京都議定書とは?採択された背景と京都議定書とは?企業ができる温室効果ガス削減のための取り組みを紹介
- CO2削減
1997年のCOP3で選定された京都議定書が取り上げられた背景やその後の流れなどを解説します。先進国が抱いた不満や指摘した問題点、議定書の達成状況、パリ協定の合意と発効までの流れを振り返っていきましょう。
京都議定書とパリ協定にどのような違いがあるのか、京都メカニズムとはどのようなものなのかもご確認ください。温室効果ガス削減に向けた企業の取り組み事例も紹介します。
目次
京都議定書とは?
京都議定書は、1997年に京都で開催されたCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)で取り決められた国際条約です。この協約において、世界初となる地球温暖化問題に取り組むための国際的条約が取り交わされたのでした。
この条約では、条約に参加した先進国に対して「第3条で規定した第一約束期間中(2008年から2012年まで)に温室効果ガスの排出量を1990年よりおよそ5%減少させること」を要求しました。国ごとに求められる条件では、日本は6%、アメリカは7%、EUは8%を削減すると公表しています。
参加国は、自国に求められている目標を実現すると同時に、森林・農地などで吸収される炭素を吸収源としてカウントすることや京都メカニズムの利用が認められました。
目標を達成できなかった国には罰則が課せられる条件も盛り込まれた条約でした。
京都メカニズムの概要については後の章で解説します。
(参考:WWFジャパン「京都議定書とは?合意内容とその後について」)
京都議定書が採択された背景と採択後の流れ
京都議定書が取り上げられた背景とその後の流れを解説します。議定書が取り決められたきっかけから見ていきましょう。
1992年の世界サミット
1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで国連会議が開催されました。正式名称はUNCED(環境と開発に関する国際連合会議)ですが、世界サミットまたは地球サミットという名称で呼ばれています。
当時の国連加盟国のほとんどが参加し、環境保全及び持続可能な開発目標についての議論が展開されました。
世界サミットにおいては、5つの条約と宣言が発表されています。
環境と開発に関するリオ宣言 | 国連人間環境会議で採択されたストックホルム宣言の発展を目標に導入 |
気候変動枠組条約 | 気候変動を食い止める目的で作成された温室効果ガス削減に向けた国際的枠組 |
生物多様性条約 | 生物多様性保存及び遺伝子資源保護のための条約 |
森林原則声明 | 現存する森林保護・育成を目指すために宣言された声明 |
アジェンダ21 | 持続可能な社会実現を目標として、森林・有害物質の管理や砂漠化の阻止などの環境問題解決のために活動 |
国連気候変動枠組条約
国連気候変動枠組条約は、1992年5月に国連総会で合意に至り、1994年に発効した国際的枠組の条約です。地球温暖化防止のため温室効果ガス濃度を安定化させることを究極の目的に掲げています。
参加した国に課せられた義務は以下の通りです。
参加国(開発途上国含む)の義務 | 温室効果ガスの排出及び吸収の記録を作成して定期的に更新 |
具体的な対策を含む計画作成及び実施 | |
目録・実施予定または実施した活動に関連する情報を締約国会議に送付する | |
先進国の義務 | 温暖化を防止するための政策措置を取る |
締約国会議に温室効果ガス排出量などの情報の報告を行う | |
途上国に資金の援助や技術提供などの支援を実施する |
(参考:JCCCA「気候変動枠組条約」)
京都議定書に対する先進国の不満
参加した先進国の中で、アメリカなどが規定された内容に対する不満を述べ、参加を拒否するという一幕もありました。先進国が異議を唱えたのは、温室効果ガスの削減を要求されたのが先進国だけで、開発途上国(中国やインドなど)には削減する義務を全く求めなかったからです。
開発途上国に義務付けを行わなかった理由は「共通だが差異ある責任」という原則を反映させたからでした。「全ての国が共有すべき地球温暖化問題だが、先進国がリードして対策するべき」というのがこの原則の意味です。
温室効果ガス排出量が多いアメリカの離脱によって「55ヶ国以上が参加する」という発効条件を満たせないという問題が発生しましたが、ロシアが2004年に参加したことで条件を果たせたため、2005年に発効されました。
しかし、第一約束期間の目標を実現できた日本も、アメリカと同じ内容で不満を訴え、第二約束期間(2013年~2020年)には参加していません。
京都議定書の達成状況
(出典:国立環境研究所「附属書I国の京都議定書(第一約束期間)の達成状況」)
2008年から2012年の第一約束期間で、目標を達成した先進国は23カ国の中で12カ国でしたが、京都メカニズムクレジットと森林管理における吸収量を加えると、加盟した全ての国が目標を達成しています。
欧州連合は共同で達成のレベルに到達しました。スロベニア以外の東欧諸国12カ国は、京都メカニズムクレジット及び森林などの吸収源を加えない状態で排出目標を達成しています。
(参考:国立環境研究所「附属書I国の京都議定書(第一約束期間)の達成状況」)
2015年にパリ協定が制定
地球温暖化問題が年ごとに深刻化する中、パリで2015年11月に開かれたCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)においてパリ協定が合意され、翌年に発効しました。
パリ協定では「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して2℃より低いという状態を保持しながら、1.5℃に抑えるよう努力する」という目的が掲げられています。パリ協定は、先進国から抗議を受けた先進国と途上国の不公平な条件を撤廃し、全ての国の共通目標として規定されました。
京都議定書以降に開催されたCOPでは、挙げられた条約内容が参加国の同意を得られなかったために国際的目標の採択に至りませんでしたが、ようやく合意に達したのがパリ協定なのです。
京都議定書とパリ協定の違い
京都議定書以降18年ぶりに各国で合意され、発効に到達したパリ協定は、京都議定書が基盤になっていることもあり、同時に話題になることも多いため、混同されることもあります。この2つの条約にどのような違いがあるのかを表で見てみましょう。
京都議定書 | パリ協定 | |
対象期間 | 2008年~2020年 | 2020年以降 |
対象国 | 先進国のみ | 加盟した国全て |
目標達成義務 | 未達成の国に罰則がある | なし |
目標を達成する義務を定めなかったパリ協定に対して「条約として不完全」という指摘もありました。
京都議定書における”京都メカニズム”とは
京都メカニズムは、京都議定書の目標を叶えるために採用された制度で「共同実施」「クリーン開発メカニズム」「排出量取引」という3つのシステムがあります。
その中の「排出量取引」で、他国が実施した温室効果ガス排出削減量を自国の目標に換算し、自国で目標を達成できない際に他国で実施された排出削減量を取引することで目標を達成しやすくしました。
クレジット発効までに要する期間が長いという問題点もありましたが、京都メカニズムなどを取り入れた結果、参加した国の全てが目標を成し遂げています。
温室効果ガス排出量を減らすために企業ができる取り組み事例
温室効果ガスの排出量を削減するために多くの企業がさまざまな取り組みを実施しています。企業が取り組める温室効果ガス削減対策の事例を見ていきましょう。
再エネ電気への切り替え
現状の化石燃料由来のエネルギーを小売電気事業者が提供している再エネ電気に切り替えることにより、温室効果ガス排出量の大幅な削減が可能です。再生可能エネルギーの種類は以下の通りです。
(出典:環境省「再生可能エネルギー導入方法」)
環境省では、再エネ電気切り替えプランの手順について、以下のように案内しています。
- 再エネ電気のプランを実施する事業者を選ぶ
- 新規契約した事業者に契約を申し込むと共に従来の電力会社を解約する
- 再エネ利用開始
再生可能エネルギーに切り替えることによって得られるメリットはこちらです。
- CO2の排出量を実質ゼロにできる
- 発電設備設置をしなくても契約の切り替えのみで再エネ利用が可能
- 契約した電力会社によっては切り替え前と同等の料金で切り替えられる
- 電気自動車導入の際に再エネ100%の電気契約をすれば環境省から補助金を支給される
- トラッキング情報がある非化石証書仕様によって再エネ発電所の紐づけが可能
- 企業が環境対策で社会に貢献しているとPRできる
電力会社が提供している電気の構成は火力・原子力・水力・FIT電気などで、火力エネルギーを利用する場合には非化石証書を付与することで実質ゼロにします。
(参考:環境省「再生可能エネルギー導入方法」)
再生可能エネルギーの導入
再エネ導入については、電力会社を変更するほか、自社の屋上に太陽光発電設備を設置して自家発電を行うという方法も実施されています。自家消費型の太陽光発電には以下のメリットがあります。
- クリーンエネルギーである
- 非常用電力として災害時に使用可能
- 電力コストを削減できる
- 再エネなので補助金制度を利用可能
- PPA利用によって初期費用を負担しなくて済む
太陽光発電を導入する場合初期費用がかかるというデメリットがありますが、補助金制度を利用することで支出をカバーできます。
また、会社の敷地を提供し、事業者が保有する発電設備設置を行うPPAを利用することで、太陽光発電を初期費用を負担せずに導入できるのも、非常に大きな利点です。
投資負担0で太陽光発電設備の導入が可能なオフグリッド電力サービスを実施しているVPPJapanなどの例もあるので、導入費用を節約する方法を模索してみましょう。
省エネ設備の導入
省エネ設備を導入することでも、温室効果ガス排出量を大きく減らせます。特に、施設のエネルギー消費量の20%から30%を占めている照明のエネルギー消費量を減らせば、かなりの温室効果ガス排出が減少するのです。
近年、省エネ設備として、企業だけではなく一般家庭にも普及しているのはLED照明です。オフィスや店舗の照明をLED照明に切り替えることによってどれほどの省エネ効果があるのかを表で見てみましょう。
設置場所 | 切替前の例 | 切替後の例 | 省エネ率 |
店舗・施設など | JDR(ダイクロハロゲン) 75形スポットライト | LEDスポットライト100形(ダイクロハロゲン75形相当) | 約84% |
オフィス・会議室など | FLR40形2灯用逆富士型器具 | 直管LED40形2灯逆富士型器具 | 約58% |
LED一体型器具 | 約67% | ||
LED一体型器具+明るさ・人感センサー付 | 約79% |
こちらの表内の照明は一例ですが、LED照明への切り替えや人感センサーの導入により、温室効果ガス排出量削減と省エネを実現できるのは間違いありません。
(参考:COOL CHOICE「省エネしながらより快適に!建物のエコ照明化」)
カーボンオフセット
削減できない温室効果ガスを森林保護やクリーンエネルギー事業から排出権を購入することによって埋め合わせるカーボンオフセットも、多くの企業が実施しています。
企業のカーボンオフセット手順を以下に示します。
- 企業のCO2排出量を把握する
- CO2排出量の削減を実施する
- 削減しきれないCO2排出量を算定する
- J-クレジットなどを購入する
企業がオフセットを実施するのではなく、企業が消費者にオフセットを働きかけることでもカーボンオフセットを達成できます。
消費者にクレジットが付いた製品の販売やサービスの提供を行い、消費者のカーボンオフセットを支援するタイプの取り組みです。
環境を改善したいという意識が世界中に広がっている現在、環境対策に取り組みたいと考える消費者が増えた結果、カーボンオフセットに貢献できる製品の人気が上昇しており、企業のイメージアップ及び利益につながるというメリットもあります。
カーボンオフセットに貢献できるプライベートブランドを立ち上げる企業も増え、オフセット製品への注目度が高まっています。
まとめ
京都議定書について先進国の不満が噴出するという事態が発生しましたが、京都メカニズムなどの導入により、第一約束期間の温室効果ガス削減目標を参加国全てが達成するという実績を挙げています。
京都議定書の問題点を踏まえて規定されたパリ協定ではさらに大きな成果を達成しました。この先のCOPでは、これまでの経験を活かしてこれまで以上に地球環境改善目標を掲げ、実現できるのではないでしょうか。
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編集者
pn.garrden