REC(Renewable Energy Certificate)とは?ボランタリークレジットと発行されている理由・購入するメリット
- CO2削減
REC(Renewable Energy Certificate・以降本文中はRECと記述します)は海外で発行されている環境証書ですが、日本国内でも活用する企業が増えてきています。
RECの発行国・対象とされる発電設備・使用期限などの情報をチェックしてみましょう。
RECの購入の際に期待できるメリット、逆に問題視されるデメリットなどもあわせてご覧ください。
目次
REC(Renewable Energy Certificate)とは?
国内で環境証書が取引されるようになると同時に、海外の環境証書やボランタリークレジットの取引も活性化しています。その中でも期待されているのがRECです。
RECは国際的に使用されている環境証書I-REC(International Renewable Energy Certificate)と共通の目的と用途で発行されていますが、対象国はアメリカとカナダとメキシコの一部に限られています。その活用方法の詳細は記事後半で解説します。
RECには以下の2つの市場があります。RPS対象事業者の目標達成のための市場がCompliance RECで、消費者が自主定期に再生可能エネルギーの価値を取引するための市場がVoluntary RECで、標準化機関や対象電源などが異なります。
以下の表にCompliance RECとVoluntary RECの概要を記します。
Compliance REC | Voluntary REC | |
対象国 | アメリカ・カナダ | アメリカ・カナダ・メキシコの一部 |
発行者 | 州または地域の発行者 | CRS(Center for Resource Solutions) |
対象となる発電設備 | 発電する州が定める | 転開始から15年以内(含オンサイト・長期契約は30年以内) |
電源特定の可否 | 可能 | |
国際イニシアチブの活用可否 | 発行国のCDP・RE100・SBTなどが活用可能 | |
使用期限 | 州により異なる | 発電の前年7~から発電の翌年1~3月まで |
証書が発行されるのは1MWhごとで、当事者の間で相対取引を行うシステムが主流です。州・地域によって証書の管理システムが違います。
(参考:自然エネルギー財団「電力証書が自然エネルギーを増やす」)
REC (Renewable Energy Certificate)が発行された背景・理由
RECは、電力供給事業者が年間のRPSの基準を満たすための量を取引するために発案・発行されました。
RPSは供給事業者に自然エネルギー比率を基準値以上に上昇させることを義務とする制度で、アメリカ・カナダの州の多くが導入しています。REC発行の当初の目標がRPS基準の達成だったため、RECは2つの市場に分かれたのです。
RPSを達成できない場合にはペナルティが発生するため、導入している州・地域はRPSの基準を達する努力を積み重ねており、RECの発行は多くの州・地域に歓迎されました。
(参考:自然エネルギー財団「電力証書が自然エネルギーを増やす」)
REC (Renewable Energy Certificate)を購入するメリット
日本におけるRPS制度は2017年度以降段階的に廃止されており、2022年には義務量が0kWになっているため、アメリカ・カナダのようにRPSの義務を達成するために購入するメリットはありません。
しかし、RECにはRPSのための利用以外にも以下のメリットがあります。
- 脱炭素経営のアピールになる
- 世界的な認知度が高い
- RE100などの国際的イニシアチブに活用できる
- 再生可能エネルギーの普及促進に貢献できる
(参考:自然電力グループ「I-RECとは?メリットや活用方法、非化石証書などとの違いを紹介」)
脱炭素経営のアピールになる
昨今の地球温暖化の加速を受け、個人の生活よりも多くの温室効果ガスを排出している企業には、脱炭素への取り組みが求められています。
しかし、事業内容によっては、再生可能エネルギー発電設備や省エネ設備の導入だけでは脱炭素への目標が達成できない場合もあるでしょう。
RECを利用し、企業の温室効果ガス排出量を実質的に減らしていることを社外にPRできれば、投資家・取引先・消費者などからの評価がアップします。
投資先・取引先としての競争力が増したり、消費者に製品を選ばれやすくなったりすると期待できます。
世界的な認知度が高い
RECは50以上の国と地域で発行・利用されています。国境を越えて取引ができるのに加え、外資系企業の認知の高さからPR力も高いといえるでしょう。
非化石証書・J-クレジット・グリーン電力証書といったカーボンクレジットも、購入することで実質的に温室効果ガスの排出量を削減できますが、日本国内のみで取引されています。
RE100などの国際的イニシアチブに活用できる
RECは、発電方法や発電場所などの属性を証明できるため、RE100・SBT・CDPスコアといった国際的なイニシアチブに活用できます。
グローバルに事業を展開している企業や、今後海外進出を考えている企業にとって、メリットが大きいです。
再生可能エネルギーの普及促進に貢献できる
RECを購入することで、RECの発行者は収入を得ることができます。再生可能エネルギー事業を支援できるため、さらなる拡大に貢献できます。
再生可能エネルギーの普及が促進すれば、温室効果ガスを削減でき、地球温暖化を抑制することができるでしょう。
RECは発電場所・発電方法・プロジェクトを選んで購入できるので、「水力発電の普及を促進したい」「特定のプロジェクトを応援したい」という場合にも効果的です。
REC (Renewable Energy Certificate)を購入するデメリット
RECにはいくつかデメリットもあるので、確認しておきましょう。
- 制度とシステムが統一されていない
- Compliance RECと Voluntary RECに分かれているため非効率
- 開示情報が州・地域によって異なる
制度とシステムが統一されていない
ヨーロッパで活用されている環境証書・GOは共通の証書管理システムで管理されていますが、RECにはそれがありません。
国や地域ごとに異なる仕組みで運用されており、統一基準がないので、地域によって異なるRECを購入しなければならないこともあります。
グローバルに事業を展開している企業の場合、管理が複雑になることも考えられます。
統一された証書管理システムによって制度とシステムをまとめることにより、上記のデメリットは払拭できます。
Compliance RECと Voluntary RECに分かれているため非効率
Compliance RECと Voluntary RECはどちらもカーボンクレジットですが、活用目的が異なります。
企業がRECの購入でカーボンオフセットをする場合に、どちらを買えばいいか判断が難しくなったり、2つのRECの購入で管理が複雑になるのがデメリットです。
RECが2種類に分かれているという部分は日本の非化石証書でも見られる問題点で、将来的に一本化されることが期待されています。
開示情報が州・地域によって異なる
開示情報が州や地域によって異なるのもデメリットの1つです。
地域によっては、RECの開示情報にエネルギー源や温室効果ガス削減効果が明確で無きこともあり、信頼性が欠ける場合があります。
一本化により開示される情報も統一されれば、取引の不透明性などの難点が解消されていくでしょう。
(参考:自然エネルギー財団「電力証書が自然エネルギーを増やす」)
REC (Renewable Energy Certificate)の活用方法
RECは、再生可能エネルギーの発電に連動する環境価値を証明するために活用されます。RECの主目的であるRPS制度の基準の達成以外にも、企業が自然エネルギー電力を利用する方法の1つとして活用可能です。
太陽光発電設備などを設置して発電を行った上で発行手続きを行う、あるいは仲介業者などに手続きを委託することでRECを脱炭素経営の手段として活用できます。
他企業・他自治体などが発行したRECを購入し、企業のCO2排出削減やカーボンオフセットなどの対策に活用することでも、環境保全に貢献できます。
(参考:自然電力グループ「I-RECとは?メリットや活用方法、非化石証書などとの違いを紹介」)
まとめ
2024年3月時点ではアメリカとカナダとメキシコの一部での活用がメインのRECですが、RECに関心を持つ他国の企業が増えているため、広い範囲で活用される可能性が高いです。
制度やシステムが統一されていないという点は大きな課題ですが、活用する企業が増えていく過程でさまざまなデメリットを克服することに期待しましょう。
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編集者
pn.garrden