CSR活動とは?メリット・デメリットや導入事例をわかりやすく解説
- CO2削減
CSRは「Corporate Social Responsibility」の略で、企業に求められる社会的責任のことです。
代表的な取り組みとして、「環境への配慮」「社会的な公正」「従業員の福祉向上」「透明性の向上」「地域社会への貢献」などが挙げられます。
CSRの基本的な内容を踏まえた上で、事例やメリット・デメリット、具体的な取り組みについても解説します。
目次
CSRとは?
CSRは、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)の略で、組織が法的な要求だけでなく、倫理的および環境的な観点からも社会に対して責任を果たすべきであるという考え方を指します。
CSRは企業が経済的な成功だけでなく、環境や社会に対する影響を考慮して事業を展開し、サステナビリティを重視することを奨励します。
CSRの実践は、
- 環境への配慮
- 社会的な公正
- 従業員の福祉向上
- 透明性の向上
- 地域社会への貢献など
さまざまな側面にわたります。
企業がCSRに焦点を当てることで、顧客や従業員、株主など、さまざまなステークホルダーとの信頼関係を築くことが期待されているのです。
CSRの7つの原則
CSRの7つの原則は、「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダーの利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」です。
この原則は、中核主題を行うためにも踏まえておくべき点です。
CSRの7つの中核主題とは、次のような内容です。
- 組織統治(ガバナンス)
- 人権
- 労働慣行
- 環境
- 公正な事業慣行
- 消費者課題
- コミュニティへの参画及びコミュニティの発展
これらの中核主題は、企業がCSRを実践する際に考慮すべき重要な領域を示しています。
企業はこれらの主題を総合的かつ継続的に考慮し、社会的責任を果たすための具体的な取り組みを進めることが期待されています。
CSR活動への取り組みが必要な背景
社会は企業に対して、単なる利益追求だけでなく、社会的な責任を果たすことを期待しています。
企業はその存在や成果が社会に与える影響を考慮し、社会的要請に応じる必要があるのです。
CSRの実践は、企業が社会的責任を果たす一環として、持続可能なビジネスモデルの構築やステークホルダーとの信頼関係の構築に寄与します。
持続可能な企業としての成長
企業の社会的責任とは、企業が社会や環境に共存し、持続可能な成長を図るためにその活動の影響について責任を取る企業行動です。
それぞれの企業の持続的な成長が、結果的に社会全体の持続性を向上させることになります。
CSRだけでなくSDGsも持続可能な社会づくりをゴールとしており、同じ目的を持っていると言えます。
企業は利益を得ることを目的としていますが、目先の利益だけを追い求めていては、結果的に企業の持続的な成長を妨げかねません。
従業員の安全や社会を脅かしてしまうと、その企業は社会からの信頼を失い、消費者からも見放されてしまうのです。
経済的な安定
CSR活動に取り組むためには、各ステークホルダーとの関係性を良好に保つことが企業経営を安定化させるといっても過言ではありません。
経済産業省によると、CSRは以下のように定義されています。
「企業の社会的責任」とは、企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るため、その活動の影響について責任をとる企業行動であり、企業を取り巻く様々なステークホルダーからの信頼を得るための企業のあり方を指します。
CSR活動によって信頼性が高まれば、企業経営の安定にもつながります。
その結果、従業員の待遇がアップしたり、福利厚生の充実、労働環境の改善などを行う経営上の余裕も生まれてくるでしょう。
CSR活動とSDGs用語との違い
企業経営を安定させるCSR活動とSDGs用語との違いを解説します。
CSRとSDGsの違い
CSR(Corporate Social Responsibility)とSDGs(Sustainable Development Goals)は、いずれも企業や組織が社会的な側面や持続可能な発展に焦点を当てる考え方という点は同じです。
しかし、CSRは企業が経済活動をするにあたって、社会的責任なのに対し、SDGsはビジネスの延長線上にある社会課題を解決することです。
SDGsは持続可能な世界を目指す活動ですが、CSRはそうではありません。
企業はCSRを通じて、自らのビジネス活動を持続可能な開発目標に結びつけることがありますが、SDGsはより広範かつ包括的な社会的課題に焦点を当てています。
CSRのとサステナビリティの違い
サステナビリティは、ビジネス活動や社会の発展が持続可能であることを追求する考え方です。
これは環境への影響、社会的な側面、経済的な側面など、広範な側面にわたります。
サステナビリティは長期的な視点を持ち、資源の持続可能な利用や社会的な公正の実現を追求します。
CSRは企業の社会的な責任に焦点を当てる一方で、サステナビリティは広範な側面にわたり、より長期的で包括的な視点を持ちます。
企業はCSRを実践することで社会的な影響を最小化し、サステナビリティを追求することで長期的な持続可能性の確保が期待されているのです。
簡潔に言うと、企業が利益を上げながらさまざまな問題解決の活動に取り組み、よりよい社会を目指すのがCSRです。
CSRとESG投資の関係
CSRとESG投資の関係は、非常に近い位置にあります。
ESG投資は、企業の環境への影響、従業員の取り組み、企業統治の品質などに焦点を当て、投資先がESG指標に基づいて選定され、投資家は社会的責任や持続可能性に配慮した投資を行います。
ESG投資は企業のESG要因を評価し、投資先を選定する際にCSRの実践を考慮することがあります。
そのため、ESG投資家は企業が社会的責任を果たし、持続可能なビジネスモデルを採用しているかどうかを重視して投資先の選定を行う必要があります。
一方で、CSRは企業が単体で社会的責任を果たすための取り組みを進めるものであり、CSRの実践がESG投資の評価基準に影響を与える可能性があります。
つまり、CSRとESG投資は企業の社会的責任に焦点を当てており、ESG投資はCSRの実践を考慮しながら、企業の持続可能性や社会的影響を評価する手段の一つとして位置づけられているということです。
企業がCSR活動に取り組むメリット
ここからは、企業がCSR活動に取り組むメリットを紹介します。
企業がCSR活動に取り組むメリットは、次の5つが挙げられます。
- 企業イメージの向上
- コンプライアンス意識
- 従業員のモチベーションアップ
- ステークホルダーからの信頼
- 優秀な人材を確保できる
企業イメージの向上
CSR活動に取り組む企業は、不祥事を起こしにくく、社会にとってプラスの存在であると認識されるようになります。
その結果、取引先だけでなく一般消費者からの信頼も高くなり、利益向上へとつなげられるのです。
実際に、東京商工会議所の調査によれば大企業の98.3%、中小企業の79.7%がCSR活動によって企業イメージが向上したと報告しています。
(参考:「企業の社会的責任(CSR)」についてのアンケート調査)
また、企業の社会的イメージが向上すれば、企業のブランディング戦略にも活かすことができ、結果として企業の利益も上がる仕組みです。
これにより、投資家にも良い影響を与え、資金調達もしやすくなります。
コンプライアンス意識
2つ目のメリットは、社員全体のコンプライアンス意識を高められる点です。
コンプライアンス意識が全社員に浸透することで、企業全体が良い方向に進める可能性が高くなります。
企業のCSR(社会的責任)を遂行する上で、コンプライアンスはその根幹です。
企業が利害関係者に対して社会的責任を果たすために規範や方針を決めて取り組みを実施すれば、企業にとっても大きなメリットが得られるでしょう。
従業員のモチベーションアップ
CSRは企業活動が影響を与える全てのステークホルダーについて考える必要があります。
社会的に意義のある事業に携わっている自覚を持つことができるので、今以上にモチベーションを高めて生産性向上にも期待できます。
また、社員の離職率低下にも期待できるので、これは企業にとっても大きなメリットだと言えるでしょう。
ステークホルダーからの信頼
CSR活動に取り組むことで、従業員や取引先、金融機関、株主、地域社会などから高い信頼を得られます。
この信頼が結果的に、経営の安定化に対して良い影響を与えることは間違いないです。
ステークホルダーは企業活動に関係する全ての人のことで、企業活動によって直接的・間接的に影響を与える全ての人を指します。
CSR活動に取り組んだ結果、さまざまなステークホルダーとの関係性が良好に保たれ、企業として信頼を獲得できるのです。
優秀な人材を確保できる
CSR活動に取り組むことで、社内の課題解決にも役立ちます。
従業員の満足度が向上すれば、社内の雰囲気が良くなり、企業としての評判も上がるでしょう。
これらの評判や口コミはSNSや口コミサイトなどで広がり、優秀な人材が増える効果にも期待できます。
中小企業は特に、大企業と比べても優秀な人材を獲得することが難しいですが、CSRの推進が差別化要因となり、働きやすさややりがいを重視する優秀な人材も集まりやすくなるのです。
企業がCSR活動に取り組むデメリット
ここからは、企業がCSR活動に取り組むデメリットを紹介します。
企業がCSR活動に取り組むデメリットは、次の2点です。
- コストがかかる
- リソースが必要
コストがかかる
CSR活動の取り組みには、どうしてもコストがかかります。
CSR活動に関する監査や報告が必要な場合、それにかかるコストが発生します。透明性を確保するために、独立した第三者の監査機関を利用することにも費用がかかります。
また、CSR活動の計画や実施には、ステークホルダーとの適切なコミュニケーションが必要です。これには、コミュニケーション戦略の策定やイベントの開催、報告書の作成などが含まれ、こちらも同様にコストが発生してしまいます。
CSR活動は基本的に利益に直結する活動ではないため、本業とは別で考える必要があり、ある程度予算も確保しなければいけません。
中小企業の場合、CSRに取り組みたくても予算を確保できずに、取り組めずにいるというケースも多いです。
CSRの取り組みを行うことで長期的な利益や付加価値をもたらす可能性もありますが、費用がかかるという点はどうしても懸念点になってしまうでしょう。
リソースが必要
CSR活動に取り組むためには、人的リソースを確保する必要があります。
特に、中小企業の場合は人手不足が原因で、リソースを確保できない場合もあります。
日本の企業環境では、どの業界でも人手不足が深刻な問題となっています。
CSR活動を積極的に推進したくても、結果的に従業員の負担が大きくなり、生産性や業務効率が低下してしまう可能性もあるのです。
このようなリソースの確保がデメリットに感じてしまうところも多いでしょう。
リソースを確保するために、CSRに取り組む前に生産性向上や業務フローの最適化、個別の業務見直しなどを図る必要もあります。
CSRの活動具体例
ここからは、CSRの活動具体例をいくつか紹介します。
- コンプライアンス
- コーポレート・ガバナンス
- 環境保全
- 社会貢献
- 従業員満足度の向上
- 顧客や消費者に対する取り組み
コンプライアンス
コンプライアンスは法令遵守のことですが、何も法令だけ守っていれば良いというわけではありません。
具体的なコンプライアンス違反の例としては、ハラスメント行為、サービス残業の常態化、不適切なSNS利用、情報漏洩などが挙げられます。
コンプライアンスを順守しなければ、企業は社会的信頼を失ったり、従業員のモチベーションも低下してしまう恐れがあります。
コンプライアンスを強化するためには、社外取締役・社外監査役を招聘したり、定期的に外部監査を行う、従業員に対してコンプライアンス研修を実施する方法などが有効です。
コーポレート・ガバナンス
コンプライアンスと同じく、CSRを真っ当するためにも強化しなければいけないのがコーポレート・ガバナンスです。
企業は社会の変化に適応し、常に最良のコーポレート・ガバナンスを追求し、その充実に継続的に取り組むことが求められています。
会社組織としての有効な意思決定の仕組みを整えるガバナンスは、CSR活動の土台となる基本的な取り組みの一つです。
コーポレート・ガバナンスを強化するためには、内部統制を強化したり、社外取締役・監査役および委員会の設置、執行役員制度の導入、社内での判断基準の明確化および周知徹底などの具体的な方法を採用しなければいけません。
環境保全
環境保全に取り組むことも、代表的なCSR活動の一つです。
例えば、被災地をつなぐ継続的な復興支援としてコミュニティづくり支援を行ったり、再生可能エネルギーで発電された電気に替えるなどが挙げられます。
どの企業でも、何かしらの形で環境問題と密接に関わっています。
CSR活動を推進するためにも、CO2削減や生態系の保護、水資源の有効利用なども求められるのです。
社会貢献
工場から出る有害なCO2を減らしたり、山に苗木を植える活動など、社会貢献もCSR活動には非常に重要です。
他にも、文化支援や人権保護、女性地位向上なども社会貢献の一つです。
簡単なもので言えば、緑化活動や地域のごみ拾い、街並み保全なども挙げられます。
社員が積極的に社会貢献することで、結果的にCSR活動に良い影響を与えます。
従業員満足度の向上
従業員にとっても、所属する企業が社会に貢献していることは、自社で働くことに誇りを持て、結果的に満足度向上にもつながります。
CSRが浸透して働きやすい職場になれば、企業としてメリットを得られる可能性は非常に高いです。
具体的には、差別のない公正な雇用や福利厚生の充実、社員教育などが挙げられます。
労働環境の改善やボトムアップの推進も、従業員の満足度向上につながる取り組みと言えます。
顧客や消費者に対する取り組み
顧客や消費者に対する取り組みは、CSR活動の基本です。
例えば、自治体や地域の企業と連携してCSR活動を行うことで、企業に対する信頼性もアップし、結果的に自社の商品やサービスの価値を伝えやすくなります。
顧客や消費者に対する取り組みを実施する際は、顧客満足度や消費者のニーズ、声などを積極的に収集し、情報を充実させることが大事です。
このような地道な取り組みを続けることで、結果的に顧客や消費者の利益に対して責任を持つという経営姿勢を明示できるのです。
日本企業のCSRの活動事例
ここからは、日本企業のCSRの活動事例を紹介します。
- トヨタ
- ユニクロ
- KDDI
トヨタ
トヨタは、社会から必要とされる企業であるために、社会的責任を果たし、地域から信頼されることが大事であると考えています。
主な社会貢献活動として、
- 緑化活動
- 福祉活動
- 次世代育成
- 地域との連携
- 刈谷ふれ愛パークを活用した社会貢献
- 社員のボランティア活動
- 寄附・協賛
などを行っています。
緑化活動では、工場や関連企業などがある愛知・三重・岐阜・鹿児島・インドネシアでの植林・緑化活動を通じて、森林資源の保全、地球温暖化防止を図り、環境保全・環境啓発への貢献を推進しています。
福祉活動では、身体障がい者・高齢者を対象とした移送サービスや障がい者の芋ほり体験、障がい者の方が作ったデザートを社員食堂で販売するなどの活動をしています。
その他、周辺地域の清掃活動や福祉施設の車いす清掃なども地域と連携し、社会貢献活動を推進しています。
(参考:トヨタ|社会貢献活動 | CSR)
ユニクロ
ユニクロは、CSRの一環として、全商品のリサイクル活動を行っています。
災害時には「服のチカラ」を通じた被災地への支援活動にも取り組み、実際に能登半島被災地に計10万点の防寒着を寄附したことでも話題になっています。
UNHCRや世界各地のNPO・NGOと連携することで、必要な服の数や種類、配送ルートを入念に確認しながら、本当に必要な服だけを確実に届けられる支援活動を進めているので、環境保全にも関わる活動をしています。
また、実店舗では自国から逃れた難民が避難先で安定した生活を送るために、ユニクロでは、難民の方々を店舗スタッフとして雇用する「RISE(Refugee Inclusion Supporting and Empowerment)プログラム」を立ち上げています。
語学トレーニングや店舗研修などを行うことで、働きやすい環境づくりをサポートすることで、CSR活動につなげているのです。
現在、日本、アメリカ、ドイツなどで難民を雇用しています。
(参考:SOCIETY | 服のチカラを)
KDDI
KDDIは、ご利用者だけでなく、お取引先、従業員、株主、投資家、行政機関など、すべてのステークホルダーを「お客さま」と捉え、全てのステークホルダーの満足度を高めることが社会の期待に応え、社会的責任を果たすCSR活動につながると考えています。
2005年10月、総務部内にCSR推進室(現:CSR・環境推進室)を設置し、CSR活動を推進するとともに、社内研修、公募参加型セミナー、社内報やイントラネットによる情報提供、eラーニングなどを通じて、従業員のCSR意識の啓発に積極的に取り組んでいます。
2008年度は「KDDI 環境委員会」を「KDDI CSR・環境委員会」に変更し、KDDIおよびグループ会社・ 関連会社の環境保全活動に加え、CSR活動に関わる方針、ならびに計画などに関する事項について、検討およ び推進を図る体制を整えました。
(参考:KDDIのCSR)
まとめ
CSR(企業の社会的責任)活動により、企業のイメージ向上やステークホルダーとの関係性強化、従業員満足度の向上などのメリットが得られます。
CSRの取り組みにはさまざまな手法があります。
自社にとっても最適な取り組みが異なるため、予算やリソースなどを慎重に検討し、CSRに取り組んでいきましょう。
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編集者
maeda