企業にできるCO2削減の取り組み事例を紹介!メリット・デメリットも解説

企業にできるCO2削減の取り組み事例を紹介!メリット・デメリットも解説

CO2を削減するための活動が一層重要視されるようになっています。CO2を減少させる取り組みへの関心度が高まった背景には何があるのでしょうか?

CO2削減のために定められた制度・削減に向けて企業が取り組むときの流れ・企業の取り組み事例などを解説します。

企業がCO2減少に取り組むメリットやデメリットも併せてご覧ください。

CO2削減の取り組みが注目される背景

2023年夏に世界各国で観測史上最も高い気温を記録するなど、地球温暖化現象が深刻化すると共に、日本・世界で地球温暖化の最大の原因とされているCO2を削減するための取り組みが実施されるようになりました。代表的な取り組みを見ていきましょう。

SDGs・RE100など世界的な脱炭素への取り組みの推進

CO2の削減を目標に、2015年9月の国連サミットで17項目の行動指標が定められました。これがSDGsです。

SDGs制定を機に、世界の約380社が参画する国際的なイニシアティブ・RE100が開始されています。RE100の目標は、事業活動で使うエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することです。政府ではなく民間企業が取り組む目標に日本企業70社以上が参加しました。

世界各国の政府・企業が脱炭素化を掲げて活動し「カーボンニュートラル実現に向けて取り組む」と表明しています。SDGsやRE100の取り組みの姿勢・実績などを公式サイトで公開する企業が増えた結果、脱炭素を強く意識する企業が増え続けています。

日本も2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言

(出典:内閣官房「成長戦略会議(第6回)配付資料」

上の図は2020年12月に開催された成長戦略会議の資料になった、2050年カーボンニュートラルへの転換イメージ図です。

日本政府は、2020年10月の内閣総理大臣の所信表明演説で「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言しました。それに続いて、2021年4月の地球温暖化対策推進本部と米国主催の気候サミットで「2050年目標と整合的かつ野心的目標として、2030年度に2013年度比で温室効果ガス46%削減を目指し、さらに50%の高みに向けた挑戦を続ける」と表明しています。

(参考:経済産業省・資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組」

「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の策定

2050年カーボンニュートラルを宣言した年の12月に策定されたのがグリーン成長戦略です。グリーン成長戦略は、カーボンニュートラルを目指す企業を支援して「経済と環境の好循環」を構築する目的で、経済産業省と関係省庁が連携して策定しました。様々な分野でのイノベーション実現と革新的技術の社会実装を達成し、2050年のカーボンニュートラルを実現すると共に国民生活を豊かにするための戦略です。

グリーン成長戦略において経済産業省が設定した重要な14分野は以下の通りです。

(出典:内閣官房「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

産業とエネルギーに限定せず、あらゆる分野をフォローする戦略で、カーボンニュートラル達成に大きく貢献する要素とされています。

「改正温対法」の成立

温対法(地球温暖化対策推進法)は、1998年に成立し、2022年までに8回改正されています。2021年と2022年の法改正のポイントを表で見てみましょう。

2021年の法改正 ・2050年カーボンニュートラル宣言を法律の基本理念に追加
・企業の排出量情報をオープンデータ化・デジタル化する
・地域の脱炭素化に連なる事業の推進のための認定制度・計画を新設
2022年の法改正 ・脱炭素事業を資金支援する「株式会社脱炭素化支援機構」設立
・地方公共団体対象の財政上措置に関連する規定追加

2021年は脱炭素社会を目標にした政策のスムーズな施行、2022年は脱炭素化を目指す事業推進を目的に改正・成立しています。

大手企業による取引先企業へのCO2削減の要求強化

大手企業が取引先企業にCO2の削減を強く求めるようになったこともニュースになりました。

アメリカのApple株式会社は、2021年3月、同社に納入する製品生産に使用する電力全てを再生可能エネルギーでまかなうと表明した取引先企業が110社を超えたと公表しています。Appleと契約している日本企業数社も再生可能エネルギーへの切り替えを表明しました。

トヨタ自動車も、直接取引を行っている世界の主要部品メーカーに、2021年のCO2排出を前年より3%減らすことを要求しています。

企業がCO2削減に取り組む際の流れ

企業がCO2を削減する取り組みの流れを解説します。脱炭素経営に取り組みたい企業は、取り組みの流れをおさえておきましょう。

①現状のCO2排出量を把握する

最初におさえておきたいのは、現時点で排出しているCO2の量です。計算方法の種類を以下に記載します。

  • 原油換算による計算
  • CO2換算による計算
  • 電気使用に伴うエネルギー起源CO2排出量算定
  • サプライチェーンの排出量算定

これらの計算・算定を実施し、正確な排出量を政府・取引先企業などに提出できる体制を整えると共に、公式サイトなどを通して顧客・取引先に脱炭素経営のPRを行っていきましょう。

②再エネ導入によりCO2を削減する

再生可能エネルギーの導入でCO2の削減を実施するのも企業に求められている取り組みです。RE100に加入する日本企業は60社を突破し、さらに増え続けています。

多くの企業は以下のような方法で再生可能エネルギーを導入しています。

  • 電力切り替え
  • 発電施設設置
  • グリーン電力証書利用

電力の切り替えには電力プランの契約変更手続きが必要で、発電施設の設置には設置と設置場所の確保などのコストがかかります。

そのため、電力プラン切り替えや再生可能エネルギー発電設備導入が要らないグリーン電力証書を利用する企業が多いですが、法的な証明が担保されていないグリーン発電証書は取引額が変動するという短所があるので、可能なら電力切り替えと発電施設の設置を行いましょう。

③省エネによりCO2を削減する

省エネでのCO2削減の取り組みも多くの企業が実施しています。ある程度の資金が必要ですが、発電施設の設置より支出を抑えるのが可能です。企業が実施している省エネ対策の中で特に多いのは以下の5つです。

  • 省エネ機器を利活用
  • 電気の消費を控える
  • エアコンの設定温度調節
  • 間引き照明の導入
  • 蛍光灯・LED電球への切り替え

空調の使い方の工夫や服装の工夫なども実施率が高いです。

④カーボンオフセットを実施する

排出されたカーボン(CO2)をオフセット(埋め合わせ)するという取り組みは1997年にイギリスのNPO団体が開始し、現在はアメリカ・ヨーロッパ・日本など世界で実施されています。代表的なカーボンオフセット方法を見ていきましょう。

オフセット製品とサービス 製品・サービスの製造・輸送・販売・使用・廃棄の過程で排出される温室効果ガスのオフセット
会議・イベントのオフセット 会議・スポーツ大会・コンサートなどのイベントで出た温室効果ガスのオフセット
クレジット付きの商品・サービス 消費者の日常生活で生じた温室効果ガスのオフセット
寄付型オフセット 製造者・サービス提供者・イベント主催者などがクレジット購入資金を利用者に募集してクレジットを購入
自己活動オフセット 個人・組織の事業活動で発生した温室効果ガスの直接オフセット

(参考:Mitsui「カーボン・オフセットとは?必要性から企業の取り組み事例までを紹介」

企業ができるCO2削減の取り組み事例

ブランド総合研究所が2022年7月に実施した「第3回企業版SDGs調査2022」でトップ3にランクインしたのはトヨタ自動車・イオン・ユニクロでした。この3社とCO2削減取り組みが注目されている2社の事例を解説します。

企業の取り組み事例①トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車は、2015年10月に持続可能な社会実現に貢献するための計画「トヨタ環境チャレンジ2050」を公表しました。車のマイナス要因をゼロに近づけながら社会にプラスをもたらすことを目標に、6つのチャレンジを掲げています。

チャレンジ名称 目標
1 新車CO2ゼロチャレンジ 2010年度比で2050年までにCO2を90%減らす
2 ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ エコ素材を使う/リサイクル技術開発/部品を長期間使用する
3 工場CO2ゼロチャレンジ 工場からのCO2の排出をゼロにする
4 水環境インパクト最小化チャレンジ 水使用量最小化/排水管理
5 循環型社会・システム構築チャレンジ リサイクル技術研究・開発/電池の再資源化
6 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ 国内外19ヵ所で自然と共生できる工場実現を目指す

(参考:TOYOTA「トヨタ自動車、「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表」

企業の取り組み事例②イオン株式会社

イオンは、イオン温暖化防止宣言を2008年に行い、公式サイトで脱炭素ビジョンを公開しています。顧客の脱炭素型ライフスタイル転換を商品・サービスで展開すると宣言すると共に、以下の目標を掲げています。

店舗 店舗で排出するCO2などを総量でゼロにする
商品・物流 事業過程で生じるCO2などをゼロになる努力をする
中間目標 2030年までに国内店舗で使用する電力の50%を再生可能エネルギーに切り替える

イオンのCO2排出量の約90%が電力由来だと分析し「店舗の使用電力を削減・再生可能エネルギー転換をする」と表明しました。

1992年に久居店で「ふるさとの森作り」を実施、店舗を拠点に植樹活動を行い、2021年2月までに1,222万本以上植樹を達成しているほか、1991年から買い物袋持参運動と店頭資源回収を実施し、食品廃棄物を減らし、食品リサイクルループ構築などを行っています。

(参考:イオン「イオン 脱炭素ビジョン」

企業の取り組み事例③株式会社ユニクロ

持株会社・ファーストリテイリングが2020年1月にファッション業界気候行動憲章に署名したユニクロが実施している環境負荷提言のための取り組みの中で、CO2の削減に関連する取り組みは以下の通りです。

原材料調達 NGO「ベター・コットン・イニシアティブ」に加盟/レーヨン原料工場までのトレーサビリティ確保
化学物質管理 生産プロセスでの有害化学物質排出ゼロ/素材工場の排水基準の遵守
再生ポリエステル素材使用 回収ペットボトルが原材料の再生ポリエステル素材を使用
店舗照明のLED化と太陽光パネルの設置 2020年度に店舗のLED導入率93.8%を達成/台湾の3店舗に太陽光パネル設置
物流効率向上 折りたたみコンテナによって段ボールを大幅に減少/輸送効率化
使い捨てプラスチック使用量削減 環境配慮型素材への切り替えを実施
RE.UNIQLO 回収した服を新製品にリサイクル

(参考:ユニクロ「環境負荷低減への取り組み」

企業の取り組み事例④ヤマトホールディングス株式会社

ヤマトホールディングスは2050年にGHG排出量実質ゼロを長期目標に掲げ、以下の取り組みを実施しています。

取り組み 実施内容・実績
低酸素技術導入・輸送効率向上 事業所・輸送で低酸素技術を導入/LED導入/モーダルシフト推進
低酸素車両導入の推進 2030年までに電気自動車20,000台導入/環境適応車両に切り替え
再生可能エネルギー利用 再生可能エネルギー由来の電力利用を推進し再生可能エネルギー由来の購入電力のみで55,860t-CO2位上削減
低酸素商品・サービス拡充 顧客の利便率向上と再配達の抑制・GHG排出量の削減を両立できる商品・サービス拡充を進行中

また、ヤマト運輸の八幡営業所で2023年9月から再生可能エネルギー由来電力を使ったエネルギーマネジメントを実施するモデル店として本格的に稼働しています。

(参考:ヤマトホールディングス「エネルギー・気候 ~気候変動を緩和する~」

企業の取り組み事例⑤佐川急便株式会社

佐川急便が物流の工程などでCO2の排出を減らすために実施しているのは、以下の取り組みです。

環境対応車導入 1990年代に導入を開始し2022年度末までに16,802台を保有
FCVトラック・EVトラック導入 2023年度からFCVトラックとEVトラックしてCO2排出量を削減
サービスセンター設置 全国320ヵ所以上で1,500台相当のトラックの使用を抑制
モーダルシフト推進 地域の輸送事業者と連携して貨客混載を実施
大型集約施設運営 全国22ヵ所の施設で環境負荷が少ない輸送システムを構築
館内物流システム トラック利用台数減少によりCO2排出を抑制
エコ安全ドライブ 急発進・急ブレーキ抑制で事故・燃料消費ロス・CO2排出を低減
太陽光発電システム設置 2023年度から23ヵ所の営業所屋上に太陽光発電システム設置
LED照明導入 386ヵ所の営業所・大型物流施設に導入

(参考:SAGAWA「脱炭素社会の実現に向けて」

企業がCO2削減に取り組むメリット

企業のCO2削減・脱炭素経営には数々のメリットがあります。代表的な利点を見てみましょう。

企業イメージアップにつながる

「CO2の削減に取り組んでいる企業」というイメージは、CO2の削減の必要性を感じている消費者・取引先に与えるイメージを向上させる効果が期待できます。自力での脱炭素活動に満足できない消費者に「製品を買うことでCO2の削減に貢献できる」とPRすることで購入意欲を高めることも可能です。

脱炭素への関心が高い従業員の勤労意欲を高める効果もあります。

また、ESG投資が活発化している昨今では、脱炭素の活動を企業選びの基準にする投資家が増えているため、投資家に対するイメージアップにもつながります。

エネルギーコストの削減につながる

CO2を削減することにより、エネルギーコストを節約できるのも大きな利点です。エネルギー効率を改善すれば、電力・燃料の使用量を減らしてコストを減らせるからです。照明・冷暖房設備の効率的な利用・機械の運転条件を最適化することでも、エネルギーコストを節約できます。

再生可能エネルギーへの切り替えも、長期的に見るとエネルギーコスト節約になります。同時にエネルギーコストの安定化につながるのです。

税制優遇や助成金が活用できる

CO2の削減に際して、以下の税制優遇と助成金を活用できるメリットもあります。

税制優遇 ・CN税制(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)
・DX税制(デジタルトランスフォーメーション投資促進税制)
環境省の補助金 ・環境金融の拡大に向けた利子補給事業
・脱炭素社会の構築に向けたESGリース促進事業
・民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
・脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業 など
経済産業省の補助金 ・T導入補助金(通常枠)
・省エネ補助金
・CEV補助金
・太陽光発電導入補助金 など

(参考:タンソチェック「脱炭素に向けて利用可能な税制とは【第4章-2】」
(参考:タンソチェック「【2024年】令和6年・令和5年CO2削減・脱炭素(GX)の補助金一覧を紹介

企業がCO2削減に取り組むデメリット・注意点

企業のCO2削減取り組みにはデメリットや注意点もあります。特に問題視されているデメリットをご覧ください。

現状のCO2排出量を計算するのが難しい

脱炭素経営に乗り出しかねている企業が理由に挙げることが多いのは、CO2の排出量計算の難しさです。CO2の排出量計算の難易度はそれほど高くないのですが、多くの企業がサプライチェーンの排出量計算を大きな障害に感じています。

自社が排出したCO2をScope1 (直接排出)とScope2(間接排出)とScope3(サプライチェーンからの排出)に位置づけていますが、このScope3の計算が非常に難しいのが現状なのです。

設備の導入や発電にコストがかかる

設備導入と発電の費用がかさむのも厳しいデメリットです。発電設備などの設置費用は特に悩みの種になっています。

しかし、事業で再生可能エネルギーを活用する際に優遇税制制度や補助金が利用できるようになっているので、このデメリットは払拭可能です。長期的な視点では従来よりもコストが安くなるという長所もあります。

短期的な利益には繋がらない

CO2の排出量を減らす取り組みが企業の短期的利益と一致しないことが多いのも、短期的な利益を重視する中小企業が脱炭素経営に踏み切れない理由に数えられています。このデメリットを乗り越えるため、脱炭素と利益のバランスを考慮した取り組みを考案する必要があります。

(参考:HITACHI「サプライチェーン脱炭素支援ソリューション」

まとめ

地球温暖化問題の解決やカーボンニュートラル達成を実現させるには、企業のCO2削減のための努力が不可欠です。

脱炭素化の取り組みにはデメリットもありますが、それ以上に得られるメリットが多いので、当面の問題に対応しながらより良い対応策を練り上げていくことで企業としての利益を獲得すると共に地球環境の改善を図りましょう。

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