SBTiとは?読み方・認証の手順・費用まで徹底解説
- CO2削減

SBTi(エスビーティーアイ)は、企業が科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定・認定してもらうための国際的な枠組みです。
「SBTiという言葉は聞いたことがあるけれど、何から始めればいいかわからない」という担当者の方に向けて、この記事ではSBTiの基本的な意味から認証のコスト・具体的な手順まで、一気通貫で解説します。
- SBTiとSBTの違い(混同しやすいポイント)
- SBTi認証を受けるメリット・デメリット
- 認証にかかる費用(登録料の目安)
- 認証取得までの具体的な4ステップ
シミュレーター
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目次
SBTiとは|Science Based Targets initiativeの意味と読み方

SBTi(読み方:エスビーティーアイ)とは、パリ協定の1.5℃目標と整合した温室効果ガス削減目標の設定・認定を行う国際的な共同イニシアチブです。
CDP・国連グローバル・コンパクト(UNGC)・世界資源研究所(WRI)・世界自然保護基金(WWF)の4団体が共同運営する国際イニシアチブ。企業の温室効果ガス削減目標が「科学的に十分か」を審査・認定する。
名前が似ていてわかりにくいですが、SBTとSBTiは別のものです。
| 用語 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| SBT | Science Based Targets | 科学的根拠に基づく削減「目標」そのもの |
| SBTi | Science Based Targets initiative | その目標を審査・認定する「団体・枠組み」 |
つまり「SBTiに認定された目標 = SBT」という関係です。企業が設定した削減目標をSBTiに提出し、審査を通過することで「SBT認定企業」になれます。
SBTiの科学的根拠とは|なぜ「1.5℃」なのか

出典:朝日新聞
SBTiが基準とする「1.5℃」は、2015年のパリ協定で定められた世界の平均気温上昇の上限目標です。
SBTiはこの目標から逆算し、「地球全体の排出量をいつまでにどれだけ削減すべきか」を科学的に算出しています。そのうえで、各企業が担うべき削減量の基準として認定条件を設定しています。
2022年7月以降、SBTiの認定を受けるには年間4.2%以上の削減が必要条件となっています。これはIPCCの科学的知見に基づく数値です。
SBTiはサプライチェーン全体の排出削減を求めます。
- Scope 1:自社の事業活動から直接排出されるCO₂
- Scope 2:購入した電力・熱の使用に伴う間接排出
- Scope 3:原材料調達・製品の使用・廃棄など上流・下流の排出
Scope 3の排出量が全体の40%以上を占める場合、SBTiはScope 3目標の設定も義務付けています。
パリ協定について、詳しくはこちらの記事をご覧ください
>>パリ協定とは?決定した内容を、要点を絞ってわかりやすく解説
SBTi認証を受けるメリット・デメリット

SBTi認証にはビジネス上の明確なメリットがある一方、取得・維持にともなうコストや対応負荷も存在します。
メリット
① 投資家・金融機関からの信頼向上
ESG投資の拡大にともない、機関投資家や金融機関がSBTi認定の有無を評価指標に加えるケースが増えています。認定取得により、資金調達コストの低減や融資条件の優遇につながる可能性があります。
② グリーンウォッシュの防止
「環境に配慮している」と自社でアピールするだけでは、その信頼性を証明できません。SBTiは独立した第三者機関が削減目標を審査するため、対外的に科学的根拠のある脱炭素への取り組みを示せます。規制強化が進む欧州をはじめ、グリーンウォッシュへの批判リスクを下げる効果もあります。
③ 取引先・調達要件への対応
大手メーカーや小売業を中心に、サプライヤーに対してSBTi取得を要件とする動きが広がっています。取引継続・新規取引獲得の観点から、認定取得が実質的な商談条件になるケースも出てきています。
④ 脱炭素経営の方向性が明確化
SBTiの認定基準に沿って目標を設定することで、「いつまでに・どれだけ削減するか」が社内で共通認識になります。場当たり的な省エネ対策ではなく、科学的根拠に基づいた中長期の脱炭素ロードマップを描けるようになります。
デメリット・注意点
① Scope 3の算定が難しい
SBTiはサプライチェーン全体(Scope 1〜3)の排出削減を求めます。特にScope 3は、原材料の調達先や製品の使用・廃棄まで含むため、データ収集に多大な時間と工数がかかります。社内だけで対応するのが難しく、外部専門家への委託コストが発生するケースがほとんどです。
② 毎年の進捗報告義務がある
SBTi認定は取得して終わりではありません。認定後は毎年CDPなどを通じて削減進捗を開示する義務があります。継続的な報告対応が必要なため、社内体制の整備が不可欠です。
③ 申請〜認定まで時間がかかる
コミットメント登録から正式認定まで、一般的に1年前後かかるケースが多いです。審査待ちの期間が長引くこともあるため、取引先や投資家への対応期限がある場合は早めに着手する必要があります。
④ 費用が想定以上にかかる場合がある
公式の登録料・審査料に加え、Scope 3算定の外部委託費やコンサルティング費用が発生します。大企業では総額数百万円規模になるケースもあります。中小企業はSMEルートを活用することでコストを抑えられますが、それでも社内工数は相応にかかります。
SBTi認証にかかる費用・登録料の目安
SBTi認証には、公式の登録料(コミットメント料)と審査料が必要です。費用は企業規模によって異なります。
| 企業規模 | 目安費用(USD) | 備考 |
|---|---|---|
| 大企業 | $9,500〜 | コミットメント登録料+審査料 |
| 中小企業(SME) | $1,000〜$2,500程度 | SMEルートを利用した場合の目安 |
上記はあくまで公式申請費用の目安です。実際には以下の追加コストが発生するケースが多いです。
- Scope 1〜3の排出量算定コスト(外部委託の場合)
- コンサルタント・支援サービスの費用
- 社内リソース(担当者工数)
従業員500名以下の中小企業向けに、簡易版の審査ルート(SME Route)が用意されています。申請書類が軽量化されており、Scope 3目標が免除される場合もあります。中小企業はまずSMEルートの要件を確認することをおすすめします。
SBTi認証取得までの4ステップ
SBTi認証を取得するまでの流れは、大きく4つのステップに分かれます。ステップの内容は大企業・中小企業(SME)で共通ですが、必要な書類や対応範囲が異なります。自社の規模に合ったルートを確認したうえで進めましょう。
ステップ1:コミットメントの登録(Commit)
SBTi公式サイトから「コミットメント(誓約)」を登録します。「2年以内に科学的根拠のある削減目標を提出する」と宣言するステップで、登録後はSBTiの公式リストに企業名が掲載されます。大企業・中小企業ともに手順は同じです。
| 大企業 | 中小企業(SME) | |
|---|---|---|
| 対象 | 従業員500名超 | 従業員500名以下 |
| 登録先 | SBTi公式サイト(通常ルート) | SBTi公式サイト(SMEルート) |
| 目安期間 | 即日〜数日 | 即日〜数日 |
ステップ2:排出量の算定(Measure)
自社のScope 1〜3の温室効果ガス排出量を算定します。ここが認証取得において最も負荷がかかる工程です。大企業はScope 3まで含めた全範囲の算定が求められますが、中小企業はScope 3が免除される場合があり、対応負荷を大幅に抑えられます。
| 大企業 | 中小企業(SME) | |
|---|---|---|
| 算定範囲 | Scope 1・2・3(全範囲) | Scope 1・2(Scope 3は条件により免除) |
| 難易度 | 高(サプライチェーン全体のデータ収集が必要) | 中(Scope 1・2のみなら比較的取り組みやすい) |
| 目安期間 | 3〜6カ月 | 1〜3カ月 |
ステップ3:目標の設定・提出(Act)
パリ協定1.5℃水準に沿った削減目標を設定し、SBTiに提出します。大企業はSBTi Target Setting Toolを使った詳細な計算と、Scope 3目標の設定も求められます。中小企業はSMEルート専用の簡易フォームを使用でき、申請書類の量が大幅に少なくなります。
| 大企業 | 中小企業(SME) | |
|---|---|---|
| 使用ツール | SBTi Target Setting Tool(詳細版) | SMEルート専用の簡易フォーム |
| Scope 3目標 | 原則必須 | 条件により免除 |
| 目安期間 | 1〜3カ月 | 2週間〜1カ月 |
ステップ4:審査・認定・進捗報告(Report)
SBTiによる第三者審査を経て、正式に「SBTi認定企業」となります。審査期間は大企業のほうが長くなる傾向があります。認定後は毎年CDPなどを通じて進捗を開示する義務があり、この点は大企業・中小企業ともに共通です。
| 大企業 | 中小企業(SME) | |
|---|---|---|
| 審査期間 | 3〜6カ月 | 1〜3カ月 |
| 認定後の報告 | 毎年CDP等で進捗開示(義務) | 毎年CDP等で進捗開示(義務) |
| 認定有効期間 | 5年ごとに目標更新が必要 | 5年ごとに目標更新が必要 |
- 大企業:コミットメント登録から認定まで合計1年〜1年半程度
- 中小企業(SME):同6カ月〜1年程度(Scope 3免除の場合)
いずれも取引先や投資家への対応期限がある場合は、早めの着手が重要です。
SBTiに関連するキーワード
SBTiを理解するうえで、以下のキーワードも押さえておきましょう。
ネットゼロ基準(Net-Zero Standard)
SBTiが2021年に策定した、2050年までに温室効果ガスの実質排出量をゼロにするための国際標準です。短期目標(2030年前後)と長期目標(2050年)の両方を設定する必要があります。
FLAG(Forest, Land and Agriculture)
農業・食品・林業など土地利用に関わる企業向けの特別な目標基準です。畜産・農産物を扱う企業は、通常のSBTに加えてFLAG目標の設定が求められます。
CDP
環境情報の開示プラットフォームで、SBTi認定後の進捗報告先として利用します。SBTiの運営団体の一つでもあります。
まとめ|SBTi認証取得の第一歩
SBTi(エスビーティーアイ)は、企業の温室効果ガス削減目標が科学的に妥当かを第三者が審査・認定する国際的な枠組みです。
改めてこの記事のポイントを整理します。
- SBTは「目標」、SBTiは「認定する枠組み」
- 認定には年4.2%以上の削減目標(1.5℃水準)が必要
- 費用は大企業で$9,500〜、中小企業はSMEルートで抑えられる
- 取得まではコミットメント→算定→目標提出→審査の4ステップ
- 認定後は毎年の進捗開示義務がある
SBTi認証は投資家・取引先からの信頼を高める有効な手段ですが、Scope 3算定や進捗報告など継続的な対応が必要です。まずはコミットメント登録から始め、専門家のサポートを活用しながら進めることをおすすめします。
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編集者
imaoka


