ボランタリークレジットとは?メリット・デメリットや日本の市場、購入方法など解説

  • CO2削減
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2050年にカーボンニュートラルを目指すにあたり、排出削減量を企業間で売買することができるようにした仕組みであるカーボンクレジットの一形態なのがボランタリークレジットです。

カーボンクレジットやカーボンオフセット、CO2排出量削減の有効な手段として世界で注目を集めており、その1種であるボランタリークレジットは「自主的にCO2を埋め合わせる」のが特徴です。

この記事では、ボランタリークレジットの仕組みや特徴、問題点、今後の展開などについて詳しく解説します。

ボランタリークレジットとは

ボランタリークレジットとは、民間やNGOが主導するカーボンクレジットのことです。

カーボンクレジットとは、政府や公的機関が発行するもので、企業が環境活動することによって生まれたCO2などの温室効果ガスの削減量や吸収量を数値化したクレジットを、努力してもどうしてもCO2を排出してしまう企業と取引し、排出量を相殺する仕組みです。

ボランタリークレジットの種類

ボランタリークレジットは世界では大きく4つのクレジットがあります。世界で最も取引量が多いVCS、環境NGOが設立したGS、世界初の民間GHG排出量の登録機関ACR、California Climate Action Registryを起源に持つ認証基準・制度のCARです。

また、海に特化したJブルークレジットは、日本のボランタリークレジットで世界が注目しています。

VCS(Verified Carbon Standard)

VCSは、WBCSD「持続可能な開発のための世界経済人会議」やIETA「国際排出権取引連盟」などの団体が、2005年に設立した認証基準・制度で、森林や土地利用に関連するプロジェクト(REDD+を含む)や湿地保全による排出削減プロジェクトなど多様なプロジェクトが実施されています。

現在は民間カーボンクレジット認証の大手プロバイダーVerraが開発・管理しています。

創出方法論が「エネルギー・工業プロセス・建設・輸送・廃棄物・工業・農業・森林・草地・湿地・家畜・家畜と糞尿」の11種類と多様です。

GS(Gold Standard)

GS(ゴールドスタンダード)は、2003年にWWF(World Wide Fund for Nature)等の国際的な環境NGOが設立した、CDM (クリーン開発メカニズム)や JI (共同実施)プロジェクトの「質」の高さに関する認証基準・制度です。

自らVER(第三者認証排出削減量)を発行するだけではなく、CDM(クリーン開発メカニズム)プロジェクトの中でも、地元共同体への貢献などの便益を有すると見なされたプロジェクトについては、GSが認証する取組みを行なってきました。

「持続可能な開発へ向けてのパラダイム・シフトをもたらすようなエネルギー技術」「追加性と持続可能性」「環境 NGO による広範なサポート」という3つの基準で選定されています。

ACR(American Carbon Registry)

NPO法人Winrock Internationalが1996年に設立した世界初の民間クレジット登録機関で、認証基準・制度です。自主炭素市場と規制炭素市場の両方で活動し、オフセット品質の基準を設定しボランタリークレジットの信頼性向上に努めています。

CAR(Climate Action Reserve)

2001年にカリフォルニアで創設されたCalifornia Climate Action Registryを起源に持つ、世界で初めての民間クレジット認証機関で、認証基準・制度です。

さまざまな部門のステークホルダーにわたるワークグループを開発し、厳格な基準を設けています。

Jブルークレジット

Jブルークレジットとは、海に特化した独自のボランタリークレジットです。神奈川県横須賀市のジャパンブルーエコノミー技術研究組合が、Jブルークレジットの認証を行っています。

漁業組合やNPOなどは海藻を育てた成果としてJブルークレジットを販売し、購入企業は自社の排出量から炭素吸収分を打ち消すオフセットができる仕組みです。

地域の漁場を豊かにし経済を発展させる取り組みと期待され、2020年からJブルークレジットの認証を始めると100社以上の企業が購入しようと殺到しました。

広い海域を持つ日本にとってJブルークレジットはさらに価値が高まると期待されています。

ボランタリークレジットの市場規模

世界銀行は2022年5月24日に「カーボンプライシングの現状と傾向 2022年」を発表しました。それによると、ボランタリークレジット市場はカーボンニュートラルの目標を掲げる企業の増加により、発表時点で14億ドルに達しました。

2021 年のカーボン・クレジット発行量は 4.8 億 CO2換算トンと前年比 46%増加し、そのうちボランタリー・クレジットの割合は 74%に達しています。

また、ボランタリークレジットのルール策定・拡大を目指すイニシアティブである「Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets(TSVCM)」によれば、ボランタリー市場はハイペースで拡大を続け、2030 年に生成可能なクレジットは年間 80~120 億トンで、そのうち市場で取引ができるのは 10~50 億トンと推定されるとしています。

参考:JETRO 「カーボンクレジット、2021年は前年比5割増、世界銀行がレポート」
参考:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構「「世界のカーボンクレジット市場とCCS – ASEANの脱炭素化に向けて-」ワークショップレポート」

ボランタリークレジットの価格相場

2021年11月時点で10億ドルを超え、2021年の平均価格は1トン当たり3.82ドルで、前年(2.49ドル)から上昇し、取引量は前年比92%増の3億6,200万トンを超えました。

参考:JETRO 「カーボンクレジット、2021年は前年比5割増、世界銀行がレポート」

ボランタリークレジットとその他の環境価値との違い

ボランタリークレジットとその他の環境価値との違いを見ていきましょう。

環境価値

  • Jクレジット制度(証書):環境省、経済産業省、農林水産省が運営するベースライン&クレジット制度。再エネや省エネ設備などによって削減したCO2の排出量や植林活動によるCO2の吸収量をクレジット化し販売。GHGプロトコル使用できる。
  • 非化石証書(証書):発電事業者が発行。「再エネ価値取引市場」で直接購入するか、小売電気事業者や仲介業者を通じて購入する。化石燃料を使わない非化石エネルギーに「証書」を貼り、化石燃料からのエネルギーと区別することが目的。GHGプロトコル使用できる。(政府によるトラッキング証書のみ)
  • グリーン電力証書(証書):第3者認証機関(一般社団法人日本品質保証機構)。再エネが対象で環境価値を可視化しグリーン電力証書を保持し、企業の取り引きに役立てる仕組み。GHGプロトコルを使用できる。

ボランタリークレジット

  • VCS・GS・ACR・CAR・Jブルークレジット(日本発の海のクレジット):民間主導のため法的拘束力がなく、自由に取引できる
    英語対応が求められる。クレジットの創出方法が多岐にわたっており、柔軟に対応できる。GHGプロトコル使用できない。自主的なオフセットのみ。

環境価値は政府や公的なセクターが取り扱っているため規制や法的拘束力があり、国際的な基準であるGHGプロトコルとして使用できます。

環境省が、GHGプロトコルScope3算定報告基準に整合した「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」を作成しています。

一方、ボランタリークレジットは、世界中の民間企業やNGOなどの団体が発行しているので、自由度が高く取引が活発化しています。しかし、種類も多くそれぞれの団体が作った評価となっているため、GHGプロトコルでは使用できません。

ボランタリークレジットが発行されている背景と目的

ボランタリークレジット市場が急速に拡大してきた背景には、世界的に2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指していることがあります。

加えて日本でも2030年までに2013年と比べCO2を45%の削減を決定していることもあり、企業もカーボンニュートラル経営を迫られています。

しかし、企業が経済活動を行っていくために削減しきれないCO2があり、それをオフセットする必要性からカーボンクレジットの取引が多くなり、特に使い勝手の良い民間が主導するボランタリークレジットの発行が多くなりました。

ボランタリークレジットを購入するメリット

ボランタリークレジットを購入すると、排出したCO2をオフセットできることが一番大きなメリットでしょう。地球温暖化対策など環境問題への取り組みもPRできます。また、民間主導の取引のため自由度が高いです。

排出したCO2をオフセットできる

やむを得ず排出してしまったCO2を、購入したボランタリークレジットで相殺することで、「カーボンオフセット」ができます。

企業は脱炭素化に向けて自社での努力が必要ですが、省エネ機器の導入や業務の効率化などでCO2を削減しても、経済活動を行っていく上でCO2排出量をすぐに減らすことは難しいでしょう。

ボランタリークレジットを利用すれば、排出してしまったCO2を埋め合わせることができます。

環境問題への取り組みをPRできる

クレジット創出者は地球温暖化対策に積極的な企業として、クレジット購入者は環境貢献企業として、PRできます。

企業には、目先の業績だけでなく、環境問題や社会問題に配慮し、健全な管理体制を構築する「ESG経営」が求められています。ESG経営を行う企業は持続性(サステナビリティ)が高く、将来的に成長すると評価されるのです。

ボランタリークレジットで環境に配慮する企業の取り組みは、ESG投資を行う投資家にアピールでき、地域社会でも好感が持たれるでしょう。

民間主導だから柔軟性が高い取引ができる

ボランタリークレジットは、カーボンオフセットを求める企業が購入し、企業間の相対取引によって決定されます。国による規制がないため、使い勝手が良く、スピーディーな排出量取引が可能です。

クレジットの創出方法も政府主導のカーボンクレジットよりも多岐に渡っており、より幅広く柔軟な対応ができます。

ボランタリークレジットを購入するデメリット

ボランタリークレジットは基準が曖昧なためGHGプロトコルに活用できません。また、価格や取引量も定かではありません。

GHGプロトコルには活用できない

ボランタリークレジットは民間主導のクレジットのため、政府機関のように信頼性が担保されず、温室効果ガスの排出量を算定・報告する際の国際的な規準GHGプロトコルとして活用できません。

GHGプロトコルに対応する国内の証書は、再エネ由来のJ-クレジットとグリーン電力証書のみです。非化石価値証書は、GHGプロトコルを満たしていますが、残余ミックス係数が公表されていることが必要となっています。

価格や取引量が不透明

クレジットを所有している企業と購入する企業の相対取引のため、一般に公開されておらず実際の価格や取引量が確かではありません。購入する企業が事業計画を立てることが非常に難しいという問題があります。

また、ボランタリークレジットを利用した企業が、「企業の戦略や訴求の妥当性」「企業が調達したクレジットの属性やクオリティ」について批判を受ける事例が起きています。

ボランタリークレジットの購入方法

ボランタリークレジットを購入するには2つ方法があります。

相対取引

1つめは、クレジットを保有する企業から直接購入する相対取引です。従来はこの方法が一般的でした。

アメリカやヨーロッパをはじめ世界各国でクレジットが発行されているため、クレジットの数が多すぎ何処のものが一番適しているのか見極めが難しいでしょう。クレジットの信頼性に対する不安も拭えません。

また、最低でも英語でのやり取りが必要になります。

専門の仲介業者を通じた取引

2つめに、ボランタリークレジットの取り引き専門業者を通じて購入する方法があります。直接取引による様々な不安や業務の煩さを解消するには、専門業者に依頼すると安心して取引ができるでしょう。

最近オンラインでクレジットを購入する、NFT化されたボランタリークレジットの販売実証も始まっています。

カーボンオフセットならOFFSEL(オフセル)に無料相談

OFFSELではJ-クレジットやトラッキング付非化石証書など、カーボンクレジットの調達代行を行っています。

業界最安値級の単価設定であるのに加え、小さな単位から購入できるので、コストを抑えて必要な分だけカーボンクレジットを調達可能です。

3つの国際イニシアチブ(CDP・SBT・RE100)に対応しており、GHG排出量の算定も行っています。

相談料・手数料は完全無料なので、カーボンオフセットを考えている方は一度連絡してみてくださいね。

まとめ

2050年のカーボンニュートラルに向けて企業のCO2削減は必須になっています。カーボンクレジットの民間版と言えるボランタリークレジットは、自由度が高く様々なクレジットが創出されていることから、CO2排出量削減の有効な手段として急速な成長を遂げました。

しかし、自由度が高いが故の不透明さから、2020年9月にボランタリークレジットに関する金融・産業・認証機関の団体であるTSVCM(Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Market)が発足しました。

また、クオリティの高い認証プログラム・炭素クレジットの要件を定義する「コア炭素原則(CCP: Core Carbon Principles)」の策定を提言したことから、今後はクレジットの質や透明性が向上するでしょう。

ボランタリークレジットの取引は相対取引が中心でしたが、世界が市場ということもあり種類が多く複雑なことから、近年では専門の取引業者が増えています。

また、NFT化されたボランタリークレジットの販売実証も始まったことなどから、カーボンオフセットをしたい企業にとって、ボランタリークレジットは益々使い勝手がよくなることでしょう。

ボランタリークレジットは、サステナビリティ経営の取り組みと共に今後も発展することが予想されます。

参考:

カーボン・クレジット・レポートの概要
カーボンプライシングとカーボンクレジットを巡る国内外の動向~加速する脱炭素の潮流を見据えた企業経営を考える~|みずほ銀行
脱炭素に取り組むGXリーグ、「ボランタリークレジット」どう活用 – 日本経済新聞
カーボンクレジット、2021年は前年比5割増、世界銀行がレポート(世界) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ
ゴールドスタンダード |WWFジャパン
世界のカーボンクレジット市場とCCS – ASEANの脱炭素化に向けて-
日本が先導する”海のSDGs” ブルーエコノミーを分かりやすく学ぶ 世界が注目する「Jブルークレジット」について徹底解説  | 公益財団法人笹川平和財団のプレスリリース
カーボンクレジット、2021年は前年比5割増、世界銀行がレポート
カーボンクレジットの活用に関する動向と課題|一般財団法人 電力中央研究所

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    編集者

    maeda

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