海域における年間二酸化炭素吸収量の全国推計」

これらの活動を評価された結果、2022年11月に令和2年度のJブルークレジット制度試行以来最大級となる3,106.5tCO2のJブルークレジット認証を取得しています

住友商事グループは、洋野町と町内3漁協がクレジット販売で得た資金を気候変動対策に活用するために設立した「洋野町ブルーカーボン増殖協議会」に賛助会員として参加し、さらなる支援を行うと表明しました。

(参考:住友商事「CO2の新たな吸収源、ブルーエコノミー事業の推進」

事例②株式会社セブンイレブン・ジャパン

セブン-イレブンは、一般財団法人セブン-イレブン記念財団を通じ、2011年6月から東京湾再生アマモプロジェクトを行っています。これは、アマモがもたらすCO2削減・水質浄化効果の高さに着眼して東京湾のアマモ場再生を促進する計画です。

2013年9月には国土交通省港湾局が実施している東京湾UMIプロジェクトに協力して横浜港のアマモ場の再生活動も開始しました。

セブン-イレブンの東京湾再生アマモプロジェクトの2014年から2019年までの活動内容は以下の通りです。

実施年月 場所 活動内容
2014年6月 横浜港ベイサイドマリーナ アマモの花枝採集/アマモのレクチャーと海洋生物の観察
2015年6月 横浜海の公園 アマモのレクチャー/アマモの花枝採集/海の生き物観察
2015年8月 横浜漁協栄支所 アマモの種子とり
2016年5月 横浜海の公園 アマモの花枝採集
2017年5月 横浜海の公園 アマモの花枝採集/地引網を行い海洋生物の観察
2018年6月 横浜海の公園 アマモの花枝採集/地引網を行い海洋生物の観察
2019年6月 横浜海の公園 アマモの花枝採集/地引網を行い海洋生物の観察

2021年3月にはJブルークレジット・カーボン・オフセットに参画することを表明しました

(参考:株式会社セブン&アイHLDGS「セブン-イレブンはアマモ場づくりを推進しています 『Jブルークレジット・カーボンオフセット』に参画」

事例③東京ガス株式会社

環境・社会に貢献する活動「森里海つなぐプロジェクト」を実施している東京ガスは、2017年から金沢八景-東京湾アマモ再生会議が行っているアマモ場再生活動に参加しています。2021年3月にはJブルークレジット・カーボンオフセットに参加し、Jブルークレジットを購入してカーボンオフセットを達成しています。

アマモ場再生活動には東京ガスの900人もの従業員とその家族が参加しました。

森里海つなぐプロジェクトの主な活動内容はこちらです。

開催時期 活動内容
毎年6月 アマモの花枝採取
毎年7~10月 アマモの花枝熟成
毎年11月 アマモの種まき
2022年9月 設立5周年を機にNPO25団体が参加するNPO座談会を開催
2023年2月 埼玉県さいたま市の県営大宮公園舟遊値で浅場づくりを開催
2023年5月 横浜市金沢区で日本テレビグループと共同でアマモ場再生活動を実施

毎年6月に採取したアマモの花枝を水槽に入れて数ヶ月熟成させて11月に種を撒くという流れを繰り返すことにより、アマモ場再生につなげています。

2019年10月には東京湾大感謝祭2019の席上で「第3回東京湾海の環境再生賞(みなと総合研究財団理事長賞)」を受賞しました

(参考:TOKYO GAS「今日は「世界海洋デー」◆注目のブルーカーボン・クレジット」
(参考:TOKYO GAS「森里海つなぐプロジェクト」

Jブルークレジットを購入するメリット・デメリット

Jブルークレジットを活用する場合のメリット・デメリットを理解しておきましょう。まずは、購入する側のメリットについて解説します。

メリット

まずはメリットについて紹介します。

  • 温室効果ガスの間接的な削減する
  • 環境保全の取り組みを支援する
  • 温室効果ガス削減・CO2削減などの活動のPRなどにより企業価値が向上する

ブルークレジットを購入すると、他のカーボンクレジット同様、自社の取り組みで削減しきれなかった温室効果ガスをオフセットすることができます。

また、海洋植物や沿岸の環境保護に特化した環境保全の取り組みを支援することができます。特に、海や漁業との繋がりがある企業は、購入することで自社の事業を守ることにも繋がるでしょう。

Jブルークレジットの利用をPRすることで、CSRを果たしているとアピールでき、企業イメージも向上します。

デメリット

  • 認証量が少ない
  • 価格が高い

2020年にJBEがJブルークレジットの認証を開始後、J-クレジットが年100万t認証されているのに対し、Jブルークレジットは少量しか認証されていません。

しかし、100社以上の企業がJブルークレジット購入に殺到し、J-クレジットの9倍に及ぶ価格がつきました。2021年度の1tのCO2売却額が平均72,816円、2022年度の売却額は78,036円です。

これほどの高値がついていることが活用の最大のデメリットですが、JBEは沖合に大規模な藻場を作る計画を立案し、Jブルークレジットの大量創出によって低価格化を実現しようとしています。遠くない未来にこのデメリットは払拭されるかもしれません。

Jブルークレジットを創出するメリット・デメリット

Jブルークレジットは創出する側にもメリットがあるようにシステムが構築されています。また、いくつかデメリットもあります。

メリット

創出する側のメリットは以下の通りです。

  • 資金面の支援を受けられる
  • ブルーカーボン活動の認知度が向上する
  • 資金面や人材面の状況が改善する

海洋植物の生態系保護や沿岸部の環境保全の取り組みが、Jブルークレジットとして認証されれば、プロジェクトに使用できる資金が調達可能です。

Jブルークレジットが企業に広まることでブルーカーボンについての認知度が高まり、活動の認知度も向上するでしょう。

すでに注目を集めているブルーカーボンですが、さらに世の中に広まれば、興味を持つ人も増え、活動に必要な資金・人材も集まりやすくなります。

デメリット

  • プロジェクトに専門知識が必要
  • コストが高い
  • 自然災害のリスクがある

ブルーカーボン活動がJブルークレジットとして認証されるためには、プロジェクトの計画や認証手続きなどの専門知識がいるため、人材・人件費の確保が必要です。

また、プロジェクトは1度実施するだけでなく、長期に渡って維持管理しなければならないため、初期コスト・ランニングコストがかかってしまいます。

台風などの自然災害で、プロジェクトの効果が想定を下回ってしまう可能性もあります。

Jブルークレジットの認証・発行の流れ

Jブルークレジットの認証から発行までの流れは以下の通りです。

作業者 作業内容
申請者 ①事務局に事前相談を行う
②プロジェクトがJブルークレジットの対象に該当するかを確認
③プロジェクト実施場所・関係者を把握して調整
④CO2吸収量の調査
⑤申請書作成と提出
審査認証委員会 ⑥申請者への問い合わせ/現地ヒアリング(申請者も立ち会う)/申請書・添付資料の修正依頼
⑦申請内容の審査を行う
運営事務局 ⑧クレジットの認証と登録
⑨クレジット購入者の公募
⑩クレジット譲渡の手続き
クレジット活用者 ⑪オフセットの手続き

認証の対象になるのは、プロジェクトの対象生態系の創出や回復や維持などによって1年間に吸収・貯留したCO2吸収量から、プロジェクトを実施していない場合のCO2吸収量を差し引いた量です。JBEは、申請は1年単位で実施してほしいと呼びかけています。

(参考:JBE「Jブルークレジット®認証申請の手引き」

Jブルークレジットの購入方法

Jブルークレジットは、JBEが、前年度に発行されたJブルークレジットの一部を、Jブルークレジット購入申込者公募規程に基づいて購入申込者の公募を実施しています。2023年の公募期間は4月21日から6月21日まででした。希望者が誰でも購入を申し込めるのではなく、JBEが定めた参加資格を満たした場合のみ購入できます。

国内に本店または事業所を有する法人(内国法人)というのが1つ目の公募参加資格なので、個人事業者を含む個人は購入を申し込めません。

公募参加資格条項は7つあるので、購入したい場合はJBEの公式サイトで内容を確認しておきましょう。

(参考:JBE「令和5年度(2023年度)第1回Jブルークレジット®購入申込者公募」

まとめ

ブルークレジットとは、海洋植物の吸収する温室効果ガスを対象にしたカーボンクレジットです。

購入者は海の環境を守る活動に出資しながらカーボンオフセットができ、創出者は環境保全の取り組みへの資金を得られます。

まだ発行量が少ないため、J-クレジットよりも購入が難しく高い価格がついていますが、認証と発行を実施しているJBEは現状より安く購入できる方法を模索しています。

始まったばかりの制度ですが、人気が高いので購入希望者は増える一方です。購入条件を確認した上で購入を検討してみましょう。

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    編集者

    maeda

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